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調査研究の目的及び中長期的テーマの策定について

 
はじめに
 一般社団法人日本クレーン協会(以下「協会」という。)は,調査研究事業,検査検定事業及び登録教習事業を3本の柱として活動を行っている。
協会は,平成24年4月1日付けで一般社団法人に移行し,その公益目的支出計画において,調査研究事業を公益事業として位置づけたところであり,調査研究事業を今後長期にわたり継続的に実施して行くことが求められている。
このような状況に鑑み,協会の行う調査研究の目的を再確認するとともに,調査研究の中長期的テーマ(グランドデザイン)をここに策定するものである。
 
1 協会の調査研究の目的
 協会の行う調査研究は,学術的研究機関等においてなされるような高度な専門的研究ではないが,産業現場の実態を踏まえ,クレーン等に係る事故・災害の防止を図るうえで,中小企業を含め多くの企業で参考となる実務的な基準・規格及び技術的資料を作成することに特徴がある。そして,これらをクレーン誌・クレーン年鑑の発行,全国クレーン安全大会の開催等を通じ,会員だけでなく,広くクレーン関係者に普及させている。
このように,クレーン等の事故・災害の防止に直接・間接に結び付く知識・情報を産業現場の実態に即し,利用しやすい形態にして社会に提供することが協会の調査研究の目的である。
 
2 協会の調査研究テーマ選定における基本的考え方
 事故・災害は,広い意味の技術的・社会的環境変化に際して,その発生数が増加する傾向がある。たとえば,それまで減少傾向にあったクレーン等による死亡災害件数が1980年頃を境に増加に転じたが,この時代は超高層建築や大型タンカーの建造が盛んになり,その要求に応じてクレーン等も大型化し,新工法が開発された時代である。この環境の「変化」が事故・災害の増加に関係していると考えられる。
また,一般的に機械設備の使用現場では,新しい機構や構造あるいは工法の採用後しばらくは不慣れや想定外による事故・災害が起きやすく,一時的に事故・災害が増加する傾向があり,その防止のためには「変化」に即した対応を行う必要がある。
このように,「変化」をキーワードとして調査研究テーマを選定することが,協会の調査研究事業の目的に適っていると考え,テーマ選定の基本的考え方とする。
厚生労働省が平成20年に発表した第11次労働災害防止計画において,「近年の労働災害の発生状況については,産業構造,就業構造,産業現場の変化が大きな影響を及ぼしている。」と述べているが,この三つの「変化」は事故・災害の発生要因である環境変化を体系的に表しており,それぞれ「変化」の大きな枠組みと言える。以下に,これら「三つの変化」がそれぞれクレーン等に与える影響について考察する。
 
(1) 産業構造の変化
 産業構造については,1990年代後半からの景気の低迷,国の財政赤字に伴う国内設備投資の手控え,公共工事を含む建設事業の縮小の影響により,クレーン等を長期使用する傾向及びレンタルに頼る傾向が増えている。クレーンの長期使用は,クレーン等の構造部・機械部の疲労等に起因する損傷とその結果引き起こされる災害の増加に.がりかねない。こうした災害を防止するためにはクレーン等の寿命予測を正確に行う手法の研究や部品の交換基準や廃棄基準を策定することなどが必要となる。
また,レンタルの増加は建設事業者によるクレーン等の管理技術の低下や管理責任の低下を招きかねず,これを防止する教育が必要である。
さらに,市場のグローバル化による外国製クレーン等の輸入に対応し,国内設計基準等の標準化を国際基準を参考にしながら進め,事故・災害の予防を図る必要もある。
 
(2) 就業構造の変化
 就業構造においては,産業構造の変化にともない,業種ごとの労働者の増減が生じており,非正規雇用の拡大による就業形態の多様化が進んでいる。一般的に,クレーン等を使用する製造業現場及び建設業現場では,かつての熟練労働者の高齢化が進む一方で,未熟練若年労働者が増える傾向にある。また,派遣やグローバル化に伴う外国人労働者の割合も増えている。
このような就業構造の変化は,現場における技能者(クレーン等運転士,玉掛け技能者,保守管理者)の技量低下を招いている。これらに対するには技能講習・安全教育等の充実が欠かせないが,一方で,人間工学を適用し操作性・居住性を高めた運転室やフールプルーフ的な安全装置・運転支援システムの具備等,機械設備面での対策が求められる。
 
(3) 産業現場の変化
 産業現場においては,技術の進歩と社会的要求の高度化により,多くの変化が起きており今後も起きると考えられ,それに対応した新しい安全技術が求められる。
 特殊環境下で稼働するクレーン等の増加
超超高層建築物の建設や大深度地下工事でのクレーン等の使用が増えてきている。将来的には深海でのクレーン作業が増えることも予測され,未知の環境下(風,熱,高圧,振動等)で作業を行うクレーン等が求められる。
また,特に,国内においては,再開発(スクラップアンドビルド)が増えることから,狭隘な現場で,短い工期で作業することが要求され,それに伴い今までにない新しい工法及びクレーン等が必要になる。これら新しいクレーン等の製造・使用における安全基準が求められる。
 新材料等の採用
産業界では多くの新材料が開発されており,クレーン等の軽量化等を実現するために,今後様々な新材料が使用されると思われるが,その結果従来にはない破壊モードが生ずる可能性もあり,それに対する安全基準が必要になる。
 新制御技術・ITの採用
制御技術やITの進歩は著しく,クレーン等の高機能化に寄与すると考えられるが,設備の構造や使用が複雑化する傾向もあり,その採用に当たっては安全面の考慮が必要となる。
 新設計基準等の採用
技術進歩の反映及びグローバル化への対応のため,従来の国内設計基準の見直しが求められることがある。新設計基準等の導入にあたっては現場の使用実態に配慮した検討が必要になる。
 環境配慮
省エネ対応は,必ずしも労働安全と直結しないが,公共価値の向上という視点で,その促進に関係して行く必要がある。
 
3 調査研究の中長期的テーマ
 前項で考察した「三つの変化」を枠組みとして,関連事象及びクレーン等への影響を考え,協会の調査研究事業として取り組むべき中長期的テーマ(グランドデザイン)を表にまとめる。
各専門委員会では,本グランドデザインを基に,広く社会的ニーズを採り入れて個別テーマを起案し,協会における調査研究テーマ選定の審議機関である技術審議会での審議を経て,各年度の具体的テーマとするものとする。
 
表 「三つの変化」を枠組みとした調査研究の中長期的テーマ
変化 関連事象 クレーン等への影響例 テーマ
産業構造 国内製造業の新規投資減少
国内建設工事の減少
クレーン等の長期使用
レンタルの増加
寿命予測
交換基準
廃棄基準
管理技術の向上
グローバル化 クレーン等の輸出入
国際共通仕様
ISO,JIS,構造規格
標準化,整合化
就業構造 高齢化,熟練作業者の不足
派遣・外国人労働者の増加
作業者技量の低下 作業者教育
人間工学
(標示,配置,居住性)
安全装置の機能強化
(フェールセーフ,フールプルーフ)
運転支援システム
保守管理者技量の低下 保守管理者教育
保守支援システム
産業現場 超超高層,大深度地下,深海 風,地震,未知環境 安全対策・安全性評価
工期短縮,狭隘現場 現場管理の複雑化 管理者教育
安全対策
運転支援システム
新工法
新材料
新制御システム
新設計基準
新機能装備クレーン等
高張力鋼等
制御安全
限界状態設計法
安全対策・安全性評価
環境配慮 省エネ型駆動装置
(ハイブリッド駆動等)
安全対策・安全性評価
 
 
 
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