spacer.gif
玉掛災害を無くそう!
spacer.gif  
玉掛作業委員会
spacer.gif spacer.gif
1. こんなに多い玉掛災害
spacer.gif spacer.gif
クレーン作業と玉掛作業とは切っても切れない関係にあります.それは,茶碗でご飯を食べるのにお箸を使うように,また,バイオリンを弾くのに弓が必要なように,なくてはならないものと言えましょう.
それだけに,クレーン作業による災害のうち,玉掛けが主要因となる災害が高い比率を占めていることは,誠に憂慮すべき状況です.

ここに,平成3年から平成12年までの10年間にわたる,クレーン及び移動式クレーンによる死亡災害発生状況の推移を示したグラフがあります.
死亡者数は,おおむね右肩下がりに減少の傾向を示していますが,そのうち玉掛けが要因となった死亡者の比率は,ここ数年間にわたって30%程度を占めており,むしろ僅かながら増加傾向にあります.
susume02_11_01.jpg

susume02_11_02.jpg同じ期間で,玉掛作業時の死亡災害をその要因別に分類したグラフを見てみましょう.
要因の首位は「荷ずれ」によるものが最も多く,25%を占めています.
「荷ずれ」とは,玉掛け不良により,つり具,つり荷が傾いて作業者に接触したり,つり荷やその一部がずり落ちたり,クランプから荷が滑り落ちたりすることを言います.
次に多いのが「玉掛け外れ」,「玉掛け用ワイヤロープの切断」によるもので,この順位はここ数年間変っていないのです.
クレーン作業には欠かすことのできない玉掛作業だけに,これらの要因による災害の発生を無くすことが,いかに重要なことかを再認識したいものです.

spacer.gif
2. こんな災害が多い
spacer.gif
それでは,災害要因の中で上位を占める「荷ずれ」「玉掛け外れ」「玉掛けロープの切断」について,実際の事例で見てみましょう.
spacer.gif
事例1spacer.gifspacer.gif
spacer.gif 「つり上げた鋼管が玉掛け用ワイヤロープからずり落ちて被災者に当たる」
spacer.gif spacer.gif
(1) 災害発生時の状況
spacer.gif
spacer.gif
susume02_11_03.jpgプラントエ場から,プラント建設用の鋼管3本(7m×2本,11m×1本)を搬入してきたトラックの運転手とクレーン運転手が,トラッククレーンを用いて鋼管を仮置場に降ろす作業を始めた.
当日の始業前打合せでは,「鋼管の玉掛けはワイヤロープを絞って吊る」こととしており,そのとおりの作業で積み込んできたため,1本目の鋼管には玉掛け用ワイヤロープが絞った状態で玉掛けされており,そのまま降ろしたが,2本目はトラック運転手が1本目に使用した玉掛け用ワイヤロープを半掛けにして降ろした.
最後の鋼管(長さ11m)は,荷台上に収まりきれないため片方の端を運転台に乗せ,傾斜した状態であったが,トラック運転手はこの鋼管に半掛けで2箇所2点つりの玉掛けを行った.
次にクレーン運転手が巻き上げを始め,この間,トラック運転手は玉掛けしたワイヤロープがずれないように手で押さえていた.
鋼管がほぼ水平になった時点でトラック運転手は荷台から降り,クレーン運転手はそのまま巻き上げを続けたところ,玉掛け用ワイヤロープがトラック後方側にずれていくのに気が付いた.
クレーン運転手はすぐに巻き上げを中止したが,鋼管は運転台側の端が地面に着くまでに傾斜し,ワイヤロープがますます後方にずれて,ついには鋼管全体が玉掛け用ワイヤロープから抜け落ち,地上に降りていたトラック運転手の腹部に当たったものである.
spacer.gif
(2) 主な原因
spacer.gif
spacer.gif

a.spacer.gif 被災者が事前の打合わせを守らず,滑りやすい鋼管の積み下ろしに「半掛け」という不適切な玉掛方法をとったこと.また,クレーン運転手が不適切な玉掛方法のやり直しを要求せず,そのまま巻き上げたこと.
b. 玉掛け後のトラック運転手の退避位置が適切でなかったこと.

c.

作業中に災害発生の危険性を感知した場合の対応について定められていなかったこと.

spacer.gif
(3) 対策
spacer.gif  
spacer.gif

a.

