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玉掛け用ワイヤロープの点検ポイントについて
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1.はじめに
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susume01_03_01.jpgクレーン等による災害発生状況は毎年「クレーン年鑑」にまとめられ,その痛ましい死傷災害事例が報告されている.平成11年のクレーン等による死亡災害141人の内,原因別では,玉掛け用ワイヤロープ等の切断によるものが6人,フック等から玉掛け用ワイヤロープ等が外れたものが3人,玉掛け用ワイヤロープ等がつり荷から外れたものが11人となっている.このような玉掛け用ワイヤロープ等に起因する労働災害の死亡者数は,表1に示すように過去3年間その割合は減少しつつあるが,いまだに全体の約14%を占めている.
これらの玉掛け用ワイヤロープ等に起因する労働災害事例を分析すると次の2原因に分類することが出来る.1つは,玉掛け用ワイヤロープの安全係数が不足していたことや保管が適切でなく腐食が進行していたことなど玉掛け用ワイヤロープそのものに原因があるもので,もう1つは,玉掛けの方法が不適切であったことや無資格者を玉掛け作業に就かせたことなど玉掛け作業に原因があるものである.
また,玉掛用具として不適切な台付け用ワイヤロープを玉掛けに使用したことによる事例も報告されているが,台付け用ワイヤロープは荷のつり上げに使用するものではなく,荷等の固定に使用されるものであり,法的な安全係数も玉掛け用は6以上で,台付け用は4以上と異なる.さらに,アイスプライス加工に違いもあり,台付け用ワイヤロープを玉掛け用に使用することは避けなければならない.
今回は,玉掛け用ワイヤロープを安全に使用するために,その種類,保守・管理方法,点検項目と廃棄基準について取り上げることにした.
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表1 クレーン等による災害発生状況(人)

項 目 発生年度
平成9年 平成10年 平成11年
死亡災害合計 161 156 141
玉掛け用ワイヤロープ等*の切断によるもの 11 8 6
フック等から玉掛け用ワイヤロープ等が外れたことによるもの 4 0 3
玉掛け用ワイヤロープ等がつり荷から外れたことによるもの 25 19 11
玉掛け用ワイヤロープ等に起因する割合 24.8% 17.3% 14.2%

*玉掛け用ワイヤロープ等とは,ワイヤロープの他,ベルトスリングやチェーンスリングを含む。
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2.玉掛け用ワイヤロープの種類
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1.ワイヤロープの種類
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玉掛け用に使用されるワイヤロープは,耐疲労性が良いものより,柔軟性(可撓性)が良く,取扱い易いものが適している.表2に,その種類と特徴を示す.

表2玉掛け用ワイヤロープの種類と特徴

構成記号と
断面図
susume01_03_04_01.jpg susume01_03_04_02.jpg susume01_03_04_03.jpg susume01_03_04_04.jpg
特徴 ストランド心も繊維心であり,柔軟性が良く取り扱い安いので,多く使用される. 柔軟性が良く,上記6x24では破断強度が不足する場合に使用される. 高い破断荷重の必要な場合や高温下で使用される. 高い破断荷重の必要な場合や,高温下で使用される.
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2.形状の種類
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玉掛け用ワイヤロープの形状には,次の種類がある.

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(1)シンブル付き
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spacer.gif spacer.gif 最も損傷し易いアイ部を保護するためには,図1に示すシンブルを使用する.
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(2)リング付き
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spacer.gif spacer.gif 複数のロープを使用すると荷重のアンバランスを生じ易いので,図2に示すように,リングを介すと良い.
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(3)フック付き
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spacer.gif spacer.gif 図3に示すように,フックを端末に付属させると,使い勝手が良くなる.
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(4)エンドレス形
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spacer.gif spacer.gif 吊り荷への引っ掛かりを嫌う場合に使用される.(図4参照)
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3.加工方法の種類
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玉掛け用ワイヤロープの加工方法には,以下の種類がある.

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(1) アイ圧縮止め
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spacer.gif spacer.gif アルミ合金製,鉄製又は銅製のスリーブを用い,ロープの端末を折り返すか又は編み込んでアイ状にし,本体ロープに添わせてプレス等で圧縮する.
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(2) アイスプライス
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spacer.gif spacer.gif アイスプライスは,ロープを折り曲げてアイ形をつくり,その端末をストランドに解き,ロープ本体のストランド間に手作業で差し込んで継ぎ合わせるもので,このストランドを編み込む方法に「巻差し」と「かご差し」とがある.
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(3) エンドレス加工
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spacer.gif spacer.gif 1本のロープを連続して円形に継ぐショートスプライス法とロングスプライス法,1本のストランドをより合せて円形のロープにするグロメット加工法並びに圧縮止めにより円形のロープにする加工法等がある.
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3. 玉掛け用ワイヤロープの保守・管理
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spacer.gif 玉掛け用ワイヤロープの耐久力を十分保たせるには,以下の点の保守管理が大切である.

