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建設工事用クレーンの強風対策 (2)
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spacer.gif 移動式クレーン編
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1. はじめに
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susume02_09_01.jpg近年橋梁や建築物の大スパン,高層化に伴い建設工事に使用する移動式クレーンも大型になってきています.
このため,万一事故を起こしたときの被害は,作業場内に止まらず場外にも及ぶ大きな事故となります.
日本では,毎年8月から10月にかけて台風が接近し,そのうち幾つかが上陸して大きな被害を与えています.台風以外にも冬季季節風,旋風 ,局地的突風などの強風による移動式クレーンの転倒事故もその一つです.
今回は建設工事に使用する移動式クレーンの強風対策について紹介します.職場の強風対策に多少でも参考になれば幸いです.
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2. 風とクレーン等の関係法規について
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風による事故を防止するため,「クレーン等安全規則」では,強風時の作業中止が定められています.また,「移動式クレーン構造規格」では,移動式クレーンを設計する際のクレーン構造部分の強度計算などが規定されています.
以下に,「クレーン等安全規則」及び「移動式クレーン構造規格」 の風に関する主な規定を紹介します.

(1) クレーン作業に関する規定 (クレーン等安全規則)
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(2) クレーンの設計・製作に関する規定 (クレーン構造規格他)
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3. 移動式クレーンの強風対策
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spacer.gif spacer.gif 前述のように,強風による事故を防止するため,移動式クレーンの「強風時の作業中止」(クレーン則74条の3)及び「強風時における転倒の防止」(クレーン則74条の4)が規定されていますが,この作業中止の強風時とは10分間の平均風速が10m/S以上の風をいい,転倒の防止措置を講じる強風時には何m以上の風とはいわずに,作業を中止することです.
移動式クレーンが転倒するおそれのある時は,移動式クレーンの転倒による労働者の危険を防止する措置を講じなければなりません.
市街地で大型移動式クレーンが転倒すると労働者ばかりか,通行人を始めとする第三者への危険が予想されるので,転倒の防止措置は時期を逸せず確実に行わなければなりません.
移動式クレーンの転倒防止措置を講じないで単に作業を中止しても,待機中に強風にあおられ転倒した例や,台風などの影響を受けることが予想されたにも係らず適確な転倒防止措置をせずに,休止中に大型移動式クレーンが転倒した例もあります.
移動式クレーンの運転者を始めとする関係者は,この位の風では大丈夫と安易に判断せず,強風が予想されたら以下のような早めの対策を講じる必要があります.
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(1) ボックス構造ジブの場合
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(1)spacer.gif 旋回ロックおよび旋回ブレーキをかけ,ジブを最短まで縮め,フックは過巻きリミットスイッチが作動する直前まで巻き上げる.
(2) フックが人や物に当たらぬ角度までジブを下げる.

(3)

更に強風が予想される場合は,ジブを走行姿勢状態にしてキャリヤ上にセットし,フックもキャリヤに結縛する.
(4) アウトリガーを設置する.
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(2) ラチス構造ジブの場合
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1)spacer.gif クローラクレーンのフロントアタッチメントが「クレーン仕様」のとき
強風時には作業を中止して次のような措置をします(図1).

spacer.gif (1)spacer.gif 空フック状態でフックを過巻き停止位置まで巻上げます.
(2) ジブ角度を約70度にします.(待機時のジブ角度については事前にメーカに確認しておきましょう.)

(3)

カウンタウェイト側が風上になるように旋回し,風をジブ背面より受けるようにします.
(4) 巻上げ装置,旋回装置のブレーキとロックをかけ,エンジンを止めます.

 
spacer.gif  なお,強風により転倒のおそれがあるときは次の手順によりジブを地上に降下します(図2).

spacer.gif (1)spacer.gif 空フック状態でフックを過巻き停止位置まで巻上げます.
(2) ジブを地上に降ろします.

(3)

巻上げ装置,旋回装置のブレーキとロックをかけ,エンジンを止めます.

 
spacer.gif フロントアタッチメントを地上に降ろすころができないとき(応急処置)
事前にアンカウェイトを用意しておきます.アンカウェイトの量(質量)についてはメーカに確認しておきましょう(図3).

spacer.gif (1) 空フック状態にします.
(2)spacer.gif ジブ角度を約70度にします.(待機時のジブ角度については事前にメーカーに確認しておきましょう.)

(3)

カウンタウェイト側が風上になるように旋回し,風をジブ背面より受けるようにします.
(4) フックでアンカウェイトをつって巻上げワイヤロープが張った状態にします.
(5) 巻上げ装置,旋回装置のブレーキとロックをかけ,エンジンを止めます.


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2)spacer.gif クローラクレーンのフロントアタッチメントが「タワークレーン仕様」のとき
強風時には作業を中止して次のような措置をします(図4).

spacer.gif (1) 空フック状態でフックを過巻き停止位置まで巻上げます.
(2)spacer.gif タワージブ角度を約50度にします.(待機時のタワージブ角度については事前にメーカに確認しておきましょう.)

