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建設工事用クレーンの強風対策 (3) 完
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spacer.gif spacer.gifクライミングクレーン編
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1. はじめに
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クライミングクレーンの強風対策については,色々と述べられてきていますが,その殆どは極めて原則的な内容に終始している感があります.そもそもクライミングクレーンの設計において風に関係する規格は前号(移動式クレーン編)でも述べられているように,暴風時設計風速(55m/s)と作業時設計風速(16m/s)の二つの条件においてその強度を確保することとなっています.但し,暴風時におけるクライミングクレーンの姿勢等については特に言及していないため,暴風時の設計上の姿勢条件はメーカーに任されているのが現状です.
その条件の殆どがジブを伏せ限まで倒し,旋回をフリー状態にして常にジブを風下に向けているという設定で強度計算がされており,その方が経済設計ができるためでもあります.そういう意味から作業時設計風速以上の対策は当然のように暴風時の姿勢条件と同様のものとなっています.
しかしながら,現実の問題として必ずしもメーカー推奨の対策が可能な環境ばかりでないことの方が殆どです.暴風時設計風速は極めて大きな台風を想定しているため,これを前提とした対策には限界があり且つ,現実に則した適切な対策も確立されていないため誤った対策や知識不足等から事故・災害を起こした事例も少なくありません.今回はできるだけ現実に近い形での対策例とその要点を取り上げ,分かり易く紹介したいと思います.
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2. 対策
spacer.gif spacer.gif クレーンメーカーが推奨している強風対策は,冒頭にも述べたように規格に定められた最大風速に対しての強度確保を前提としております.
そのため同一敷地内に複数のクレーンが設置されている場合.高さ制限のある場合.敷地が狭い現場等にはその通りの対策が適用できないのが現実です.より現実的な対策を講じるためには,まずそのクレーンの性能・特徴をよく知ることが重要です.どんな強風に対してもクレーンは万能では無いことを認識した上でその時点での風の強さとクレーンの強度を考慮し適切な対策を講じることが必要となります.これから述べる対策はあくまでも平均的なクレーンの性能をもとに検討されたものです.従って各対策の選択及び,その計画に際しては必ず関係部署又はクレーンメーカーに問い合わせをし,確認することが必要です.
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A. 旋回フリーができる場合
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(旋回範囲内に障害物がなく,ジブ先端が敷地境界を越えないもの)(図1参照).

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A-1.spacer.gif 瞬間風速55m/s迄
(1) ジブ傾斜角は伏せ限とする.
(2) フックは上限まで巻き上げておく.

(3)

ジブを風下に向けておく.
(4) 旋回スリップリングの無い機種は電源ケーブルを本体から切り離しておく.

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B. 旋回フリーができない場合
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(ジブ先端が敷地境界を越えたり,隣接の構築物又はクレーンに干渉するもの)(図2参照).
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B-1.spacer.gif 瞬間風速30m/s以下
(1) ジブの傾斜角は45°〜50°の状態にする.
※ジブ横風によるモーメントと本体後方の横風によるモーメントが旋回中心においてバランスし易い状態.
(2) フックは躯体より引っ張っておく.
※風によるフックの振れを防ぐ.
(但し張力は掛け過ぎなやいよう注意する)

(3)

ジブを風下に向け旋回ブレーキは掛かっている状態にする.
※旋回ブレーキの保持トルクをメーカーに確認すること.
B-2.spacer.gif 瞬間風速30m/s以上
(1) ジブを堅牢な構造物に預けて固定する.(図3参照)
(2) ジブ先端からトラワイヤーを張る.(図4参照)
※ジブ先端に専用のブラケットを設けることが望ましい.(図5参照)
1)spacer.gif ジブの傾斜は伏せ限とする.
2) フックは躯体より引っ張っておく.
(但し張力は掛け過ぎなしいよう注意する)

3)

ジブを風下に向け旋回ブレーキは掛かっている状態にする.
横風に対するマスト強度をメーカーに確認する(場合によっては逆クライミングにより本体を下降させる)
機種によってはトラワイヤー張力がクレーン定格荷重を超過する場合があるのでメーカーに確認をとること.
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C. 共通対策
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(1)spacer.gif 電源ケーブルは風にあおられないようマストに固定する.
(2) 電源は全て切る.但し航空障害灯は点灯させておく.

