クレーンの災害事例
CR04101
事  例

カウンタウエイトの装着を忘れた運転士が空荷で移動式クレーンを操作中、クレーンが倒れてジブが作業者を直撃する

[原因と対策]
業  種 建設業 機  種 トラッククレーン
被  災 死亡 2名 休業 2名 現  象 機体、構造部分が折損、倒壊、転倒
 
あらまし  本災害はマンション新築工事現場の外構工事において,110t のオールテレーンクレーンを用いて運転者が作業半径を確認しようと空荷でジブを最大に伸ばし,旋回,ジブの下げを行っていた際に,カウンタウエイトの装着を忘れていたために過負荷防止装置が作動せず,クレーンが転倒してつり荷の準備や資材の運搬をしようとしていた作業者にジブが当たり2名が死亡し,2名が重傷を負ったものである. 災害が発生した現場では,PC 板の敷設と足場組み立てを行うために,クレーン運転者を含め15名が準備作業に当たっており,PC 板の敷設には110t の オールテレーンクレーンを用いる予定で前日現場に搬入されていた.この移動式クレーンは大形のため,カウンタウエイトが2t〜8t に5分割されており,クレーン作業の状態に応じて現場でカウンタウエイトを移動式クレーンに搭載する構造となっていた.
 災害発生当日は8時から朝礼が,続いて当日の作業内容及び合図方法の確認が行われた.8時半頃から移動式クレーンの運転者A は,すでに積まれていた質量2t のNo.1のカウンタウエイトに加え,当日の作業に必要な質量8t のNo.2及び質量5t のNo. 3のカウンタウエイトを旋回フレームの後部に積むため,まず運転室において過負荷防止装置に“準備作業モード,カウンタウエイト15t”と入力した. 続いてクレーンに装備されている自力脱着装置を用いてカウンタウエイトを積み込もうとしていたところ,元請けや玉掛け者から合図の方法や無線機の貸与等について相談を受けたため,A は作業を中断して運転席を離れた.再びA は運転席に戻ったが, No.2とNo.3のカウンタウエイトの積み込みを終わったと思い込み,作業半径を確認しようとして過負
 荷防止装置を“クレーンモード”に切り替え,周囲にクレーン操作を開始するための合図や立ち入り禁止措置をせずに空荷で左旋回しながらジブを伸ばした.さらにPC 板の設置場所に向けてジブを伸ばしながら下げていった.このときA は,ジブを下げても過負荷防止装置が作動して外部表示灯が赤色に変わって自動停止すると思い,外部表示灯に注意しながら操作を続けたところ,赤色に変わったと同時にクレーンが転倒した.この転倒によりPC 板のつり上げ準備をしていた作業者と,足場の資材を運ぶために周囲を通行していた作業者がジブの直撃を受け,2名が死亡,2名がジブを避けようと待避する際に重傷を負った.なお,運転者A はこのクレーンの専属運転者であって,運転免許取得後33年の経験を有していてこれまで無事故であった.
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