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積載形トラッククレーンの安全のポイント
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1. はじめに
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    susume01_11_01.jpg平成2年移動式クレーン災害の増加に歯止めをかけるため1トン以上5トン未満の運転資格が特別教育から技能講習へ資格の強化が図られました.それから10数年景気と共に移動式クレーン(特に積載形トラッククレーン)を取り巻く環境も大きく変わってきています.積載形トラッククレーン開発においても性能の競争から環境に優しいクレーン,安全なクレーンという方向に進んできています.ユーザー層においてもクレーンがついていれば便利だろうという安易な購入から必ず必要というトラックにだけ架装し所有は必要最小限にとどめ不足のときにはリースレンタルを利用するスタイルが増えてきています.<表1>
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2. 資格について
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リースレンタルの普及に伴い積載形トラッククレーンの操作の機会も以前のようにクレーン付トラックの所有者のみという時代に比べ所有しない人も容易に操作する機会を得ることができます.ただし積載形トラッククレーンの運転はそのつり上げ荷重に応じた資格を有するものでなければ就業(道路交通法第2条第1項第1号の道路上を走行させる運転を除く)できません.玉掛け作業においても次の資格を有するものでなければなりません.<表2>
上記の「つり上げ荷重に応じた資格」の「つり上げ荷重」とは実際につり上げている荷物の荷重ではなく操作している積載形トラッククレーンがつり上げできる最大つり上げ荷重です.無資格で操作できる移動式クレーンは最大つり上げ荷重が500kg未満のものでこのサイズのクレーンはごくまれにしかありません.

表2 つり上げ荷重別関係法令対応表

対象者 spacer.gif つり上げ荷重
500kg未満
500kg以上1t未満 spacer.gif spacer.gif 1t以上3t未満 spacer.gif spacer.gif 3t以上5t未満 spacer.gif spacer.gif 5t以上
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運転者 資格不要 運転のための特別教育修了証 spacer.gif
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運転可能範囲 小型移動式クレーン運転技能講習修了証 spacer.gif
運転可能範囲 移動式クレーン運転士免許
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玉掛作業者 資格不要 玉掛のための特別教育修了証 spacer.gif
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作業可能範囲 玉掛技能講習修了証
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3. 転倒事故防止について
 
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積載形トラッククレーンによる重大な災害は他の移動式クレーンに比べても転倒事故が1番多く突出しています.<表3>

表3 移動式クレーン機種別現象別災害発生状況(平成12年度)

現象別 機種別
トラック
クレーン
積載形トラック
クレーン
ホイール
クレーン
クローラ
クレーン
浮き
クレーン
落下 2 11 7 1 1
つり荷,つり具が激突したもの     1    
挟圧   4 3 2 1
墜落 1 5 7    
機体,構造部分が
折損,倒壊,転倒したもの
1 11 1 2  
感電   2      
その他          
合計 4 33 19 5 2

つり上げ荷重3トン以上の移動式クレーンには過負荷防止装置(ML:モーメントリミッタ)が義務付けられていますが移動式クレーンの中でも最も数の多い積載形トラッククレーンの殆どがつり上げ荷重3トン未満でこの規制の対象外です.そのためオペレーター自身が十分に注意を払って作業しなければ転倒事故を防ぐこと,転倒事故を減らすことができないのです.転倒の主因はオーバーロードと言えましょう.転倒の要因としてつり荷,積み荷,アウトリガー張出し量,ブーム長さ,作業範囲,…など多岐にわたっておりそれぞれが+要因,−要因となっています.特にアウトリガー設置条件は転倒事故に大きな影響を与えます.

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  〈アウトリガー張出し幅〉 
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取扱説明書,移動式クレーン運転士教本には必ず「アウトリガーは最大張出しで作業して下さい」と書いてあります.アウトリガーの片側の張出し量は約0.7m〜1.0m(中型車架装用クレーン)です.それだけの設置スペースが取れないのでしょうか!アウトリガーを張出さないことで荷下ろし地点へ車両は近づけられます.(作業半径を小さくできる)アウトリガーを張出すことにより作業半径は大きくなりますが実際の性能表を使って比べてみましょう.<表4>

表4 空車時定格荷重表(例)

使用ブーム
1
1+2
spacer.gif 後方,側方つり

作業半径(m) 2.0 2.5 2.7 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.32
空車時
定格荷重
(t)
アウトリガー
最大張出
2.9 2.9 2.9 2.2 1.67 1.35 1.1 0.95 0.85
アウトリガー
最小張出
2.0 1.4 1.2 0.95 0.7 0.6 0.5 0.45 0.4

 

susume01_11_02.jpg<例1>の場合はアウトリガーは格納位置で作業半径4.0m,アウトリガー最小張出しの性能ですから空車時定格荷重は0.6トンです.