玉掛作業に当たっては,つり荷の種類,質量,形状,数量及び重心に合った適切な玉掛方法を用いること.
b.spacer.gif 「玉掛作業の安全に係るガイドライン」等を参考に,あらかじめ,玉掛用具,玉掛方法,作業者の退避位置,緊急時の対応などを定めた作業計画を作成し,関係労働者への周知を徹底すること.

susume02_11_04.jpg

spacer.gif
spacer.gif spacer.gif
事例2
spacer.gif 「玉掛け用ワイヤロープのロッキングフックから荷が外れ,被災者が下敷きになる」
spacer.gif spacer.gif spacer.gif
(1) 災害発生時の状況
spacer.gif
spacer.gif
susume02_11_05.jpgプラント解体工事で,前日までに解体されたプラント部材を,移動式クレーンによりトラックに積み込む作業を行っていた.
作業には,玉掛作業指揮者,クレーンオペレータ及び玉掛作業者(被災者)の3名が従事し,移動式クレーンに4本のロッキングフック付き玉掛け用ワイヤロープを取り付けて行うこととしていた.
積込み作業は大型の部材から始め,最初は4点つりでトラックに積み込んでいたが,部材が小さくなるにつれてロッキングフック付き玉掛け用ワイヤロープ1本の1点つりで行うようになった.
最後に,プラントの歩廊部(質量約300kg)を積み込もうとして,玉掛作業者(被災者)は1本のロッキングフック付きワイヤロープを,シャックルを使用せずに直接部材の腕の部分にある穴に掛けた.
クレーンのオペレータは,玉掛作業指揮者の合図に従って荷をつり上げ始めたが,地切りしようとしたときに荷が振れ始めたため,退避していた被災者が荷の触れを止めようとして近づいたところ,突然荷がロッキングフック付き玉掛け用ワイヤロープから外れ,被災者が落下した荷と地面との間にはさまれたものである.
使用した玉掛け用ワイヤロープは,作業前の点検時には異常が認められなかったが,災害発生後に確認したところ,フックのロック機構が有効に作動しておらず,閉じた状態でも隙間が生じることが認められた.
spacer.gif
(2) 主な原因
spacer.gif
spacer.gif

a.spacer.gif シャックル等を使用せず,フックの先端を直接部材の穴に掛けるなど,玉掛方法が不適切であったこと.
b. 荷が落下するおそれのある場所に立入ったこと.

spacer.gif
(3) 対策
spacer.gif
spacer.gif

a.spacer.gif

必要に応じシャックル等を用いるなど,適切な玉掛用具を使用し,つり上げに際しては,玉掛けの状況を確認してからつり上げ操作を行うこと.
b. 荷が振れた場合は,いったん荷を着地させる等,危険が生じた場合の措置についてあらかじめ申し合わせるとともに,いかなる場合においてもつり荷の下に立入らないことを徹底すること.

susume02_11_06.jpg

spacer.gif
spacer.gif spacer.gif
事例3
spacer.gif 「テルハを用いて鉄板をトラックに積み込む作業中,ワイヤロープが切断して玉掛者が下敷きになる」
spacer.gif spacer.gif spacer.gif
(1) 災害発生時の状況
spacer.gif
spacer.gif
susume02_11_07.jpg資材置場で,駐車場設置工事に使用する鉄板(1.5m×1.5m,質量約400kg)5枚を,テルハ(つり上げ荷重1t)を用いてトラックに積み込む作業を行っていた.
作業は,玉掛者とテルハの運転者の2名で行い,鉄板に空けられた直径50mmの穴にワイヤロープを通し,ワイヤロープのアイをチエーンブロックのフックに掛けてつり上げていた.
2枚目までの鉄板の積み込みが終り,3枚目を荷台上に降ろそうとしたところ,鉄板の下端がトラックの荷台から後方にずれ落ちそうになったため,玉掛者がテルハの運転者に巻き上げるよう指示した.
このとき運転者は操作を誤ってペンダントスイッチの「下げ」ボタンを押したため,鉄板がさらにずり落ち,これに気付いた運転者がすぐに「上げ」ボタンを押し直して,鉄板がほぼ垂直の状態までつり上げられたとき,突然ワイヤロープが切断して鉄板が倒れ,玉掛者が鉄板の下敷きとなったものである.
トラックの荷台には,鉄板を降ろしやすくするために運転席側に角材を敷き,その上に鉄板の片側を載せていたため,鉄板が約12度傾斜しており,後方にずれやすい状態となっていた.
切断したワイヤロープは,玉掛け用ワイヤロープではなく,台付け用ワイヤロープで,腐食,形くずれ,素線の断線等があった.また,玉掛者は玉掛技能講習を修了しておらず,テルハの運転者もクレーンの運転に係る資格を有していなかった.
spacer.gif
(2) 主な原因
spacer.gif
spacer.gif

a.spacer.gif 腐食,形くずれ,素線の断線等が生じている不適切なワイヤロープを使用したこと.
b. 鉄板のつり上げに玉掛け用ワイヤロープを使用せずに,荷や物の固定用の台付け用ワイヤロープを使用したこと.
c. 角材を運転席側にだけ敷いており,鉄板がずれやすい状態であったこと.
d. 作業者が必要な資格を有していなかったこと.

