通達
8月以降における熱中症予防対策の徹底について
厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長 基安労発0802第2号
一般社団法人日本クレーン協会会長殿 令和元年8月2日
8月以降における熱中症予防対策の徹底について
 
 安全衛生行政の推進につきまして、日頃から格別の御配慮をいただき、厚く御礼申し上げます。

 さて、職場での熱中症予防対策については、平成21年6月19日付け基発第0619001号「職場における熱中症の予防について」(以下「基本対策」という。)によりお示しし、令和元年の職場における熱中症予防対策については、平成31年2月26日付け基安発0226第2〜4号により「STOP! 熱中症 クールワークキャンペーン」(以下「キャンペーン」という。)を実施し、業所管省庁や関係団体等と連携して取り組んでいるところです。

 今般、7月末までに報告があった全都道府県の熱中症の件数を取りまとめた(別紙)ところ、猛暑であった昨年同時期と比較して、死傷者については大幅に減少していますが、7月については、速報値ではあるものの、死亡者数が同数となっていました。
 熱中症の発症のピークが、一般に7月から8月であることや、本年度は、特に7月下旬から急激に気温が上昇していることから労働者が熱順化(熱に慣れ当該環境に適応すること)していない状況であることが想定されることを踏まえ、8月以降においても、職場における熱中症予防対策の更なる徹底が必要です。
 一方、労働者の熱順化については、熱へのばく露が中断すると4日後には順化の顕著な喪失が始まります。このため、夏季休暇後など、一定期間暑熱環境における作業から離れ、その後再び当該作業を行う場合等においては、労働者は熱に順化していない状態に再び戻っていることが想定されることに特段の留意が必要です。
 つきましては、貴職におかれましては、8月以降の職場における熱中症予防対策の徹底に向け、関係事業場において、上記の労働者の熱順化の状況を踏まえた対策の実施に留意する等により、基本対策及びキャンペーンに基づく職場での熱中症予防対策に一層の取組を進めていただけるよう、関係事業場への周知について特段の御理解と御協力をお願い申し上げます。
 
別紙
熱中症による月別の労働者死傷病報告数(平成30年、平成31年・令和元年)(人)
 
  5月
以前
6月 7月 7月末
までの
累積数
平成31年・令和元年
※同年7月末時点の速報値
28
(0)
24
(0)
20
(7)
72
(7)
 
 
平成30年
※同年7月末時点の速報値
17
(0)
40
(1)
129
(7)
186
(8)
平成30年
※確定値
19
(0)
60
(2)
697
(17)
776
(19)
8月 9月 10月
以降
366
(8)
31
(1)
5
(0)
 平成31年・令和元年においても同様に報告数が確定すると仮定すると、7月末までの累積確定数は200人以上に上ると推定される。
 平成30年8月(確定値)において、300人を超える被災者が発生したことから、本年8月以降も職場における熱中症予防対策の更なる徹底が必要である。
   括弧内は、死亡者数(内数)。
   「5月以前」は1月から5月まで、「10月以降」は10月から12月までの合計。
   休業4日以上の労働災害に係る労働者死傷病報告及び都道府県労働局による把握人数。
 
(参考)
 平成30年の職場における熱中症による死傷災害発生の概要
 職場での熱中症による死亡者数は28人と、平成29年と比べて2倍となりました。死傷者数(死亡者数と休業4日以上の業務上疾病者数を加えた数)は、1,178人と前年の2倍を超えました。熱中症による年間の死傷者数は、近年400~500人台でしたが、1,000人を超えたのは、過去10年間で最多となっています。
 死亡者数を業種別にみると、建設業が.10人と前年同様最も多いのですが、前年死亡者のいなかった製造業で5人、運送業で4人発生しています。特に屋内作業での増加が目立っています。死傷者数では、警備業が前年のほぼ3倍、製造業、運送業が前年のほぼ2倍となっています。
 熱中症で死亡した28人の状況をみると、WBGT値(暑さ指数)が、基準値を超えて熱中症の発生リスクが高まっていたと推測されます。中でも、作業環境の正確な把握や作業計画の変更を行わなかったと考えられる事例や、重篤な熱中症の兆候が見られた労働者の救急搬送が遅れた事例、日ごろから健康診断や体調把握などの事業場における健康管理を適切に実施していない事例などが見られます。

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