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夏の健康チェック”汗のはなし”
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1. はじめに
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. susume03_08_01.jpg昨年の夏は暑かったですね.じっとしていても汗が流れてきました.今年も暑い夏が訪れるかもしれませんので,汗についてのお話をしましよう.
生きるために私たちの身体の中では,絶えず物質が合成されたり分解されたりしています.その時,エネルギーも産生されます.エネルギーの大部分は熱として体温を維持するのに役立てています(ホ乳類は恒温動物ですね).しかし,余った熱は体の外に逃がして,体温が上がりすぎないようにしなくてはなりません.そこで汗を利用しているのです.
汗をかくことを,“発汗”といいます.発汗は体温を下げるためにもつとも効率的な方法です.汗が蒸発する時の気化熱により,体内の熱を逃がして体温を下げています.
水の気化熱は1mlにつき約0.58kcalですから,水が100ml蒸発する場合58kcalの熱を奪うことになります.人体の比熱は約0.83とされていますので,体重70kgの人の熱容量は70×0.83=58.1kcalとなり,これは水が100ml蒸発するのとほぼ等しい熱量になります.汗を100mlかくと体温が1度上昇するのを防いでくれるわけです.夏の炎天下で10分歩くと約100mlの汗をかくそうですから,まったく汗をかかなかったら……20分で体温が2度も上昇してしまう計算になりますね.
2. 汗腺とは?
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susume03_08_02.jpg汗をつくる体のしくみを汗腺といい,皮膚にあります.汗腺には小汗腺(エクリン汗腺)と大汗腺(アポクリン汗腺)のふたつがあります.エクリン汗腺の根本は糸くずを丸めたような形をしています.そこから,汗を出す排泄管はまっすぐにあがってゆき,皮膚の表面の部分に出口の穴(汗孔)を開いています.ヒトのエクリン汗腺の総数は約300万個で,ほぼ全身の皮膚に分布しています.単位面積あたりでは手掌や足底に最も多く分布しています.年齢が進むとエクリン汗腺は萎縮して,発汗そのものが減少してゆきます.
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3. 汗の種類は?
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(1) 温熱性発汗
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体温が上昇すると脳の発汗中枢(視床下部)が指令を出して,水分の蒸発により体温を低下させます.1時間で最大2〜3リットル,一日最大で12リットルの汗をかくといわれています..
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(2) 精神性発汗
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いわゆる< 冷や汗> で,精神的緊張により脳の発汗中枢(大脳前頭葉)が指令を出して,手掌,足底,腋窩,額から発汗します.<手に汗を握る>状況は,夏でも冬でもおこります.

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(3) 味覚性発汗
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辛いものを食べたとき,鼻尖,額,口唇から発汗します.反射経路はまだくわしく解明されていません.

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4. 汗をかかなかったら?
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susume03_08_03.jpgいずれ体温が上がっていって,ついには熱中症(ねっちゅうしよう)になってしまいます.太陽光線の直接の照射によっておこった場合は,<日射病>と呼ばれます.症状は,血圧低下,頻脈,頭痛,めまい,吐き気などで,初期には発汗は認められます.体温が上昇して高体温状態が続くと,脳神経細胞の活動に支障が生じ,脱力,腹痛や筋肉のケイレンも生じます.体温の自動調節機能が破綻すると高体温でも発汗はおこらなくなり,皮膚は乾燥します.さらに体温が上昇すると,全身のケイレンや意識障害もおこってきます(熱射病).これは緊急事態なので,早急な医療機関への搬送が必要です.快適な仕事環境の目安としては,軽作業でも体温39.2度,心拍数120/分を参考にしてください.
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5. 運動すると汗をかくのはなぜ?
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運動すると筋肉が収縮し,筋肉を動かすために,よりたくさんの血液が筋肉に流れます.運動により筋肉の温度が上がると,その上にある皮膚の温度も上昇します.また,皮膚を栄養している動脈は,筋肉にまず分布し,筋肉を通過してから皮膚にたどりつく場合が多いのです.運動のために筋肉が血液を必要をすると,結果的に皮膚に届く血液も増えることになり,発汗により温度を下げようとするのです.気温が高いと,同じ運動量でも発汗量が増えます.
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6. 水分補給法は?
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susume03_08_04.jpg汗をなめると,しょっぱい味がしますね.それは塩分が含まれているからです.汗をたくさんかいて水分を失うと,体の中の塩分も不足してきます.水分だけを補給すると一時的に血液が薄まって,のどの乾きもおさまり安心してしまいがちです.しかし,血液が薄くなると,水分が過剰だと腎臓が勘違いして,せっかくとった水分を尿として出してしまいます.水分を取るだけでは足りないのです.
平均気温が29度の夏に,体重65kgの人が室内で活動すると,一日の汗の量は3リットルくらいになるそうです.もし高温環境の工場で8時間働くと,12リットルにも達するそうです.日焼けすると皮膚の温度も上がるので,夏の炎天下で作業は脱水の危険がいっぱいです.意識がもうろうとしてくると,助けを呼ぶこともできなくなり,さらに脱水が進み,生命が危険にさらされます.炎天下や高温環境で仕事をする場合,水分と塩分の両方を準備しましょう.
一般的に体重の2%以上の脱水がおこったら,水分と塩分の両方を積極的に補給する必要があります.体重60kgのひとなら1.2リットルにあたります.汗をたくさんかいた時,かきそうな時は,市販のスポーツ飲料やイオン飲料などを有効に活用してください.ちなみにポ○○は100mlあたり49mg,サ○○は44mgのナトリウムを含んでいます.同様にポ○○は100mlあたり27kcal,サ○○は24kcalのエネルギー量を含むので,ダイエット中の方は取りすぎに注意が必要です.(マラソン選手が試合中に飲むスペシャル・ドリンクはただの水ではありません.何が入っているかは秘密のようです.)
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7. 汗をかく,汗を掻く?
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汗をかいた皮膚が痒く感じることはありませんか.汗をかくの < かく > の語源は < 引っ掻く > に由来するという説があります.汗のpHは5.7〜6.5で99〜99.5%は水分ですが,他の成分としてナトリウム,塩素の他にカリウム,尿素,乳酸,カルシウム,マグネシウム,リン,鉄,アンモニア,クレアチニン,硫化物,アミノ酸などが含まれています.
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8. 足が臭いのは?
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susume03_08_05.jpg汗単独では,通常臭気は生じません.エクリン汗腺と皮脂腺からの分泌物を皮膚の常在菌が分解すると臭気物質が生じます.なかでも足臭は特異的な臭いがしますが,イソ吉草酸という物質が発生し,靴下や靴が蒸れて臭気を発生します.予防には皮膚を清潔に保つことと,風通しを良くして乾燥させることが基本です.そして制汗・消臭剤を上手に使いましょう.
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9. 制汗剤について
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日本では< 制汗,デオドラント製品> と呼ばれ,体臭の予防を目的とする医薬部外品に位置づけられています.アルミニウム・クロロハイドレートが主成分で,制汗よりも体臭の防止に主眼がおかれています.ちなみに制汗効果に限れば,スティック剤の方がパウダースプレー製剤より有効なようです.
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10. おわりに
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今回は夏場の健康チェックの一例として,汗のしくみとその対処法について説明しました.快適な夏を過ごす参考にしていただければ幸いです.

〔* 阿部病院:東京都品川区東五反田1-6-8TEL03-3447-4777(代)〕

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