(3)

カウンタウェイト側が風上になるように旋回し,風をタワー背面より受けるようにします.
(4) 巻上げ装置,旋回装置のブレーキとロックをかけ,エンジンを止めます.

 
spacer.gif なお,強風により転倒のおそれがあるときは,次の手順により以下のような措置をします(図5).

spacer.gif (1) フックを地上に降ろす.
(2) タワージブを降ろしてタワーに連結し,タワー角度を約50度にする.

(3)

カウンタウェイト側が風上になるように旋回する.
(4) 巻上げ装置,旋回装置のブレーキとロックをかけ,エンジンを止めます.

 
spacer.gif タワージブを降ろしてタワーに連結することができないとき(応急処置)
事前にアンカウェイトを用意しておきます.アンカウェイトの量(質量)についてはメーカに確認しておきましょう(図6).

spacer.gif (1)spacer.gif 空フック状態にします.
(2) タワージブ角度を約50度にします.(待機時のジブ角度については事前にメーカに確認しておきましょう.

(3)

カウンタウェイト側が風上になるように旋回し,風をタワー背面より受けるようにします.
(4) フックでアンカウェイトをつって巻上げワイヤロープが張った状態にします.
(5) 巻上げ装置,旋回装置のブレーキとロックをかけ,エンジンを止めます.

spacer.gif 暴風が予想される場合は事前にタワーを地上に降ろしておきましょう.
なお,クレーンの仕様により強風時の対応が異なる場合がありますので,メーカーの取扱説明書により十分な措置を図ることが必要です.
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4. 災害事例
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spacer.gif (1) つり荷が強風にあおられて落下し,作業員が下敷きになる
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susume02_09_07.jpgこの災害は,マンション建築工事現場内で型枠に用いるための合板を移動式クレーンで移動させていたところ強風にあおられてつり荷が落下し,近くで作業中の作業員が下敷きになったものである.

spacer.gif 原因
1  強風が吹いている天候であるにもかかわらず作業を行ったこと.
2  荷くずれしやすいつり荷に対して,半掛けで玉掛けを行う等荷の状況に応じた適切な玉掛けがなされなかったこと.

3 

移動式クレーンを用いた荷の運搬作業にあたり,作業計画の策定,作業前の打合わせ等がなく,関係労働者に運搬作業に際しての留意事項の周知がなされていなかったこと.

spacer.gif 対策
1  強風のため,クレーン作業に危険が予想される場合は,作業を中止すること..
2  玉掛けを行う場合は,荷の形状,数量等に応じた適切な玉掛けを行うこと.
3 クレーン等を用いた荷の運搬作業を行う場合は,荷の状況,運搬経路等について,あらかじめ作業計画を定め,関係労働者に周知すること.

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(2) 強風にあおられてジブが転倒した
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susume02_09_08.jpg病院増築工事現場内でクローラクレーン(つり上げ荷重35トン)を使用して,鉄筋束質量約2トンの荷降ろし作業を行っていた.
午前10時40分頃に風が強くなってきたので,現場監督の指示により鉄筋荷降ろし作業を一時中断し,主ジブ34m,補助ジブ12mを風下に向け待機した.
11時50分頃生コン車がジブの下を通るためジブが邪魔になったので,クレーンを旋回しジブを風上に向けた,この時のジブ角度は約60度だった.5分位過ぎた時いきなり突風が吹き(25m/S)ジブを背負う形でクレーンが転倒した.幸い人災も物損も無かった.

spacer.gif 原因
1  風下に向け待機していたクレーンを不用意に旋回しジブを風上に向けたこと.
2  運転士を含む関係者が強風に対する十分な知識がなかったこと.

3 

強風対策が事前に話し合われておらず,適切な処置をとらなかったこと.

spacer.gif 対策
1  強風時はクレーンを稼動させず,早めにジブを地上に倒すなどの適切な措置を講じること.
2  強風に関する事故事例などを題材にした勉強会を開催し,関係者全員で強風の認識を高めること.
3 クレーンの作業中止要領を定め,他の作業の邪魔にならない待機場所や待機姿勢などについて,事前に関係者に周知すること.

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5. あとがき
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今回強風による移動式クレーンの事故や災害事例から,原因,対策と述べてきましたが,一見頑丈そうな移動式クレーンでも長いジブが風圧を受けたり,大型パネル・PC版といった面積の大きなつり荷が風圧を受けると,ジブの損壊や転倒に至るということを認識していただきたいと思います.たかが風と安易に考えず移動式クレーン作業を行う関係者は,風が吹き始めたら早めに適切な強風対策を講じ,事故や災害を未然に防止するよう心掛けて頂きたいと思います.

(編集委員 神田英治)

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