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無線操作式クレーンの安全運転心得
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1. はじめに
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 クレーンの運転には機上の運転室からコントローラにより操作するもの,床上でクレーンのトロリから下がっているペンダントスイッチの押ボタンにより操作するもののほかに,運転者が保持する操作装置により無線で遠隔操作するもの(以下「無線操作式クレーン」という.)がある.無線操作式クレーンは,運転者が玉掛け作業を兼務しながら,最も安全な場所で運転したり,作業環境に衛生上の問題があるような作業場では,環境のよい場所から運転できる等,作業の効率化,安全化,省力化に貢献している.

 近年,無線操作装置のデジタル化・小型化・軽量化が進み,ハンディタイプの安価な製品も各社から販売されるようになり,あらゆる産業分野で積極的に導入されるようになった反面,無線操作式クレーンの災害事故も増加している.

 平成14,15年の2年間の無線操作式クレーンの死亡災害事故は11件発生している.災害の発生原因のほとんどが,1人で安易に使えるようになったため,安全確認の不足や無資格での玉掛け作業の不具合によるつり荷の落下等である.


 今回の安全運転心得は「無線操作式クレーンの安全に関する指針」のJCA規格(案)(クレーン誌平成15年9月号に掲載)の内容を中心に,安全,運転,保守について基本的な遵守事項と,より安全を確保するための推奨事項を記す.

 

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2.無線操作式クレーンの運転のしくみ
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 無線操作式クレーンの運転の「情報の流れ」は次のようになる.

  1. 運転士が操作装置のスイッチを操作し「走行・横行・巻上」などの運転指令をクレーンに伝える.

  2. クレーンが運転指令に応じた動きをしているか,運転士が目視で確認する.

  3. 運転士はクレーンの動きに応じて次の運転指令をクレーンに伝える.
 これは運転士とクレーンの間で情報交換のループが必要であることを意味する.この情報交換の方法として運転士からクレーンへの伝達手段には無線電波を使用し,クレーンから運転士へは運転士の目視を使用する.したがって,無線操作式クレーンを運転するときは運転士がクレーンやつり荷の動きを目で確認して情報交換のループが切れないように運転することが重要である.間違っても脇見運転や荷の動きが確認できないような状況では絶対運転をしてはならない.

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3.管理
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(1) 無線操作式クレーンの運転資格

 無線操作式クレーンの運転には,機上運転のクレーンと同じ運転資格が必要である.

  1. つり上げ荷重が5トン以上のクレーン
    クレーン運転士免許を受けた者.

  2. つり上げ荷重が5トン未満のクレーン
    クレーン運転士免許を受けた者,床上操作式クレーン運転技能講習を修了した者,またはクレーンの運転の業務に係る特別の教育を修了した者.

  3. つり上げ荷重が5トン以上の移動式クレーン
    移動式クレーン運転士免許を受けた者.

  4. 1トン以上5トン未満の移動式クレーン
    移動式クレーン運転士免許を受けた者または小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者.

  5. 1トン未満の移動式クレーン
    移動式クレーン運転士免許を受けた者,小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者,または移動式クレーンの運転の業務に係る特別の教育を修了した者.

(2) 玉掛け業務の資格

 無線操作式クレーンではクレーンの運転のほかに玉掛け作業を併せて行うことが多く,この作業を行うには次の資格が必要である.

  1. つり上げ荷重が1トン以上のクレーンの玉掛け業務
    玉掛け技能講習を修了した者.

  2. つり上げ荷重が1トン未満のクレーンの玉掛け業務
    玉掛け業務に係る特別の教育を修了した者.

必要な資格 つり上げ荷重 資格 免許・講習等
運転 クレーン 5t 以上 ク免
ク免: クレーン運転士免許
ク講: 床上操作式クレーン運転技能講習
ク特: クレーンの運転の業務に係る特別の教育
5t 未満 ク免・ク講・ク特
移動式クレーン 5t 以上 移免
移免: 移動式クレーン運転士免許
移講: 小型移動式クレーン運転技能講習
移特: 移動式クレーンの運転の業務に係る特別の教育
1t 以上
〜5t 未
移免・移講
1t 未満 移免・移講・移特
玉掛け 1t 以上 玉講
玉講: 玉掛け技能講習
玉特: 玉掛けの業務に係る特別の教育
1t 未満 玉講・玉特

 

(3) 無線に関する資格

 無線操作式クレーンに使われている無線装置は,電波法第4条の免許を要しない無線局の微弱無線局または特定小電力無線局の電波を使用している.これら無線局の使用には性能証明や技術基準適合証明が必要であるが,無線装置の製造メーカが取得しているため,無線操作式クレーンの運転者は無線に関する資格は一切必要としない.ただし,無線装置を改造して使用すると法律により罰せられるので,絶対に改造してはいけない.

(4) 無線周波数の管理

  1. 事業場別に無線周波数を管理し,同一周波数使用による混信を防止する.また,周辺地域の無線周波数の使用状態にも配慮する.

  2. 外部から同一周波数使用の無線機器が持ち込まれないように管理する.

(5) 取扱い責任者の選任と任務

 無線操作式クレーンの運転の業務について必要な資格を有する者の中から,無線操作式クレーンごとに取扱い責任者を選任し,その者の氏名等を見やすい箇所に表示するとともに,その者に次の事項を行わせる.

