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製鉄所におけるクレーン運転士等の安全教育について
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1. はじめに
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susume01_05_01.jpg製鉄所内外における物流効率化の一環として,クレーン物流作業の効率化と安全性向上の両面から,玉掛け作業レスや合図レス,クレーンの床上操作化や自動運転化が進められてきました.
その結果,クレーン等作業に専従する作業者は減少するとともに,要員の補充も一時期中断していたため高齢化が進んできました.最近では,定年退職による要員不足が新たな課題になり,新入社員等の採用が再開されるようになりました.
製鉄所におけるクレーン運転士のグループは,ベテラン層と若手層で構成され,中堅層がいないことが特徴といえます.若手層に対する育成指導とベテラン層に対する安全教育の効果的な実践が重点課題です.
今回は,ある製鉄所におけるクレーン運転士等の安全教育,安全活動の実践事例を紹介します.読者の皆様方の日々の安全活動の参考にしていただければ幸いです.
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2. 製鉄所物流の概要
 
(1) 原料受け入れから溶鉱炉まで
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鉄鉱石,石炭等の原料は『アンローダ』で船から荷揚げされ,ベルトコンベアで原料ヤードに輸送されます.鉄鉱石は石灰石とともに焼結炉で焼き固めて焼結鉱に,石炭はコークス炉で蒸し焼きにしてコークスにされます.焼結鉱,コークスはコンベアで溶鉱炉に装入され,約1500℃の溶けた銑鉄(溶銑)になって出てきます.
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(2) 溶鉱炉から転炉まで
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溶鉱炉から出銑された溶銑はトピードカーに受け転炉へ運ばれます.転炉では,『スクラップ装入クレーン』でスクラップや副原料を転炉に装入した後,『レードルクレーン』で溶銑鍋に払い出された溶銑を転炉に装入します.その後,酸素を吹き込み,銑鉄を鋼(はがね)に変えます.
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(3) 転炉から連続鋳造工場まで
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転炉での処理が終わった鋼(溶鋼)は,溶鋼鍋に払い出され,『レードルクレーン』で連続鋳造設備に運ばれて,鋳造冷却されて厚い板状の鋼片(スラブ)に固められます.
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(4) 連続鋳造工場から熱延工場まで
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連続鋳造工場からの搬出や熱延工場への搬入はスラブ専用つり具を有する『スラブクレーン』で運搬されます.ヤード間の運搬は,貨車,台車,ローラーテーブル等が使用されます.
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(5) 熱延工場から冷延工場まで
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圧延機で圧延された熱延鋼板や冷延鋼板はコイル専用つり具を有する『コイルクレーン』で運搬されます.工場間運搬には,キャリアパレット台車やトレーラーが使用されます.
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3. 製鉄所内の物流変化
 
製鉄所では,物流効率化と安全性向上の両面から,玉掛け作業レスや合図レス,クレーンの床上操作化や自動運転化等が進められてきました.
 
(1) 玉掛け作業レス
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人力で着脱を必要とする玉掛けワイヤロープ式つり具から,スラブやコイルの形状に合わせた機械式トング等の専用つり具化が進められ,さらに,電動式つり具化が進められた結果,早い時期に玉掛け作業レスが実現されています.
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(2) 合図レス(クレーンワンマン運転)
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スラブやコイルを運搬するクレーンでは,製品のデータをコンピュータで管理し,搬送命令をクレーン運転室に直接伝送するシステムが導入されるとともに,つり荷のつかみ位置を検出表示する位置決め機能付き電動つり具が採用された結果,クレーンワンマン運転が可能となり合図レスが実現されています.
レードルクレーンにおいても,フックの掛かり確認用カメラモニタの導入等により,部分的には合図レスで運転されています.

