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新人のための安全なクレーン作業
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1. はじめに
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susume03_03_01.jpgクレーンは,重量物や大型物を効率よく運搬する機械として,製造現場,建設現場等において重要な役割を果たしており,さらに,近年の技術の進歩に伴い大容量化,高能率化が図られ,ますますその活用範囲が広がっています.
特に,最近のクレーンは,メカトロ化による安全性,操作性の向上等の配慮が図られていますが,その一方ではクレーン作業における労働災害が今なお数多く発生しているのが現状です.
今回は,これから新しい職場等において,クレーン又は移動式クレーン作業に就かれる新人を対象に,安全のためのポイントを述べることにします.
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2. クレーン作業における災害
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susume03_03_02.jpgクレーン及び移動式クレーンによる労働災害の死者数は,最近の3年間ではクレーンが年間1,300人程度,移動式クレーンが年間1,000人程度であり,特に移動式クレーンは死亡災害の割合がクレーンに比べて多いといえます(図1).

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死亡災害について現象別に見ると,クレーンでは「挟圧」「落下」「墜落」の順に多く,この3つで85%を占め,その他の現象はごく僅かとなっています(図2).
susume03_03_04.jpg移動式クレーンでは「落下」「墜落」「折損・倒壊・転倒」「挟圧」の順となっており,機体の折損・倒壊・転倒という大型災害が上位にランクされているのが特徴で,死亡災害の割 合が移動式クレーンにおいて多いのはこの影響が大きいものと考えられます(図3).
死亡災害の多いものについて現象別に原因を考えると,
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(1) 落下
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玉掛け用ワイヤーロープの切断によるつり荷の落下や玉掛け用ワイヤロープ等からつり荷が外れての落下が大半であり,いずれも玉掛用具の選定及び玉掛作業の不適切さが原因と考えられます.
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(2) 挟圧
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つり荷や床上の物体の転倒による挟圧,つり具又はつり荷に押されて床上の物体に挟まれ,機体に押されて他の構造物に挟まれ,などがあげられます.
これらの原因としては,玉掛け・玉外し時の確認不足,周囲への注意不足,合図者・玉掛作業者・運転者間の合図・連絡不足などが考えられます.
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(3) 墜落
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作業床からの墜落が多く,玉掛作業中にバランスを崩して墜落,点検修理中の墜落,回転する荷を押さえようとして墜落,などがあります.
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(4) 折損・倒壊・転倒
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機体の折損・倒壊・転倒による災害は,移動式クレーンにおいて圧倒的に多く,原因としてはアウトリガーの張り出し不足,地盤の養生の不備等によるものです.また,車両積載形トラッククレーンでは,機体の安定がトラック荷台の積み荷の有無によって変化し,気付かないうちに過荷重になっていることなどがあげられます.
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(5) 玉掛作業が要因となる災害
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災害発生の要因として注目しなければならないのが玉掛作業であり,死亡災害の約3分の1が玉掛作業に起因して発生しています.
その事例としては,損傷した玉掛用具の使用,玉掛け用ワイヤロープのサイズ等の選定ミス,不適切な玉掛方法の採用,ロープの張り具合・地切りや着地前後の荷の安定などの確認不足,運転者及び共同作業者との合図・連携不足,足場や周辺機器等の周囲の確認不足等々があります.
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3. クレーン作業のための資格
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susume03_03_05.jpgクレーン又は移動式クレーンの運転や玉掛作業を行う者は,対象とするクレーンの種類や大きさにより法令で定められた資格が必要です(表1,表2).
資格を有していない者は,これらの業務に就くことはできません.ほんの少しだけということで無資格者が操作し,事故を起こした例は数多くあります.
表1 クレーン及び移動式クレーンの運転のために必要な資格
種類 つり上げ荷重
5t以上

1t以上〜5t未満

1t未満
クレーン クレーン運転士免許(床上操作式クレーンは技能講習でも可) クレーンの運転の業務に係る特別教育を修了した者 同左
移動式クレーン 移動式クレーン運転士免許 小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者 移動式クレーンの運転の業務に係る特別教育を修了した者
* クレーン運転士免許所有者及び床上操作式クレーン技能講習修了者は,5t未満のクレーンの運転もできる.
*spacer.gif 移動式クレーン運転士免許所有者は5t未満の移動式クレーンの運転もできる.また,小型移動式クレーン技能講習修了者は1t未満の移動式クレーンの運転もできる.
* 本表は一般的によく使用されているものについてまとめたものである.

