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玉掛け作業者の再教育について(2)
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1. はじめに
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前月号では,玉掛け作業者,玉掛け作業責任者等の一般的な心得,及び玉掛け作業に関する留意点(作業者自身の心得として質量目測,つり具,玉掛け作業方法について,また玉掛け作業に関する,玉掛けから巻上げ,移動,巻下げ,着地)について手順に沿って掲載しましたが,今回は各種つり具の知識と使用時の心得,合図作業,クレーン運転及び共同作業者の心得について掲載致します.
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2. 各種つり具の知識と使用時の心得について
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  (1) ワイヤロープ
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susume03_10_01.jpgワイヤロープは多数の鋼線をより合わせて構成された柔軟かつ強靭なもので,他にも優れた特徴を持った利用範囲がきわめて広いものであるが,取扱いの良否はその寿命に大きな影響を及ぼすため,取扱には十分注意しなければならない.

(1) 原則として2本つり以上とし,つり角度は60度以内とすること.
(2) ワイヤロープの当たるつり荷の角にはあて物をすること.

(3)

衝撃荷重はワイヤロープの切断事故につながりやすいことを十分認識しておくこと.
(4) よく扱う荷や特殊な荷は専用の玉掛用具を用いてつるようにすること.
(5) 目通しやくくりつりをした場合,ワイヤロープの曲折した箇所は強度が約30%程度低下する.玉掛けワイヤロープを選択する場合は注意すること.
(6) 目通しする場合,できるだけ浅絞りになるよう工夫すること.
(7) キンク,切断,腐食,摩耗,変形したものは使用しないこと.
(8) くせのついたワイヤロープは,直した後に使用すること.
(9) あだ巻掛けつり,大回しを行ったつり荷からワイヤロープを外す場合,クレーンを使用して引き抜いたり,人力で無理に引き抜かないこと.
(10) 部材等を置く場合,適正な敷角(間棒,りん木,りん金等)を使用すること.
(11) ワイヤロープを高所から投げたり地面を引きずったり,粗暴に取り扱わないこと.
(12) 置場所を決め,使用後はきちんと整理しておくこと.

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(2) ハッカー

susume03_10_02.jpgハッカーは,鋼板,形鋼(大型H形鋼),平鋼,鉄鋼製品等のつり具として用いられている.一本又は二本の爪を備え,通常ワイヤロープと組合せにより,引掛けつりと絞りつりがあるが,つり荷の形状,寸法に適したハッカーを選択すること.

(1) 二本爪の場合,片爪で使用しないこと.(捩れたり,片さきとなる)
(2) 部材へのかかり代は爪の長さの1/2以上まで差し込んでつること.(浅いと爪が外れたり損傷する)

(3)

つり上げる際,つりハッカーの対面方向に位置しないこと.(ハッカーが外れてはね飛ぶことがある)
(4) 鋼板等をつる場合,つり荷が水平になるようにつること.なお,2点つりは行わないで原則として4点以上とすること.また,対面方向のつりハッカーは,それぞれ1本のワイヤロープで相互につり荷を押さえるよう絞りを効かすこと.
(5) 本体の平行部が開いたり,つぼむ方向に荷重をかけないこと.
(6) つり幅(長手方向の支点間)が広いと爪が内側に横滑りしてつり荷のバランスが崩れることがあり,つり幅が狭いと(特に長尺物)移動する際,動揺でつりハッカーの位置がずれて,つり荷が落下することがあるので十分注意すること.
(7) つり角度は60度以内,掛け幅角度は30度以内にすること.
(8) 曲がり板(わん曲状の鋼板)や,たわみのでる薄板をつらないこと.(ハッカーが外れて,つり荷が落下することがある)
(9) 摩耗,変形,亀裂,きずのあるものは使用しないこと.

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(3) つりクランプ
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susume03_10_03.jpgクランプは,鋼板,形鋼(大型H形鋼),平鋼,鉄鋼製品等のつり具として用いられ,その用途及び構造によって垂直につかむ「縦つり用」と水平面をつかむ「横つり用」に大別されている.いずれも荷を挟みつけ,その摩擦力で荷を支えるもので,カムにより受金に押し付ける構造が多く用いられている.カム式の場合,締めつけ力はつり荷の質量に比例するため,荷の着地や他との接触により一次的に無負荷になるとクランプが弛み荷が外れる恐れがある.外れ防止用の安全ロック機構を備えたものも用いられているが十分な注意が必要である.

(1) つり角度は一般に60度〜30度の範囲で使用すること.
(2) 長尺物を1点つりしないこと.2点以上つりとするか,つり天秤を使用すること.

(3)

つり荷の質量,形状及び作業内容に応じ,縦つり,横つり,形鋼つり等の専用のクランプを使用すること.
(4) 最大使用荷重の1/5以下のものをつらないこと.(軽いと十分クランプできない)
(5) 開口部寸法の1/4以下の厚さのものをつらないこと.(薄いと十分クランプできない)
(6) 縦つりクランプで鋼板を複数重ね合わせてつらないこと.(抜け落ちる)
(7) 積み重ねてある鋼板の山の中抜きをしないこと.(オーバーロードとなる)
(8) クランプのくわえ方向は,パッド側を下にしてつること.(パッド側を上にすると口が開くことがある)
(9) 部材は開口部の奥まで入れ,ロックを確実にしてからつること.
(10) つり荷のつかみ部に油・塗料・さび・スケール等のある場合は,よく取り除いてから使用すること.