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(1) 保管場所
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spacer.gif spacer.gif 湿気,高温,酸等の影響のない風通しの良い屋根のある場所に保管し,コンクリート床などに直接置かないこと.止むを得ず戸外に置く時は,雨のかからぬようにし,必ず枕木等を敷いて地面とのすき間をつくること。
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(2) 表示
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月例・週例定期点検の有効期間又は定期点検済みの識別表示を行って,始業点検と併用することが安全上望ましい .
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(3) 塗油
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一度使用したワイヤロープは,表面に付着した砂,泥等を掃除し,適切なロープグリースを塗布しておくこと.
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(4) 始業点検
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始業時に必ずワイヤロープ等の目視点検を行い,安全性を確認してから使用すること.
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4. 玉掛け用ワイヤロープの点検項目と廃棄基準
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玉掛け用ワイヤロープを使用していくと断線,摩耗,腐食及び形くずれが発生し劣化していくが,点検はこのワイヤロープの劣化を早期に発見して,事故を防止するために重要な作業で,ワイヤロープの使用履歴や劣化状況を正確に把握するために点検記録をとることも大切である.また,廃棄基準に達しているものは誤って使用することのないように切断処理などを施して確実に廃棄処分を行うことが必要である。
玉掛け用ワイヤロープは,通常,ワイヤロープ本体部と両端のアイ加工部とからなっている.
点検は,ワイヤロープ本体部のみでなく,圧縮止め加工部やスプライス加工部についても実施しなければならない。
イラストは点検項目をわかりやすく図示したものであるが,玉掛け用ワイヤロープは形くずれにより廃棄する場合が多い.形くずれには,キンク,うねり,つぶれ,曲がり及びきずがある。
(社)日本クレーン協会のワイヤロープ委員会が作成した「玉掛け用ワイヤロープの簡易点検マニュアル(厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課推薦)」は損傷部と限度見本(写真)を比較し,継続使用の可否を判断しようとするものである.以下に関係部分を紹介する。

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玉掛け用ワイヤロープの簡易点検
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<<玉掛け用ワイヤロープの点検項目と廃棄基準>>

ワイヤロープ本体部とアイ加工部を,目視で損傷状況をチェックする。
その損傷の状況を損傷写真と比較する。

★どれか一つでも廃棄基準に達していれば,そのロープは廃棄する。
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ワイヤロープ本体部
点検項目と代表例 廃棄基準
370101.jpg
断線数が下表のロープは破棄する。
ワイヤロープ
の構成
1より当りの
可視断線数
6×24 9
6×37 10
6×Fi(25) 5
6×Fi(29) 6
IWRCのものも同様の破棄基準とする。
370102.jpg 摩耗によって,直径の減少が公称径の5%を超えるもの。
370103.jpg 腐食によって,表線表面にピッチングが生じて,あばた状になったもの。
【参考】 強度低下率
赤錆大:40〜50%
370104.jpg 局部的によりが詰まったり,戻ったりしているもの。
【参考】 強度低下率
キンクの程度により20〜40%の低下を生じる。
370105.jpg (1)著しくうねっているもの。
(2)又は,d/dが4/3以上になったもの。
370106.jpg (1)著しく表面がつぶれたもの。
(2)短径/長径が,2/3以下になったもの。
370107.jpg 著しい鋭角的な曲がりを生じたもの。
370108.jpg 著しいきずを生じたもの。
アイ加工部
点検項目と代表例 廃棄基準
370201.jpg アイの頂点部で,著しく繊維心がはみ出したもの。
370202.jpg (1)アイ部分で,ストランドの緩みがあるもの。
(2)差し終わり部で,ストランドの抜けがあるもの。
370203.jpg 局部止め部で,ロープの抜け出しがあるもの。
370204.jpg (1)スリーブに著しい曲がり,つぶれ,きずがあるもの。
(2)スリーブが摩耗して,元の厚みの2/3以下になったもの。
(3)スリーブにき裂があるもの。
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