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職場のメンタルヘルス対策を進めよう
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はじめに
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働きすぎていませんか
働き方を見直して 心とからだの健康づくり

 近年,過重労働による健康障害や,メンタルヘルス不全などの健康問題が重要な課題となっています.
 また,長時間労働が心の健康に影響を及ぼすことが指摘されています.冒頭の今年の全国労働衛生週間(10月1日〜7日)のスローガンは,労働時間が長時間になることがないよ
う働き方を見直し,心とからだの健康づくりを呼びかけるものです.過重労働による健康障害防止対策やメンタルヘルス対策などに積極的に取り組みましょう.
今回は,職場のメンタルヘルス対策について取り上げます.

 


1.ストレスとストレス反応
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 われわれを取り巻く日常生活の中には様々なストレス要因があります.光や音などの物理的要因,化学物質などの化学的要因,細菌やウィルスなどの生物学的要因などです.そして,職場,家庭,地域などで起こる様々なできごとや,人との関わりなどの社会的要因もストレス要因となります.このうち,不安,焦燥,怒り,抑うつといった心の変化を起こすものは「心理社会的要因」と呼ばれることもあります.

 ストレス要因である刺激を受けると,心理面,身体面,行動面に様々な反応が生じます.心理面では,不安,イライラ,怒り,抑うつなどがあります.身体面では,だるい,肩がこるなどの症状や,胃・十二指腸潰瘍やその他心身症が知られています.このような反応が起こっていても,自分自身ではなかなか気づかない場合があります.

 ストレスは悪者のように思われがちですが,問題なのは過剰なストレス状態に気づかず,対策を立てずに放置することです.適度なストレスは活力の源として必要です.過剰なストレス状態に陥らないために,職場や家庭で様々な対策を行うことが大切です.

   

 


2. 労働者のメンタルヘルスに関する現状
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 仕事や職場生活に関する強い不安,悩み,ストレスを感じる労働者の割合は6割を超えています.
 業務によるストレスなどにより精神障害を発症する事案は年々増加し,平成16年度には自殺を含め130件が精神障害等として労災認定されています.
また,自殺者総数は平成10年以降毎年3万人を超えており,そのうち,労働者の自殺者数が8千〜9千人前後で推移しています.このように,労働者の心身の負担が増加しています.

 


3. 職場におけるメンタルヘルス対策の意義
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 平成12年に「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針(メンタルヘルス指針)」(注1)が労労働者働省(当時)から公表され,職場におけるメンタルヘルス対策の取組が推奨されています.職場においてメンタルヘルス対策に取り組む目的は何でしょうか.また,どのような意義があるのでしょうか.平成12年6月の「労働者のメンタルへルス対策に関する検討会報告書」では,次のような3つの意義が示されています.

(1)労働者の健康の保持増進活動
 職場のストレスは,心の健康だけでなく,高血圧,心臓病,腰痛など身体の健康にも大きな影響を与えます.職場のメンタルヘルス対策は,労働者の健康の保持増進のために重要な活動です.労働者のストレスを減らし心身の健康を保持することは事業者の重要な責務です.

(2)職場の生産性及び活力の向上
 職場の人間関係が悪いと仕事がスムーズに進みません.うつ病で休業したり離職する労働者が多いと仕事に大きな支障がでてきます.明るく生産的で活力のある職場をつくり,労働者の充実感,創造的な活動や労働の質の向上には心の健康が不可欠です.

(3)リスクマネジメント
 仕事による心理的ストレスを原因として精神障害を発病あるいは自殺したとして労働災害請求が行われる案件が増加しています.
また,労働者の健康や安全に対する配慮が欠けていた場合におきた労働者の自殺では,事業者が安全配慮義務違反で遺族から民事訴訟され,高額の損害賠償を請求される例もめずらしくありません.ストレスのためぼんやりしていると,職場で事故を起こしてしまうおそれが高まります.職場のメンタルヘルス対策は,こうした問題を未然に防止し,企業としてのリスクをマネジメントすることにもつながります.

 

 

4. メンタルヘルス指針のポイント
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 メンタルヘルス指針には,事業場におけるメンタルヘルス対策の基本的な考え方や具体的な進め方が示されています.指針のポイントは次のとおりです.

(1)基本的考え方
 メンタルヘルス対策を推進するにあたって次の点を基本的考え方とすることが重要です.

ア  ストレス要因は,仕事,職業生活,家庭,地域等に存在しているので,労働者自身が,ストレスに気づき,これに対処すること(セルフケア)の必要性を認識する.
イ  職場には労働者自身の力だけでは取り除くことができないストレス要因が存在しているので,労働者の取組に加えて,事業者の行うメンタルヘルスケアを積極的に推進する.
ウ  心の健康に影響を与える職場の要因の具体的問題点を把握し,これを改善する.
エ  労働者,管理監督者,事業場内産業保健スタッフ等に対し,心の健康に関する正しい知識を付与する.
オ  職場内に相談しやすい雰囲気をつくったり,相談に応じる体制を整える.

(2)心の健康づくり計画の策定と4つのケア
 メンタルヘルス対策は,中長期的視点に立って,継続的かつ計画的に行われるようにすることが重要です.このため,事業者は,衛生委員会等において調査審議し,心の健康づくりに関する職場の現状とその問題点を明確にして,問題点を解決する具体的な心の健康づくり計画を策定します.そして,セルフケア,ラインによるケア,事業場内産業保健スタッフ等によるケア,事業場外資源によるケアの4つのケアを継続的かつ計画的に実施して推進します.

 


5. 職場のストレス対策の進め方
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 メンタルヘルス対策では,まず,職場のストレスについての現状を把握する必要があります.見つかったいくつかのストレス問題の中から,対策を立てることが可能なところから改善に着手します.

