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積載形トラッククレーンの安全運転・作業について(1)
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1.積載形トラッククレーンによる災害状況
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 平成14年に発生したクレーン等による死亡災害は114人で,そのうち移動式クレーンの死亡者は65人であり,積載形トラッククレーンにおいては24人となっています.

 これは積載形トラッククレーンの稼動台数が他の移動式クレーンに比較して圧倒的に多いことにもよりますが,積載形トラッククレーン以外の移動式クレーンの死亡災害の発生が年ごとに減少傾向にあるのに対して,積載形トラッククレーンの死亡災害が依然として減少していないためです.(表1参照)

 積載形トラッククレーンによる重大な災害は,他の移動式クレーンに比べて機体・構造部分が折損・倒壊・転倒したものが目立って多く,62.5%に達しています.(表2参照)

 つり上げ荷重3トン以上の移動式クレーンには過負荷防止装置が義務付けられていますが,移動式の中でも最も数の多い積載形トラッククレーンのほとんどがつり上げ荷重3トン未満でこの規制の対象外です.

 したがって,十分に注意を払って作業しなければ死亡災害を防ぐこと,減らすことができないのです.

積載形トラッククレーンの死亡災害は依然として後を絶たない

表1 移動式クレーン及び積載形トラッククレーンの死亡災害発生件数の推移と比率


平成10年 11年 12年 13年 14年
@移動式クレーン 82 68 63 66 65
A積載形トラッククレーン 29 23 33 19 24
A/@ 35.4% 33.8% 52.4% 28.8% 36.9%

表2 平成14年における移動式クレーン機種別現象別災害発生状況


トラック
クレーン
積載形
トラック
クレーンA
ホイール
クレーン
クローラ
クレーン
浮き
クレーン
その他 合計
@
割合
A/@
落下 3 7 7 5 0 0 22 31.8%
つり荷,つり具が
激突したもの
0 2 4 1 0 0 7 28.6%
挟圧 3 7 0 8 0 1 19 36.8%
墜落 1 2 3 0 0 1 7 28.6%
機体,構造部分が
折損・倒壊・転倒
したもの
1 5 1 1 0 0 8 62.5%
感電 0 1 0 0 0 0 1 100%
その他 0 0 0 1 0 0 1 0%
合計 8 24 15 16 0 2 65 36.9%

災害発生事例(落下災害)

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2.積載形トラッククレーンとは
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 積載形トラッククレーンは,車両搭載形クレーンとか,クレーン付トラックなどと呼ばれ,道路運送車両としては,トラックに属するものですが,クレーンの分類では移動式クレーンの中のトラッククレーンに含まれます.

 構造は,クレーンのユニットがトラックの運転室と荷台との間に架装されるものがほとんどであり,荷台に貨物を積載することができ,クレーン作業と運搬の両方の機能を持っています.

つり上げ荷重が3トン未満のものがほとんどであり,「吊る,積む,運ぶ,作業する」といった一連の作業を一台で行うことができるため,さまざまな業種で幅広い用途に便利に使用されています.

積載形トラッククレーン

さまざまな業種で幅広い用途に便利に使用されている

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3.積載形トラッククレーンの運転及び玉掛け作業の資格
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(1) 運転資格

 積載形トラッククレーンの運転は,そのつり上げ荷重に応じた資格を有する者でなければ就業できません.(道路交通法第2条第1項第1号の道路上を走行させる運転を除く)道路(道路交通法第2条第1項第1号に規定する)上の走行運転については,当該自動車の運転免許所有者であることが必要です.

表3 移動式クレーンの運転の資格


免  許 技能講習 特別教育
つり上げ荷重が5トン以上の移動式クレーンの運転の業務

つり上げ荷重が1トン以上5トン未満の移動式クレーンの運転の業務
つり上げ荷重が1トン未満の移動式クレーンの運転の業務

免  許: 移動式クレーン運転士免許を受けた者
技能講習: 小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者
特別教育: 移動式クレーンの運転の業務に係る特別の教育を修了した者

 

(2) 玉掛け作業の資格

 積載形トラッククレーンでは,クレーンの運転のほかに玉掛け作業も併せて行うことが多く,したがって,玉掛け作業を行うには,次の資格を有する者でなければなりません.