<例2>の場合はアウトリガーは最大に張出され作業半径5.0mと1.0m作業半径は大きくなりますが,アウトリガー最大張出しの性能ですから空車時定格荷重は0.95トンとなります.

 狭い場所でアウトリガーを両側張出せないときつり上げ側と反対側のアウトリガーは,最大に張出さなくてもつり上げ性能には大きな影響はありませんがウッカリ反対側へ荷を回したとき,荷がゆれて反対側に荷が行ったとき転倒の危険があります.
アウトリガーを最大に張出すことにより作業半径は大きくなりますがそれ以上に空車時定格荷重が上がり余裕ある作業,安全な作業ができることがご理解頂けたでしょうか.

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  〈アウトリガー設置地盤〉
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susume01_11_03.jpgアウトリガーを最大に張出しても設置した地盤が軟弱だとやはり転倒してしまいます.アウトリガーを設置する地盤の状態を良く把握することが必要です.たとえ舗装した道路でも夏場のアスファルトのように柔らかくなってアウトリガーフロートが沈むこともあります.雨上がりの土壌では必ず敷板を用意するべきでしょう.敷板を敷いてもクレーン作業を重ねると車両は少しづっ移動し敷板から外れることもあります.外れたショックで荷の落下もあるので長時間の作業では時々敷板上のフロートの位置を確認してください.
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  〈前方つり〉
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susume01_11_04.jpg積載形トラッククレーンの側方つり,後方つりではアウトリガーと後輪で頑張って安定を保っています.前方つりではアウトリガーと前輪で頑張ることになります.しかしアウトリガーと前輪との距離は後輪とアウトリガーの距離に比べると極端に短いわけです.その上カウンターウエイトとなるトラックのエンジンもつり荷側にあることになり安定度には大きなマイナス要因となってしまいます.そのため前方つりの定格荷重は側方つり,後方つりの25%に設定されています.無理は厳禁です.
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  〈つり荷のつり上げ高さ〉
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作業中バランスを崩して転倒しそうになっても荷が地面へ早々に着いてしまえば転倒せずにすみます.荷を移動するときは必要以上に荷を持ち上げないこと(地上20〜30cm)により転倒防止ができます.バランスを崩し倒れそうなときはウインチ・下げ(荷を下げる),テレ・縮み(作業半径を小さくし,荷を下げる)操作で転倒を回避するかすぐその場を退避し被災しないことが大事です.
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  〈安全装置〉
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susume01_11_05.jpg3トン以上のクレーンに義務付けられている過負荷防止装置(ML:モーメントリミッタ)が積載形トラッククレーンにもオプション設定されています.クレーンの状態の空車時定格荷重を計算し,今つっている荷の実荷重と比較しオートストップ,警報を発します.空車時定格荷重と比較するために荷台に積荷が満載されているときは安定が十分あるのにかなり安全側でオートストップ,警報を出すのでベテランオペレーターからは敬遠されがちです.
このほか,転倒防止を空車時定格荷重との比較に求めずアウトリガーの浮き(接地圧)で検知する方式の転倒防止装置が開発されました.転倒の際は必ず作業している反対側のアウトリガーが浮く(接地圧の減少)のでそれを感知し転倒を防止します.アウトリガーの張出し幅,ブーム長さ,荷台の状態(空荷,満載),クレーンの状態に関わらずアウトリガーの浮きのみチェックしているシンプルな発想です.
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4. 落下事故防止について
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玉掛け作業に資格が要るように玉掛けが不確実であるとクレーン作業中ちょっとしたゆれによりつり荷の落下などとても危険です.玉掛けの基本を守り確実な玉掛けが必要です.
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  〈乱暴な操作〉
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旋回,起伏の操作において,旋回ではジブの角度が小さいとき,ジブの長さが長いとき,起伏ではジブの長さが長いほどつり荷の移動速度は速くなります.乱暴なレバー操作はつり荷がゆれ落下の原因になるほかクレーン本体にもダメージを与えることになりかねません.遠隔操作(ラジコンやリモコン)による操作となるとレバー以上に慎重にしなければなりません.選択スイッチを入れアクセルレバーをゆっくり引きます.止めるときはアクセルレバーをゆっくり戻し選択スイッチを離します.アクセルレバーを戻さず選択スイッチを離してしまうと,クレーンは急激に止まり荷はゆれてしまいます.遠隔操作における連動操作も作動圧の違いの大きい2連操作をすると{例えばテレ・縮み(作動圧が高し))とウインチ・上(作動圧が低し))}作動油は作動圧の低いウインチに殆ど流れテレ・縮みは止まったように見えます.ウインチを切ると再びテレ・縮みは動き出し作動はガタンガタンとなりつり荷はゆれてしまいます.