  1. 機器の管理及び操作装置の電源スイッチがキースイッチの場合は,キーの保管,管理をすること.

  2. 予備の操作装置を備えている場合は,電池を抜き取り,電源スイッチを「オフ」にしておくこと.電源スイッチがキースイッチの場合は,キーを抜き取っておくこと.

  3. 非常用予備電池がある場合は,良好な充電状態を保つこと.

  4. チェックリスト等により作業開始前点検の実施を確認すること.

  5. 異常等の報告を受けた場合は,直ちに,使用禁止,補修その他の必要な措置を講じること.

 

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4.運転
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(1) 作業開始前の措置

  1. 無線操作式クレーンが複数台ある場合は,操作装置とクレーンの対応が正しいかを確認すること.

  2. 操作者の腰に固定する操作装置を使用する場合は,誤操作を防止するため,腰および肩ベルトは確実に着用すること.

  3. 操作装置の各スイッチに損傷が無いこと.

  4. 電池が充電されていること.

  5. 停止機能が確実に作動すること.

  6. 各スイッチの動作表示,作動方向表示が明確であること.

  7. 各スイッチの動きが円滑で,相反する動作のスイッチ間のインターロック動作に異常が無いこと.

  8. クレーンが各スイッチの表示どおり作動し,動作タイミングに異常が無いこと.

  9. 点検又は補修中でないことを確認すること.

(2) 運転時の留意事項

  1. クレーン操作を行わないときは,操作装置の電源は「オフ」にしておくこと.電源スイッチがキースイッチの場合は,キーを抜き取っておくこと.

  2. つり荷がよく見える位置で運転し,周囲の安全を確認すること.

  3. 運転するときは,足元の安全を確保すると共に安全な通路を通行すること.

  4. 操作装置の表示とクレーンの作動方向の表示とを常に確認して運転すること.

  5. 安全通路,車両通路を横断するときは,徐行すると共に警報を鳴らす等により周囲に注意をうながすこと.

  6. 走行・横行ストッパに当てて止めるような運転をしないこと.

  7. 一人の運転者が2台以上の操作装置を同時に操作しないこと.

  8. 操作は,3動作以上を同時に行わないこと.

  9. クレーンの作動中は直接つり荷及び玉掛け用具に触れないこと.

  10. クレーン等安全規則第29条で禁止された場合以外であっても,原則としてつり荷の下及び荷の転倒の恐れのある範囲には立ち入らないこと.また,作業者を立ち入らせないこと.

  11. つり荷の反転作業を行なう場合,運転者や玉掛け作業者等のいる方向には反転しないこと.

  12. リフチングマグネット又は真空吸着機を用いて作業を行う場合,つり荷の高さはできる限り低くして運搬すること.

  13. 運転者は,荷をつったままで身体から操作装置を離してはならない.また,操作装置の制御範囲から外れてもいけない.

(3) 作業終了時の措置

  1. クレーンは,定められた位置に停止させること.

  2. 玉掛用具は取り外し,フック等のつり具は2m以上の高さに巻上げておくこと.

  3. 操作装置の電源は「オフ」にしておく.電源スイッチがキースイッチの場合は,キーを抜き取り,取扱い責任者に返却すること.

  4. 操作装置の電池は必要に応じて充電や電池交換を行うこと.

  5. 操作装置は塵埃,油などをきれいに清掃し,所定の場所に保管すること.

  6. 運転中に気がかりになったことがあれば,取扱い責任者に報告すること.

(4) 異常時の措置

  1. 運転中に停電したときは,操作装置の電源及びクレーン側の主電源を切り,周囲の安全を確保し,通電を待つこと.

  2. 運転中に無線装置の異常またはクレーンの異常を認めたときは,直ちに作業を停止し,操作装置の電源及びクレーン側の主電源を切り,取扱い責任者に報告し,指示を受けること.

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5.保守
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(1) 定期自主検査

 定期自主検査は,「天井クレーン定期自主検査指針」及び「ホイスト式クレーンの定期自主検査実施要領」により行うこと.なお,これ等に含まれないものについては,指針に準じ,又は製造者のメンテナンスマニュアル等によること.

(2) 検査及び補修時の留意事項

  1. 検査及び補修等を行うときは,それぞれ「検査責任者」,「補修責任者」を選任し,関係者と手順及び内容等について十分な打合せを実施させること.
  1. 検査及び補修等を行うときは,原則として電源開閉器をしゃ断し,当該開閉器に検査中である旨の表示をする等の措置を講じること.また,電源開閉器が地上にある場合には施錠等の措置を講じることが望ましい.

  2. 操作装置を用いて検査及び補修等を行うときは,検査及び補修等に従事する者以外の者により操作されないように,検査及び補修等に従事する者が携帯するか,又は手元に置いて行うこと.

  3. 検査及び補修等を行うときは,その旨をクレーンガーダ等に表示し,周知させること.また,必要に応じ,監視人をおく等により,クレーン下への立入禁止措置を講じること.

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6. おわりに
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 クレーンの無線操作は手軽で便利な反面,ちょっとした不注意が災害につながる可能性が高い機器です.
 クレーン等による災害撲滅のために,今回掲載した「安全運転心得」が読者の皆様のお役に立てれば幸いです.

(金陵電機(株) 北村良之)

 

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