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(3) クレーンの床上操作化
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生産の補助的な作業や保全作業等に使用されるクレーンのほとんどは床上操作式,床上運転式,無線運転式のクレーンになっています.
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(4) クレーン自動運転化
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スラブやコイルのように形状が定まった製品を運搬するクレーンでは,コンピュータ制御による自動運転化されているクレーンもあります.
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以上,述べたような物流効率化が進められてきた結果,玉掛け,合図,クレーン運転等の業務に専従する作業者は減少してきました.
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4. クレーン運転士等に対する安全教育
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susume01_05_04.jpg『製鋼クレーン運転グループ』における安全教育等の取り組みについて紹介します.当該グループは,製鋼工場のレードルクレーンとスクラップ装入クレーンのクレーン運転業務とオペレータ保全業務を担当しています.グループ員の年齢と勤続年数をグラフに示します.
ベテラン層は平均年齢53歳,平均勤続年数が34年の超ベテラン集団です.若手層は平均年齢23歳,平均勤続年数4年の若い集団です.
物流効率化により要員補充が一時期中断していたために運転士の高齢化が進んだこと,定年退職による要員不足に対して新入社員の採用が最近になり再開されたこと等で,ベテラン層と若手層で構成され,ベテラン層と若手層をつなぐ中堅層がいないことが特徴です.


安全活動については,

(1) 新入社員の育成教育
(2)   ベテランの運転ミス防止活動

を重点課題として取り組んでいます.
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5. 新人運転士に対する安全教育
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susume01_05_05.jpg新入社員を一人前のクレーン運転士に育成するための教育ステップの概要を下表に示します.

1年後の到達目標は,

(1) 免許を取得し,3台の運転練習を完了させる.
(2) 設備に関する基礎知識を習得している.

(3)

始業点検ができ,明らかな異常を発見できる.
(4) 運転中の明らかな異常を認知し対応できる.
(5) 基本的な操業トラブルヘの対応ができる.

等であり,指導員が1対1で指導しています.


4月から9月までは昼間の勤務,10月以降は交代勤務に入り夜勤業務も体験させ,翌年4月から本番配置に目指して育成しています.

spacer.gif 運転教育 安全教育
4月 入社後の所全体での集合教育(1ヶ月) ・所共通ルールの教育
・現場安全基準の教育
・指差呼称確認の教育
・危険予知活動の教育
・類似災害防止活動
・ヒヤリハット教育
・安全作業動作標準
・運転作業標準
・ヒヤリハット提出
5月 部門での集合安全教育(1週間),職場決定,現場での安全教育
6月 運転免許取得のための学科教育,月末に学科試験受験
クレーン運転士教本,試験問題集を利用
7月 実技試験に向けての運転基本操作の練習
8月 教習所での実技講習と実技試験(1週間),玉掛け技能講習
9月 運転基本操作の練習
10月 実機での運転練習(1台目)※練習日数は1台あたり45日程度
11月 同上,見極めテス
12月 実機での運転練習(2台目)
1月 同上,見極めテスト
2月 実機での運転練習(3台目)
3月 同上,見極めテスト.本番配置クレーンの運転再教育
4月 本番配置(指導者,班長,作業長の3段階のレベルチェックを合格することが条件)

部門での集合安全教育の内容
(1) 機械,原材料等の危険性,有害性および取扱い方法に関する教育
spacer.gif   1) 危険業務の概要(作業主任者,就業制限,特別教育,防災関係の法定資格,など)
  2)   爆発,引火可燃有害高圧物(火災防止,消火器,消火栓,消火砂,など)
  3)   その他の危険(火気取扱い,COガス中毒,墜落,挟まれ巻き込まれ,高温,騒音,など)  
  4)   電気取扱い(感電,スイッチ二重切り要領,など)
(2) 保護具(防塵メガネ,防塵マスク,遮光メガネ,ゴーグル,防火面,など)
(3) 6Sについて(整理,整頓,清潔,清掃,躾け,資料整備)
(4) 事故発生時の措置(連絡,応急措置,退避,など)
(5) その他(安全心得,禁止事項,標識,交通安全,など)
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6. ベテラン運転士に対する安全教育
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運転経験34年のベテラン運転士の集団においても運転ミスは発生しています.運転ミスの原因は,馴れ合い,先走り,思い込み,瞬間的な注意力の低下等です.少し前のデータでは,在籍する運転士の46%,2人に1人が過去に運転ミスを経験しています
 『仲間のミスを人ごとと考えない』をスローガンに『指差呼称確認運転の実践徹底』を活動の基本に『運転ミスゼロ活動』を展開しています.
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(1) 人に対する活動
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・自主研修会の実施(ベテランのミス防止)
・運転作業標準の読み合わせ(始礼時)
・ミス当事者に対する指差呼称確認の重点指導