spacer.gif
(3) 対策
spacer.gif  
spacer.gif

a.spacer.gif 玉掛作業に用いるワイヤロープについて,使用前に腐食,形くずれ,素線の断線等について点検を行い,適切なものを使用すること.
b. 荷のつり上げには,必ず玉掛け用ワイヤロープを用いること.
c. 玉掛方法や,荷卸し場所の状況等について定めた作業計画を立て,関係労働者に事前に周知すること.
d. クレーンの運転や玉掛作業については,法定の有資格者を就かせること.

susume02_11_08.jpg

spacer.gif
3. 事故を起こそうと思う人はいないのに…
spacer.gif spacer.gif
さて,以上の事例をご覧になって,あなたはどのように感じましたか?
「こんなやり方をすれば,事故になるのがあたりまえだ!」
「自分ならこんなやり方は絶対にしない.」
などと思われた方が殆どでしょう.
また,中には,「いつも同じような事例ばかり出てくるではないか.」という方もあると思います.しかし,残念ながらこれが現状であり,似たような事故が相変らず繰り返し発生しているのです.
誰しもが,自分のしている作業で事故が起きるとは思っていないハズなのに,現実には重大な死亡災害が絶えません.
spacer.gif
4. 玉掛災害をなくすために
いま,玉掛作業に限らず,あらゆる作業について,労働者の安全を確保するためのツールは揃っていると言えるでしょう.
法令,規格・基準,指針,及びこれらの解説書,ガイドラインや作業マニュアル等々.
このほか,玉掛作業に限ってみても,つり上げる荷の形状や重量に適した各種の玉掛用具があり,それらを使った安全な玉掛方法が決められています.
spacer.gif spacer.gif
(1) 先ず資格を取ろう
spacer.gif
spacer.gif
susume02_11_09.jpg玉掛作業に係わるからには,少なくとも関連する法規や,玉掛用具・玉掛方法などについての知識と資格が必要です.そのためのツールは揃っていますし,講習など資格取得への道も開けています.
ここで無視できなのが,最初にご紹介した災害統計で,玉掛けによる死亡災害が発生したときの玉掛作業者が無資格者であったケースが34%もあることです.統計上,資格の有無が不明の場合も含めると,47%にもなるのです.
資格を取るということは,玉掛作業についての必要最小限の知識を身につけることであり,その最小限の知識もあやしい無資格者が玉掛けを行えば,災害に結びつく確率が高くなるのも肯けます.

spacer.gif
(2) 予知能力を磨こう
spacer.gif
spacer.gif
どんなに知識があっても,それを実践しなければ何の役にも立ちません.
先の事例でも,当事者たちは「これはどうも危ないな.」と思わなかったのでしょうか.思ったとしても,「多分だいじょうぶだろう.」と安易に考えて行動してしまったのではないかと思われます.
大概の人は,それほど知識が無くても,ある程度本能的に危険を感じ取るものがありますし,また,それによって慎重な行動を取るものです.F-1レーサーは,一般道では並みのドライバーよりもむしろ慎重な安全運転に徹するそうです.
spacer.gif
(3) 経験を積もう
spacer.gif
spacer.gif
susume02_11_10.jpg勉強もした,資格も取った.しかし,それだけではまだ不十分な領域があるのではないでしょうか.
例えば,質量が明示されていない荷の重量目測などはどうでしょうか.荷の材質や形状・寸法などから質量や重心を予測し,それに見合った玉掛用具・玉掛方法を選ぶには,ある程度の経験も必要だと思われます.
どこかのお米屋さんが,米袋だけでなく,他の物でも,人間でも,肩に担いだだけでその重量をほとんどピタリと当てるのを,テレビで見たことがあります.これは,特殊な才能なのか,それとも経験の積み重ねなのか,よくは判りませんが,少なくともこの人は,ただ漫然と物を担いだのではなく,意識して予測し,実測値との狂いを次にフィードバックするという努力を続けてきたのだと思われます.
経験の多寡は,いわゆる「経験年数」もありますが,期間が短くても,意識的に集中して身につけたものこそが本当に役立つ経験と言えるのではないでしょうか.
spacer.gif
(4) そして,玉掛け名人を目指そう
spacer.gif
spacer.gif
先のお米屋さんは,たしか「重量当て名人」と呼ばれていました.
世の中には「名人」と言われる人がいろいろいますが,それらの人々に共通して言えることは,仕事に精通し,そして何よりも自分の仕事に誇りを持っていることでしょう.
玉掛作業に従事する人が,正しい知識と資格を持ち,経験を積み,「自分の仕事では絶対に事故を起こさない.」と誇りを持って言えるように,また,周りの人々から「玉掛け名人」と呼ばれるような人に,あなたもなってみませんか?

spacer.gif
[このページの先頭] [ホーム]