表2 玉掛けの業務に必要な資格
種類 つり上げ荷重
1t以上

1t未満

クレーン
移動式クレーン
玉掛技能講習を修了した者 玉掛技能講習を修了した者
又は
玉掛けの業務に係る特別の教育を修了した者
*spacer.gif つり上げ荷重とは,つり上げようとする荷の質量ではなく,対象とするクレーン等のつり上げ荷重のことである.
* 玉掛作業を2人以上で行う場合で,補助作業を行う者は上表の資格を必要としない.

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4. 安全装置
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susume03_03_06.jpgクレーン作業の安全を図るには,機体としての安全及び作業面からの安全並びにこれらの安全な状態を常に維持・継続するための管理面での対応が必要です.
機体としての安全とは,安全に設計・製造され,必要な安全装置が具備され機能していることであり,クレーン及び移動式クレーンには,各種の安全装置が具備されていますが,主なものについて安全上のポイントを述べることとします.
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(1) 過負荷防止装置(クレーン)
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ジブクレーンは作業半径に応じて定格荷重が変わるものが多く,作業中,気付かないうちに過負荷となり機体の損傷・転倒等を起こすことがあります.過負荷防止装置は,つり荷の重さと作業半径を検出し,モーメントを制限するものでモーメントリミッタとも呼ばれます.
また,3t未満又は定格荷重が変わらないジブクレーン等では,過負荷防止装置の代わりにつり荷の質量のみを検出する「過負荷を防止するための装置」が取付けられているものもあります.いずれの場合も,度々作動して作業の能率が悪いということで,本装置の機能を解除して運転を行ったりしないようにしましょう.
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(2) 過負荷防止装置(移動式クレーン)
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転倒災害の多い移動式クレーンにとって本装置は特に重要であり,各メーカで特徴のあるものを開発し装備しているので,説明書をよく読み取扱いを誤らないようにしなければなりません.
アウトリガー張り出し幅等の作業状態を入力する必要のあるものは,入力を誤らないように注意し,また,装置に異常を認めたら直ちにメーカに調整を依頼しましょう.過負荷防止装置は,水平な作業面を基準として諸データを予め記憶させているので,装置のみに頼らず,作業面の傾斜,地盤の状況,アウトリガー接地状態等を自分の目でも確認することが大切です.
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(3) 巻過防止装置及び巻過警報装置
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フック等のつり具の巻過ぎによる事故を防止するための安全装置であり,揚程が少し足りないからといって本装置の機能を解除して作業を行ったりしないようにしましょう.
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(4) フック外れ止め装置
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玉掛け用ワイヤロープ等がフックから外れて荷の落下事故を起こす例は数多くあります.
邪魔だからといって本装置を外したり,くくりつけて動かないようにしたり,また,本装置があるからといって,フックに玉掛け用ワイヤロープが確実に掛かっていることの確認を省略したりしないようにしましょう.
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(5) レールクランプ及びアンカー(クレーン)
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屋外の走行クレーンに装備されているもので,レールクランプは作業中の突風に対する逸走防止,アンカーは暴風時の逸走防止です.
レールクランプは,走行用制御器をOFFにすれば自動的にレールを締付けるものもありますが,手動式のものについては常日頃より操作に慣れておき,急に突風が吹いても慌てずに素早く操作できるようにしておくことが大切です.
アンカーは暴風時だけでなく,毎日の作業終了時にもクレーンを所定の休止位置まで移動させ,アンカーを効かせておく習慣をつけることが大切です.暴風など滅多に来ないということで,長年使用していなかったため,急に強風が吹いで慌てて作用させようとしたが,うまくアンカーが入らず,手こずっているうちにクレーンが風に流されて大事故になった例もあります.
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(6) その他の安全装置
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安全装置については,法令等で種々規定されており,前述したものはその一部です.最近のクレーン及び移動式クレーンは,各機種,各メーカにより法令で定めれた範囲以上の装置を付加して安全性を高めているものも多くあります(表3).
安全装置は正常な運転では作動するものではありませんが,ミスオペレーション等異常時に作動し災害を防ぐものですので,常に有効に作動できる状態にしておくとともに,作業開始前点検や月例点検及び年次の定期自主検査を確実に実施し,機能を確認しておくことが大切です.

表3 その他の安全装置(例)
クレーン 走行警報装置,隣接クレーンとの衝突防止装置,風警報装置,ロープ弛み検出装置,音声警報,など
移動式
クレーン
ジブ起伏停止装置,乗降遮断装置,自由降下インタロック,旋回自動停止装置,作業領域制限装置,音声警報,など

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5. 作業における安全
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susume03_03_07.jpgクレーン作業における安全は,運転者だけでなく,作業形態によっても異なりますが,玉掛作業者,合図者,監視者,作業責任者,保守担当者,管理者等多くの人々が直接的に又は間接的に関与し,これらが有機的に結びついて確保されるものです(図4).
作業中の災害発生要因は,運転操作ミス,玉掛作業ミス,運転者と合図者・玉掛作業者等との連携ミス等様々であり,これらは一寸した手順や確認の省略等から生じるものです.
運転や玉掛作業等における安全のための留意事項は数多くあり,また作業内容によっても多少異なりますが,基本的なポイントを下記に示します.