(3)

制御盤,運転室の扉・窓は完全に閉めておく.
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3. 災害事例
spacer.gif クライミングクレーンが強風,暴風によって災害を受けた事例は数多く報告されているが,その中で最も多いのが「ジブを起こし過ぎたために正面からの強風にあおられ後方に曲げられて破損」が挙げられる.これは台風の季節はもとより日常の作業また管理において季節風,突風に対する認識の甘さが原因している場合があり,対策を充分にしていなかったのみならず安易な操作によって災害が発生するケースがある.予想される暴風についての対策はもとより日常における危険性についても充分考慮し,風に対する管理が必要とされる.
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(1) 小型のクライミングクレーンのジブが突風にあおられAフレームに衝突し,後方に折れ曲がり隣接した電車の架線を損傷させた.
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susume02_10_05.jpgこの災害は鉄道高架に隣接する建築工事現場に設置された小型のクライミングクレーン(つり上げ荷重2.9t)のジブが明け方の突風にあおられ発生したものである.クレーン本体は地上から約30m付近に位置し,フックは上限まで巻き上げられていた.ジブの傾斜角は約60°の状態にして,南側方面に向け電源スイッチを切って停止させていた.事故当日は午前6時00分に暴風警報が発令され,その直後から急に突風が吹き始め午前6時02分頃ジブが風にあおられAフレーム上部に衝突し反対側の鉄道高架側に折れ曲がり架線を損傷させた.幸いにもこの時運転中の電車が無かったため大事故に至らなかったのがせめてもの救いであった.なお,事故発生当時の風速は約30m/s程度であった..

spacer.gif 原因
1  ジブを起こしすぎていた.
2  通常は作業終了後ジブを線路の反対側に向け,フックを躯体に固定していたがたまたまこの時に限りフックの固定をしなかった.

3 

明け方の暴風警報であったため対策が間に合わなかった.

spacer.gif 対策
1  強風に関する事故事例などを題材にした勉強会を開催し,関係者全員でクレーンの特性や風に対する認識を高める.
2  クレーン作業終了時は不足の突風に備え,ジブ先端よりトラワイヤーを張る..

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(2) 小型クライミングクレーンの強風対策中にジブが突然の横風を受けジブの中間付近に取り付けたトラワイヤーが緊張しジブが損壊した.
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susume02_10_06.jpgこの災害はマンション建設工事現場内で,おりからの台風接近に備え,強風対策としてジブのトラワイヤー取付作業中に発生したものである.この現場では電波障害・高圧線・道路の制限等から対策としてジブを固定する方法を採用するということを決めていた.トラワイヤー等の強度は風速40m/s迄を想定し考慮されていた.当日の予報では25m/s以上の暴風圏内には入らない予想であったが予定通りトラワイヤーによるジブの固定作業を行うこととした.しかしながら,トラワイヤーを緊張する前に予想外の突風が吹き,旋回ブレーキがすべってジブが流され,ジブ中央付近に取り付けられたトラワイヤーが緊張した途端ジブに偏荷重が作用し損壊に至った.

spacer.gif 原因
1  予想外の突風が吹いた.
2  ジブの固定箇所を先端部でなく中央付近とした.

3 

トラワイヤー及びトラ尻の強度確認はされていたが,ジブの強度確認がされていなかった.

spacer.gif 対策
1  トラワイヤーはジブ先端から張る.
2  予測に反する風向き,突風を考慮し事前にクレーン本体とマストを固定する対策を先行させる等養生施工手順を見直す.

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4. まとめ
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クライミングクレーンの強風対策については,クレーンの機種・設置期間・地理的条件・周囲の状況,姿勢等,様々な条件があるため施工計画の段階で予め対策を立てておく必要があります.又,強風の程度をよく把握し適切な対策を行わなければなりません.過度の対策により大きな費用が発生する場合もありますが安全を最優先に考えるべきと思います.事前の対策に当たっては作業所単独の判断によることなく,関係部署又はクレーンメーカーに問い合わせをし適切な指導のもと,万全の対策を講じるよう希望します.
(完)

参考文献
spacer.gif (社)日本クレーン協会 安全のすすめ「クレーン」第35巻9号1997
(社)日本建設機械化協会「クライミングクレーンPlannig百科」

 

( (株)小川製作所 三浦 拓 )

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