表4 玉掛け作業の資格


技能講習 特別教育
つり上げ荷重が1トン以上の移動式クレーンの運転の業務
つり上げ荷重が1トン未満の移動式クレーンの運転の業務

技能講習:玉掛け技能講習を修了した者
特別教育:玉掛け業務に係る特別の教育を修了した者
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4.主な用語の説明
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(1) つり上げ荷重

 つり上げ荷重は,アウトリガーを最大に張り出してジブ長さを最も短く縮小し,ジブの傾斜角を最大にしたときに負荷させることができる最大の荷重です.(定格総荷重の最大値)つり上げ荷重にはフック,グラブバケット等のつり具の質量が含まれています.

(2) 定格荷重

 定格荷重は,定格総荷重から,フック,グラブバケット等のつり具の質量を差し引いた荷重です.すなわち,実際にフックにかけたりグラブバケット等でつかんだりすることができる最大の荷重です.

(3) 定格総荷重

 定格総荷重は,移動式クレーンの構造及び材料並びにジブの長さ,ジブの傾斜角の変化(最大から最小)に応じて負荷させることができる最大の荷重です.この場合,フック,グラブバケット等のつり具が含まれています.

(4) 空車時定格総荷重

 空車時定格総荷重は,積載形トラッククレーンのみに使用される用語でトラックの荷台に積み荷がない状態(空車時)における安定度に基づいて決められています.

 また,アウトリガーは最も安定度の高い最大張り出し幅で,ジブ方向が後方,側方つりの状態での性能を表しています.この場合,フック,グラブバケット等のつり具が含まれています.

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5.積載形トラッククレーンの安全装置等
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積載形トラッククレーンの安全装置等は,移動式クレーン構造規格によって装備と機能の保持が義務付けられています.

[主な安全装置] (構造規格)
@ 巻過防止装置 第24条
A 過負荷防止装置及び過負荷防止装置
   以外の過負荷を防止するための装置
   (つり上げ荷重が3トン未満)
第27条
B 安全弁等 第28条
C 警報装置 第30条
D 傾斜角指示装置 第31条
E 外れ止め装置 第32条

 

(1) 巻過警報装置,巻過防止装置

 巻上げ用ワイヤロープは,巻過ぎるとフックの上面がジブなどに激突してジブを破損させたり,ワイヤロープが切断してつり荷が落下したりするおそれがあります.これを防ぐために,フックが上限の高さまで巻上がると,巻上げ用ワイヤロープに沿って下げられているおもりを押し上げてスイッチが切れて回路を遮断し,警報を発する装置を巻過警報装置といい,自動停止する装置を巻過防止装置といいます.

(2) 過負荷防止装置

 移動式クレーン構造規格では,つり上げ荷重が3トン以上の移動式クレーンは過負荷防止装置の取り付けが義務付けられています.

 過負荷防止装置は,ジブの長さ,ジブの傾斜角及びつり荷の質量を計測し総合モーメントを演算し,コンピューターに記憶させてある定格値と比較します.定格総荷重に近づくと警報を発して運転を行う者に注意を喚起するか,又は定格荷重を超えると自動的にクレーンの作動を停止させます.

(3) 荷重計

 つり上げ荷重が3トン未満の移動式クレーンは,過負荷防止装置に代わるものとして,つり上げる荷重を検出する荷重計が取り付けられています.

 荷重計は,巻上装置用油圧モーターの作動圧力を荷重に変換したものです.したがって,巻上装置の巻上げ時のみつり荷の質量を示し,停止時や巻下げ時,また他の操作時にはつり荷の質量を示さないのでメーカーの取扱い説明を十分理解して使用する必要があります.

(4) 安全弁等

 安全弁は,油圧回路の異常な圧力上昇を防止し,油圧機器を保護するための装置です.

(5) 警報装置

 警報装置は,移動式クレーン作動時に周囲に警報を発して,はさまれる等の災害を防止するための装置です.

(6) ジブ傾斜角度計(荷重指示計)

 ジブ傾斜角度計は,ジブの傾斜角,ジブの長さによる空車時定格総荷重の関係を表示する装置でジブ側面に取り付けられています.

 ジブを起伏させたときに,各ジブの長さによって空車時定格総荷重を指針が示すので,これを読み取って荷重計が示した荷重と比較し,荷重指示計の空車時定格総荷重を超えないよう注意して操作する必要があります.

(7) 外れ止め装置

 外れ止め装置は,荷をつり上げる場合のフックから玉掛け用ワイヤロープ等が外れるのを防止するための装置です.

(次号へ)

((株)タダノ 秋田真壮)

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