(1) クレーンの性能,機能を把握し,無理な運転は行わない.
(2) 定格荷重を超える荷は絶対につらない.

(3)

つり荷の質量目測は正確に(若しくはやや多めに)行う.
(4) 運転の合図は,一定の合図を定め,指名された合図者のみが行う.
(5) 荷をつったまま運転位置を離れない.
(6) 荷の形状,寸法,質量等に応じた適切な玉掛用具と玉掛け方法をとる.
(7) フックは,つり荷の重心の真上に位置決めを行う.
(8) 衝撃,荷振れ運転及び斜めづりはしない.
(9) 地切り後一旦停止し,玉掛け用ワイヤロープの張り及びつり荷の安定等を確認する.
(10)spacer.gif つり荷の下に作業者を立ち入らせない.
(11) 強風等により危険が予想されるときは作業を中止する.
(12) 地盤の状況,周辺設備,関係作業者等の周囲状況の安全確認を行う.
(13) 移動式クレーンは,原則としてアウトリガーを最大に張り出して作業する.
(14) 架空電線に接近して作業するときは,事前に保護管を取付ける等の感電防止措置を行う.

上記以外にも作業内容等に応じた多くの安全上の留意事項がありますが,これらを確実に実施するためには,作業マニュアルを整備し,また,作業開始前にはツールボックスミーティング(TBM)等で確認し合い,作業のスタートに入ることが大切です.
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6. 保守・点検における安全
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保守点検は,クレーンを常に正常な状態に維持する上で重要であり,これが確実に実施されていることにより,運転者や玉掛作業者等が安心して作業を行うことができます.
保守点検については,定期自主検査等として法令で規定され,また,検査項目及び検査方法等を示した指針が厚生労働省より公表されているものもあります(表4).

表4 主な保守・点検
クレーン 移動式クレーン
作業開始前の
点検
●クレーン等安全規則第36条 ●クレーン等安全規則第78条
●移動式クレーンの作業開始前点検指針(S51.6.21基発第468号)
月例検査 ●クレーン等安全規則第35条
●天井クレーンの定期自主検査指針(H.10.3.31自主検査指針公示第2号)
●クレーン等安全規則第77条
●移動式クレーンの自主検査指針(S51.6.21基発第468号)
年次検査 ●クレーン等安全規則第34条
●天井クレーンの定期自主検査指針(S60.12.18自主検査指針公示第8号)
●クレーン等安全規則第76条
●移動式クレーンの定期自主検査指針(S56.12.28自主検査指針公示第1号)
作業終了時の
点検等
作業終了時の点検等については,法令等に規定はないが下記のようなことを行う.また,必要により保守担当者へ修理を依頼する.
ブレーキ・クラッチ等の調整,油脂・燃料等の確認,作業日報への記録,アンカー固定(屋外クレーン)

保守点検作業時において,特に注意すべき安全上のポイントは,


(1)spacer.gif 点検中であることを明確にするため,表示旗等を掲示する.
(2) 動力源スイッチを切り,運転操作禁止札を運転室に掛ける.

(3)

必要な安全保護具を装着する.高所作業では安全帯を必ず装着し,必要により安全ネット等も取付ける.
(4) 並置クレーンがある場合は,監視人を置き,仮ストッパー等を設置して走行を制限する.
(5) 移動式クレーンの場合は,足場の良い平坦地で保守作業を行う.

特に,ワイヤロープの点検・取替えは,全てのクレーンにとって非常に重要であり,また,種類によっては,表面よりも内部の断線が先行するものもあるので,入念に点検を行うことが必要です.
保守点検を確実に実施するために,便利な点検シートや取替基準などを作成しておくのがよいでしょう.

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7. おわりに
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クレーンは種類が多く取扱う荷や作業形態も千差万別であり,本掲載は共通的な安全上のポイントについて概要を示した程度です.したがって,これから新しい職場においてクレーン作業を始められる方々は,各職場に応じた安全作業マニュアル等に従い作業を行うことが大切です.
また,「災害は忘れたときにやってくる」と言われていますが,定期的に安全衛生教育を受講されるなど安全に対する認識を継続される努力も望まれるところです.

(事務局 馬場井宏至)

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