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  〈ジブのトップと衝突〉
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susume01_11_06.jpgテレ伸長時にウッカりするとジブのトップとフックが衝突することがあります.ジブの先端ばかりを気にしているとフックが上昇しているのを忘れジブのトップにフックが衝突します.最近のクレーンには巻過警報と共にオートストップするタイプ(巻過防止装置)が多くなりジブのトップとフックが衝突して破損させることは少なくなってきたようです.しかしオートストップが作動し,急停止するとやはり荷はゆれてしまいます.ジブの角度が大きくなるとジブのトップとフックの間隔がつかみにくいので慎重な操作が必要です.ジブの伸縮にウインチが連動することによりジブのトップとフックの衝突するのを防止する装置も開発されてクレーンの安全性も向上しています.
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5. 点検について
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    クレーン作業に十分注意を払っていてもクレーン本体が故障していては事故につながってしまいます.月例点検,年次点検が義務付けられているようにクレーン本体も常にベストの状態を保っていなければなりません.ジブ,コラム,ベースなどの構造部分の亀裂,変形のチェック,作動時の異音に気をつけましょう.締め付け部の緩みは部品の脱落につながるほか緩むことにより応力集中を受け構造部が変形することもあります.
遠隔操作では電気系の制御トラブルや作動油の汚染によるアクチュエーターの作動不良とトラブルの内容も変化してきています.以前に増して質の高い保守管理が必要になっています.
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6. 作業終了時,走行姿勢について
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    susume01_11_07.jpg作業が終了して早く帰社,帰宅したい気持ちは良くわかりますがブームの格納忘れ,アウトリガーの格納忘れによる建造物との衝突事故も起きています.作業終了時には必ずチェックしましよう.ブームやアウトリガー未格納警報の安全装置もあります.
また,フックをジブのトップに格納するタイプが主流となってきています.(フック格納型クレーン)それ以前に生産されたクレーンのジブのトップに角材をはさんで走行しているクレーンをよく見かけますが,旋回装置に強制的なロック装置を持たずウォームとウォームホイルの摩擦力でロックしているタイプは完全なロックではないので走行時の振動で少しずつ旋回してしまいます.使い込んだクレーンほどこの摩擦力が小さくなっているので旋回しやすくなります.走行時少しずつ旋回しボデー外に出たブームが電柱にぶつかる重大事故も起きています.フック格納型以外のクレーンでフックをジブのトップに格納し走行するのはとても危険です.コラム,荷台またはキャブ前方のフックがけにワイヤロープで固定してください.
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7. 危険予知について
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    空車時定格荷重範囲内でマニュアル通り作業していれば転倒事故,クレーン破損事故はまず起こりません.今の作業が安全作業なのか,オーバーロードしているのを「自覚しているのか」「わかっていないのか」で事故につながるのか,未然に防げるのかが決まります.クレーンが転倒しなくてもつり荷と建物の間に挟まれる,つり荷にぶつかる,荷台から落ちるなど危険はそこらじゆうに転がっています.
遠隔操作の普及は一人作業による効率アップと安全な場所で操作できる利点があるのにわざわざ狭い場所で作業して,クレーンやつり荷に挟まれる事故はあとを絶ちません.万が一このクレーンが倒れてきた場合どこにいれば安全か,挟まれることはないか,予測しながら作業することが必要です.自分だけでなく周囲の人にも気を配り事故に巻き込まないようにしなければなりません.
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8. おわりに
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積載形トラッククレーンの最大つり上げ能力は2〜2.9トンつりが主流です.2トン,2.9トンといえども人間の力ではとても出せない強力で危険な機械でもあります.フックと玉掛け用ワイヤロープ,荷物と玉掛け用ワイヤロープの間に指が挟まれたら指は簡単につぶれてしまいます.クレーンの動きはさほど早くは見えませんが力は想像以上に大きく,強力で便利なクレーンでも扱い方を一つ間違えれば危険な機械となります.安全のための段取りに手を抜かず,事故を起こさず,被災しないことが優秀なオペレーターと考えます.

(古河ユニック(株) 蓑 博)

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