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(4) つりビーム
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susume03_10_04.jpgつりビームで長尺物をつり上げる場合には,クランプ,ハッカー,フック付きワイヤロープ等をビームのつりピースの真下に取付けて使用する.

(1) つり荷側のハッカー,ワイヤロープ等がつりピースの真下にくるよう玉掛けすること.
(2) 部材の形状,質量に適した専用のつりビームを製作し,できるだけ兼用しないこと.

(3)

つりビームに使用するワイヤロープには荷重が均等にかかるように調整すること.
(4) つり点と負荷条件を定めて使用すること.
(5) 亀裂,摩耗,腐食,及び曲がりのあるものは使用しないこと.

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(5) シャックル
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susume03_10_05.jpg玉掛け用ワイヤロープに用いるシャックルは,本体の形状によりバウシャックルとストレートシャックルとがあり,シャックル本体とシャックルボルト又はピンとの組み合わせによって区分されている.また材料の引張強さによって,M,S,T及びVの等級がある.

(1) 使用荷重とつり荷の形状及び使用方法に適したシャックルを選ぶこと.
(2) ねじ込み式(SC,SD,BC,BD)シャックルを使用する場合,ピンを十分に締め付けておくこと.

(3)

シャックルをつりピースに取付ける場合,ピン側をつりピース側にすること.
(4) U部が広がる方向にかかる荷重が極力すくなくなるようにすること.
(5) シャックルを用いて目通しつりする場合,ピンはワイヤロープのアイ側に位置するように取付けること.
(6) BB,SB型のシャックルを使ってワイヤロープをつなぎ合わせ重量物を玉掛けする場合,ナットが部材に接触した状態のままつり上げると,ナットが緩んで落下したり,ピンが外れることがあるので,接触しないようにするか,ナットに割ピンを使用すること.
(7) 摩耗,変形,亀裂,傷のあるものは使用しないこと.

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3. 合図作業の心得について
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susume03_10_06.jpg合図の手段としては,手合図,手旗合図があるが,必要に応じ笛やトランシーバーを併用する.笛や声のみの合図は災害を起こし易いので行ってはならない.つり荷を安全に能率よく巻上げ,移動,巻下げを行うために大切なことは,合図者及びクレーン運転者がその合図に熟知して,ためらうことなく操作ができ,また急場に適した安全動作がとれるようになることである.クレーン等を用いて作業を行う時は,一定の合図を定め,合図を行うものを指名して,その者に合図を行わせなければならないことが法令で定められている.

(1) 合図は,運転者から見えやすい安全な場所で明確に行うこと.(動作は大きく,節度をつけて)
(2) 笛と旗の併用,無線機等を併用し状況に応じて確実な方法により行うこと.(原則として,慣れない作業は絶対にしない)

(3)

荷の重心を見定めクレーンのフックを誘導すること.(斜め引き,横引きをさせない)
(4) 荷を一気につり上げたり,着地させたりしないこと.(一旦停止し,安全を確かめるなど,地切り・着地の基本を守る)
(5) 共同作業者の位置の手元,足元の安全性を十分確かめること.
(6) つり荷を移動する場合,移動方向に他の作業者がいないことを確認すること.(人の頭上を通さない)
(7) 合図の内容の復唱を行うなど,合図の正確な伝達を確認する手段を講ずること.

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4. クレーン運転者の心得について
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運転者は合図者の合図に従い,正しく操作して,つり荷を所定の場所に運搬することであるが作業前には必ず安全装置等について点検を実施し,安全確認を行わなければならない.

(1) 合図が不明確な場合,操作を中止し,確認してから運転すること.
(2) 玉掛け方法に危険を感じたり,つり具が不適当だと感じたときは,その旨を玉掛け者に連絡し,安全を確かめて運転すること.

(3)

衝撃つりや急停止など乱暴な運転をしないこと.
(4) 雨天や風の強い時など天候不順な場合は,作業内容や作業場所及びつり荷の形状等総合的に安全性を判断し,特に慎重に運転すること.(必要に応じて上司の指示を受ける)

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5. 共同作業者の心得について
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susume03_10_07.jpg災害に結びつく要因として,連絡合図の不徹底,相互注意の不足,馴れ合い作業,指示の不明確等,「共同作業での呼吸が合わなかった」がよく挙げられるが,事前に各々の技能,技術を把握の上,作業に掛かることが大切である.

(1) 作業内容,作業方法について,事前にT.B.M,KY等を行い,意思を統一してから作業にかかること.
(2) 玉掛け作業責任者の指示に従い,互いに呼吸を合わせて作業を行う.自分勝手な判断で行動しないこと.

(3)

声を掛け合うなど互いに十分連絡をとること.

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6. おわりに
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9月号と10月号の2回にわたり『玉掛け作業者の再教育について』を掲載しましたが,玉掛け作業は共同作業であり,寸気を緩めると重大災害につながる危険性があることを十分認識し,定期的な安全教育を行っていくことが災害防止のために必要かつ大切なことであると考えます.(完)

(三井造船(株)千葉事業所 南堀正勝)

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