通 達
移動式クレーン作業に係る災害(事故) 防止の徹底について(要請)
社団法人日本クレーン協会 北海道支部長殿 北労発基第200082号
北海道労働局長 平成20年2月4日

移動式クレーン作業に係る災害(事故) 防止の徹底について(要請)

 労働行政の推進については,日頃より格別のご理解,ご協力を賜り厚くお礼申し上げます。
  さて,北海道内における移動式クレーンに起因する労働災害(事故)は,平成17年62件,平成18年59件,平成19年は47件(速報値)と年々減少傾向を示しております。
  このうち,移動式クレーンの転倒等による事故が平成17年から昨年末までの3年間で16件発生しており,その原因としては,@定格荷重をこえて使用したこと,A過負荷防止装置等の安全装置を無効にして使用したこと,Bアウトリガーの張り出し不足等によるものが大半を占めております。
  この中でも,特に移動式クレーン運転士がつり荷運搬作業に当たり,過負荷防止装置(安全装置)を無効にする行為は元請,下請等の労働者が混在する作業現場において,極めて危険なものであり,労働災害防止の観点から事例によっては,当該運転士の免許の取り消し又は一定期間の免許資格停止等の行政処分や法違反として立件する司法処分に付す場合もあります。
  今般,昨年9月札幌市内で発生した移動式クレーンの転倒事故について,当該運転士自らの意思で安全装置を無効にしたものであり,重大な結果を招来するおそれがあったことから,極めて悪質であるとして2ケ月間免許資格を停止する行政処分としたところです。
  移動式クレーンを用いる作業は,重量物を取り扱うことから,重篤かつ社会的な注目を浴びる災害に繋がるおそれもあり,原点に立ち返った労働災害防止の取組を展開していただく必要が重要であると認識しております。
  ついては,今後同種災害・事故の撲滅を期すため,別紙記載の事項について,貴協会傘下の会員各位に対し,周知及び指導方よろしくお願い申しあげます。
  なお,平成15年にスタートした第10次労働災害防止計画期間中の労働災害発生件数(速報値)を集計したことから,当該結果(省略)を送付することとしたので参考いただきたく,併せてお願い申し上げます。
別紙
事業者の責務
移動式クレーンの正規な操作マニュアルに従い,作業させること。
安全装置等の機能を失わせないよう,労働者に対して安全教育を実施すること。
運搬しようとするつり荷の重量・形態等を踏まえ,必要な作業半径・高さ,つり上げ能力等を勘案した作業計画書を作成し,関係労働者に周知すること。
  なお,予定した作業条件等に変更を生じた場合は,作業計画書を見直して現状に合ったものに改めること。
移動式クレーンの運転操作に当たっては,有資格者に従事させること。
地盤が軟弱な場合,転倒防止を図るため,必要な面積及び強度を有する鉄板等を敷設すること。

アウトリガーは最大限張り出すと共に転倒のおそれのない場所に設置すること。
作業現場においては,統一した一定の合図を定め,合図者の合図により作業を行うと共に関係労働者に周知すること。
移動式クレーンの旋回部分と労働者との接触を防止するため,立入り禁止区域の設定を行い,関係労働者に周知すること。
上下作業とならないようつり荷の下に労働者の立入りを禁止すること。
10 強風(10分間の平均風速10m/s 以上)の場合は,作業を中止すること。
 
労働者の責務

移動式クレーンの運転操作に当たっては,安全装置を取り外したり,又はその機能を失わせたりしないこと。
移動式クレーンを用いた作業中,臨時に安全装置を取り外したり,又はその機能を失わせる必要がある場合,事業者に申し出て許可を得て行うこと。
 
特定元方事業者の責務
移動式クレーンを用いて作業する場合,当該クレーンが転倒するおそれがある場所では,元方事業者は関係請負人に対して技術上の指導と共に危険防止のための必要な機材の提供や関係請負人と共同し,危険防止の措置を講じること。
特定元方事業者は,作業に使用する機械等の作業計画を作成すると共に,関係請負人が作成した同計画が同事業者の計画と適合しているか,確認すること。
* なお,厚生労働省では,人身被害を伴う事例を「労働災害」とし,人身被害を伴わない事例を「事故」としている。

 

(掲載:『クレーン』第46巻 5号 2008年)

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