spacer.gif
移動式クレーンの感電災害について
spacer.gif  
 
1. まえがき
spacer.gif spacer.gif


クレーン災害のうち感電による死亡者数の推移は,表1のようにここ数年2〜3%と数字的には少いが,1度災害を発生させると,電力の供給を妨げることになり,情報化社会の現在においては多岐にわたって大きな影響を与え兼ねない.そこで,今回の“安全のすすめ”では,5年前に当協会の電気委員会でまとめた「移動式クレーン使用時の感電災害調査報告」の中から図表を中心にして抜粋し,感電災害の発生状況とその対策について再整理してみたので紹介する.

susume00_07_01.jpg

 

表1 最近5年間における移動式クレーンによる死亡者数

機 種
年度 トラック
クレーン
積載形
トラッククレーン
ホイール
クレーン
クローラ
クレーン
その他 合計 感電死亡
比率
感電 感電
以外
感電 感電
以外
感電 感電
以外
感電 感電
以外
感電 感電
以外
感電 感電
以外
1994 0 10 0 34 1 13 0 14 0 2 1 73 1.4%
1995 0 14 1 30 0 18 0 12 0 1 1 75 1.3%
1996 0 15 1 30 1 36 0 11 0 1 2 93 2.1%
1997 1 23 0 18 1 30 0 5 0 3 2 79 2.5%
1998 1 8 2 27 0 28 0 10 0 6 3 79 3.7%
(クレーン年鑑より)
spacer.gif    
2. 災害事例調査
spacer.gif
  2.1 調査方法
spacer.gif spacer.gif
  spacer.gif spacer.gif

9電力会社(北海道,東北,東京,中部,北陸,関西,中国,四国,九州)に対して「移動式クレーンによる送配電線の災害事例」(1987〜1992年の6年間分)の提供を依頼し241件の回答を得たが,そのうち人身事故に関する80件(被災者数;96名)に対し,図1のシート(PDFファイル)により再調査を実施した.


PDF書類をご覧いただくには、アドビ・アクロバットリーダー(Acrobat Reader)が必要です。
お持ちでない方はこちらから 無料配布されているアクロバットリーダーを入手し、インストールしてください。
(注:接続回線の状況によっては時間がかかる場合があります。)

Get Acrobat Reader

 

spacer.gif    
  2.2 調査結果
spacer.gif spacer.gif spacer.gif
(1) 機種別発生状況……(図2)
spacer.gif spacer.gif spacer.gif
spacer.gif spacer.gif susume00_07_02.jpg機種別の災害発生状況は,トラッククレーンと積載形で約90%を占めている.これは,機種ごとの平均設置台数に比例した傾向である.
spacer.gif
(2) クレーン作動別発生状況……(図3)
spacer.gif spacer.gif spacer.gif
spacer.gif spacer.gif

susume00_07_03.jpgクレーン作動別では,ジブの伏せ(含;ジブ伸長)とジブの起こし(含;ジブ縮小)及び旋回の作動で全体の74%(59件)を占め,ジブの作動中に災害が発生しやすいことを示している.

その他の作動では,

巻上げ時の災害・・・
spacer.gif 主に荷を地切りしたときに荷の重さでジブがたわみ,送配電線に接近又は接触して発生

停止時の災害
(クレーン動作が全て停止)・・・
spacer.gif つり荷又はフックを玉掛け作業者が横引きしたために,ワイヤロープが送配電線に接近又は接触して発生

走行時の災害・・・
spacer.gif ジブを起こしたままでクレーンを走行させたために,ジブが接近又は接触して発生
spacer.gif

susume00_07_04.jpg

 

(3) 接近接触の個所別発生状況……(図4)
spacer.gif spacer.gif spacer.gif
spacer.gif spacer.gif susume00_07_05.jpgジブ先端とジブで65%を占め最も多く,次にワイヤロープが多く31%で両方で96%を占める.クレーン作業では,ジブ及びワイヤロープと送配電線の接近,接触に特別注意を払う必要がある.つり荷の2件は,資材を1本掛けで,つっていたために,つり荷が傾き,柱上変圧器の充電部に接触した災害である.また,運転者の1件は,絶縁用防護管がずれていたので,オペレータが電柱に昇り防護管を修復しようとして感電した災害である.
spacer.gif
(4) 電圧別発生状況……(図5)
spacer.gif spacer.gif spacer.gif
spacer.gif spacer.gif susume00_07_06.jpg7kV以下の電圧で全体の28%に対し,残り72%は7kVを超える電圧で発生している.
送配電線路の施設量比率では7kV以下の配電線が82%を占めているが,絶縁用防護管の装着が容易等,防護対策が簡単であるために,災害の発生率が少なくなったものと推測される.
spacer.gif
(5) 送配電線の高さ別発生状況……(表2)
spacer.gif spacer.gif spacer.gif
spacer.gif spacer.gif

配電線では10m≦H<14mの区分に73%と集中している,大部分の配電線の地上高がこの区分にあるためと推察できる.
一方,送電線では,高さ区分に殆ど関係なく発生し,かつ配電線の地上高より低い7m≦H<10mの区分で多く発生していることは注目すべきである.