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(2) 管理面の活動
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・指差呼称確認運転の管理監督者による実践指導
・指差呼称確認運転の日直者による相互チェック
・指差呼称確認運転の自己チェック
・指差呼称確認レベル確認用シミュレータ作製
・指差呼称確認運転コンテストの実施
・指差呼称確認運転実践ビデオ作製
・注意力集中方法のアンケート実施,まとめ
・運転ミス事例アンケート実施,事例集作成

指差呼称確認重点実施事項
(1) 進行方向はよい   『進行方向よし』
(2) 横行センターはよいか? 『横行センターよし』
(3) 走行センターはよいか? 『走行センターよし』
(4) フック当たりはよいか? 『フック当たりよし』
(5) フック掛かりはよいか? 『フック掛かりよし』
(6) 地切り時の制動はよいか? 『地切り制動よし』

指差呼称確認重点実施 自己チェック項目
(1) 指差呼称確認は,全てが停止した状態で行う.(手放し運転の禁止)
(2) 電話等の通話連絡は,全てが停止した状態で行う.(手放し運転の禁止)
(3) 運転中はフックやつり荷を視野から外さない.
  (目印は停止後の確認用.センター合わせに夢中になるとつり荷の下に危険が待つ)
(4) 作業標準を無視した作業をしない.(矛盾があれば改定すること)

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(3) 設備面の活動
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  ・フック掛かり確認用カメラモニタの設置
・地上操作室との無線通話装置の設置
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7. 玉掛け作業の安全化
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当所では,安全活動の重点課題として『玉掛け作業の安全化』に取り組んでいます.年間行事として毎年4月に玉掛け安全週間を設けて,3月を玉掛け安全準備月間として活動しています.

活動の基本は『玉掛け遵守事項の徹底』であり

(1) 手鉤使用と退避の徹底
(2)   つり荷に触れることを暫定的に認めている作業について,安全対策が確実に守られているかの再確認および改善の促進
(3)   クレーン運転者と一体になった活動の推進の3項目を強調活動として推進しています.

強調活動の(3)項を受けて,製鋼クレーン運転グループでは,『クレーン運転者による玉掛け作業チェックシート』を作成して,玉掛け作業のチェックを実施しています.
クレーン運転士が玉掛け作業の状況をチェックシートに記録し,玉掛け遵守事項の徹底状況を集計,分析します.後日,玉掛け作業者の所属部課へ報告指導しています.

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8. おわりに
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susume01_05_09.jpg製鉄所においては原料や製品等の主要ラインの物流は玉掛けレスが進んでいます.しかし,補助的な作業や保全作業等での玉掛け作業は残っており,それらの多くが非定常的な作業です.
平成12年2月に策定された『玉掛け作業の安全に係るガイドライン』に記載されている内容を作業者全員に周知徹底させ,玉掛け災害の撲滅に向けて一層の取り組みを進めています.

玉掛け遵守事項

(1) 動いているつり荷およびつり具に案内ロープ以外の物を介して触れてはならない.
(2)   地切り時に案内ロープ以外の物を介して触れてはならない.

(3)

  一着地時に手鉤または案内ロープを介した場合でないとつり荷等に触れてはならない.
(4)   一時預けされていない停止状態のつり荷に直接手を触れてはならない.
(5)   玉掛け指揮者は作業者の安全確保について全責任と権限を持つ.
(6)   玉掛け補助者およびクレーン運転士は,合図者の指示なしでは行動してはならない.
(7)   無線クレーン運転者が運転以外の動作を行うときは,キースイッチを切り抜いておくこと.
(8)   車両上の玉掛け作業で荷台上および運転席に人がいる場合は,合図を行ってはならない.
(9)   高さ1メートル以上の荷台での玉掛け作業では,転落防止措置または荷台以外に退避場所を設置しなければならない.

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