表2 送配電線の地上高別件数
高さ区分 7m未満 7m以上
10m未満
10m以上
14m未満
14m以上
19m未満
19m以上
配電線 1 5 16 - - 22
送電線 1 18 13 11 15 58
2 23 29 11 15 80

 

spacer.gif
(6) 被災状況……(図6)
spacer.gif spacer.gif spacer.gif
spacer.gif spacer.gif susume00_07_07.jpg被災者96名の内訳は,死亡者33%,負傷者67%である.クレーン等の労働災害での死亡者と負傷者の比は5〜7%と93〜95%であるのに比べ,移動式クレーンの感電災害では死亡の比率が5倍以上に高いことがわかる.
spacer.gif
(7) 被災時の業務別状況……(図7)
spacer.gif spacer.gif spacer.gif
spacer.gif spacer.gif susume00_07_08.jpg運転業務で被災した21名中20名が積載形トラッククレーンのオペレータであった.この機種は地上操作を行うため,運転者が通電経路となるケースが多いためであろう.
その他は,感電したクレーンオペレータを助けようとした事例と玉掛け作業者以外の者がつり荷の卸しを手伝っていた事例である.
spacer.gif
(8) 事前協議の有無……(図8)
spacer.gif spacer.gif spacer.gif
spacer.gif spacer.gif susume00_07_09.jpg80件の災害のうち64%の51件(配電14,送電37)が電力会社との事前協議がなされていなかった.
また,事前協議がなされたにもかかわらず災害が発生した29件は,協議に基づいた安全対策が実施されていなかったものである.
spacer.gif
(9) 防護施設,注意標識の有無……(図9)   
spacer.gif spacer.gif spacer.gif
spacer.gif spacer.gif susume00_07_10.jpg絶縁防護管等の未実施は全災害の82.5%(配電14,送電52,計66件)にも達している.
また,防護施設有りで災害になったケースは,ジブやワイヤロープで防護管を破損させたり,ずらせてしまったために発生した.
spacer.gif
(10) 監視人の配置状況……(図10)
spacer.gif spacer.gif spacer.gif
spacer.gif spacer.gif susume00_07_11.jpg監視人が配置されていないために発生した災害は76件(配電21,送電55),実に94%もの高率を示した.
前述の防護施設等の未実施と合わせ,基本的な安全対策の不備が災害を発生させているものと推察される.
3. 原因と防止対策
  3.1 推定される災害原因
spacer.gif spacer.gif
  spacer.gif 調査結果等から推定される直接あるいは間接的な原因は,次のとおりである .
(1) 送配電線付近での作業計画が不十分である,と同時に作業者に具体的な作業内容を事前に周知していない.
(2)   運転者は,作業場所における送配電線の有無を殆ど認識していない.

(3)

  運転者及び玉掛け作業者は,送配電線付近でのクレーン作業の安全知識が不足している.
(4)   監視人及び誘導員とも電気安全に関する基礎知識が乏しく,その役割を果たしていない.
(5)   作業を安全に進める作業指揮者(責任者)が明確に決められていない.
susume00_07_12.jpg
spacer.gif
spacer.gif 3.2 クレーン作業に必要な感電防止対策
spacer.gif spacer.gif spacer.gif spacer.gif
spacer.gif spacer.gif spacer.gif 調査結果より,送配電線付近でのクレーン作業に必要な対策としては次のようなことが考えられる.

susume00_07_13.jpg
(1) 運転者,玉掛け作業者に対して,送配電線付近での作業に関する教育を次のような方法で徹底させる.
1) 移動式クレーン運転者用テキストで安全教育を実施する.
2)   玉掛け作業の技能講習及び特別教育において,安全教育を実施する.
(2) 電気安全に関する教育を受けた監視人を指名する.

(3)

事業者は,運転者を除く関係作業者のうちから,当該作業を直接指揮する者を指名し,その者に作業を指揮させる.
(4) 作業を直接指揮する者及び運転者は,玉掛け作業者等につり荷及びクレーンのフックを横引きさせないこと.
(5) 高圧接近警報器等の安全装置を移動式クレーンに装着させ,使用することが望ましい.
(6) 送配電線の所有者と安全対策を検討し,作業計画を立てた後,次の 1)〜 3)のいずれかの措置を行い,かつ監視人を置き,作業を監視させる.
1) 当該充電電路を移設する.
2)   感電を防止するための囲いを設ける.
3)   当該充電電路に絶縁用防護具を装着する.
(7) 送配電線類に対して,電力会社の推奨する離隔距離(表3)以上を保つこと.

spacer.gif 表3 離隔距離(電力会社の推奨値)
電路の電圧(交流)
(9電力会社の実使用電圧)
離隔距離
500,000V 11.0m
275,000V 7.0m
220,000V 6.0m
187,000V
154,000V 5.0m
110,000V
77,000V 4.0m
66.000V
44,000V 〜11,000V 3.0m
6,600V以下 2.0m
spacer.gif
4. あとがき
spacer.gif spacer.gif
    5年前の“クレーン”誌8月号に掲載された委員会報告からの抜粋を再整理したが,当時の電気委員会ではさらに詳細な事例研究として,実際の災害事例10件を紹介している.非常に参考になる資料であるので,機会があれば再度紹介してみたい。
なお,クレーン作業における感電に関連する法規としては,次のようなものがあるので参考にしてほしい.
1) 労働安全衛生法(昭和47.6.8 法律第57号)第20条(事業者の講ずべき措置等)の3
2)   労働安全衛生規則(昭和47.9.30 労働省令第32号)
第349条(工作物の建設等の作業を行う場合の感電の防止)
3)   労働省労働基準局長通達(昭和50.12.17 基発第759号)
(移動式クレーン等の送配電線類への接触による感電災害の防止対策について)
spacer.gif    
[戻る]
 
[このページの先頭] [ホーム]