(1)職場におけるストレスの把握・評価
 ストレスの把握・評価方法には,労働者ひとりひとりの評価を行う方法(個人のストレス評価)と,事業場や部署,プロジェクトなど,集団を単位としてストレスを評価する方法(集団のストレス評価)があります.

ア 個人のストレスの把握・評価
 個人のストレス把握・評価は,労働者個人が感じている,仕事の負担,仕事における裁量の自由度(コントロール)などのストレス要因や,抑うつ,活気のなさなどのストレス状態(反応)を調べて評価を行います.これにより,労働者自身が自分のストレスの状態を知って対処したり(セルフチェック),問題となるストレス状態にないかを早期に発見していくことなどが可能になります.
○職業性ストレス簡易調査票(注2)の活用
 個人のストレスを調べ評価する際には,「職業性ストレス簡易調査票」を用いると便利です.この調査票は,自己記入式で57項目から成っています.仕事のストレス要因,ストレス反応,修飾要因の大きく3つから構成されています.あらゆる業種の職場で使用可能で,項目数が少ないため回答に時間がかからず,労働者の負担が少なく,簡便に使用できます.是非活用してください.

職業性ストレス簡易調査票

1 非常にたくさんのしごとをしなければならない
2 時間内に仕事が処理しきれない
3 一生懸命働かなければならない
4 かなり注意を集中する必要がある
5 高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ
6 勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない
7 からだを大変よく使う仕事だ
8 自分のペースで仕事ができる
9 自分で仕事の順番・やりかたを決める事ができる
10 職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる
11 自分の技能や知識を仕事で使うことが少ない


イ 集団のストレスの把握・評価
 集団のストレスの把握・評価は,事業場や,部署などの単位ごとに,所属する労働者の感じているストレス要因や,抑うつ等のストレス状態(反応)について,集団全体の傾向を調べて評価します.これにより,集団としてのストレス度が把握でき,問題が明らかで対策が必要とされている集団を早期に発見したり,有効な対策を行っていくための情報を得ることができます.

○仕事のストレス判定図(注3)の活用

 集団のストレスの把握・評価を行うには,「仕事のストレス判定図」を用いると便利です.この判定図は,職場のストレスを数値化して評価する便利なツールです.仕事の量的負担,仕事のコントロール(裁量権,自由度など),上司の支援,同僚の支援の4つのストレス要因により職場のストレスを評価します.
ストレスやメンタルヘルスに関する特別な専門知識がなくても,誰でも簡単に使用できます.12問の質問を職場ごとに実施し,判定図に当てはめるだけで,その職場のストレス要因の特徴と健康への影響の大きさの判定ができます.

(2)ストレス軽減対策
 ストレス軽減には,把握したストレスに適切に対処し,予防していくことが重要です.職場でのストレスの予防方法には,次の2つの方法があげられます.ひとつは,労働者自らが行うもので,自らのストレスに気づき,ストレスを予防できるようになることを目的にして行います.もう一つは,より働きやすい職場づくりを目指して職場環境等の改善や管理監督者による職場のサポート体制を強化するものです.職場環境等の改善にあたっては,作業方法や職場の物理化学的な環境に限らず,広く人間関係や職場組織も含めた心理的ストレス要因も対象にして改善策を検討していく必要があります.

ア ストレスへの気づきと対処

 ストレスの軽減のために何より大切なのは,労働者自身が,自らのストレスの原因やストレスの状態に気づくことです.そのためには,職業性ストレス簡易調査票などのツールを活用してセルフチェックを行うことも有効です.
自らのストレスに気づいたら,早めにストレス状態を軽減し,予防することが大切です.ストレス軽減方法には,@快適な睡眠の確保,Aリラクセーション技法(呼吸法,緊張を和らげる方法,自律訓練法など)の実践,B運動の実践などがあります.適度にからだを動かして,緊張したからだをときほぐすことなどで,ストレスを早めに軽減することができます.
また,ストレスの原因に対して何らかのアクションをおこしたり,原因から離れてみたり,また,ストレスの原因に対する見方を変えてみるなど,ストレスと上手に付き合うことも有効です.


イ 管理監督者による部下への支援


 管理監督者はメンタルヘルス対策の重要なキーパーソンです.部下にとって,上司が相談にのり,問題解決のための適切なアドバイスを与えたり,精神的にサポートしてくれると大変心強く,上司への信頼感は増し,部下のストレス耐性も強くなると考えられます.上司や同僚の支援がある労働者は,ストレス反応が少ないことはよく知られています.心の不健康状態にある部下の発見と相談対応,あるいは,復職した部下の支援,また,これらの対応のために部署内の業務量や作業負担の 調整を行うのは管理監督者の役割です.


ウ 職場環境等の改善を通じたストレスの軽減
 部下の作業量,責任などに大きな偏りがあると公平性が失われ,不満や疲労の蓄積のもとになり,全体の士気や生産性にも影響します.このような場合は,部下の業務量・残業時間などを把握し,適正なものにするため,業務の調整などが必要となります.
職場環境の改善は,業務分担,勤務時間,業務組織,人間工学対策,物理的環境,社会心理要因など多岐にわたって対策を講じることが重要です.ストレス対策というと,職場の人間関係上の特性や個人のストレス対処方法などに注目が集まりますが,それだけでは個人対策や事後処理に終わって,予防対策が必ずしも進展しません.個人向けの対策の効果が一時的限定的であるのに比べ,職場環境等の改善を通じた改善方法はより効果的です.

○メンタルヘルスアクションチェックリスト(注4)の活用

 ストレス軽減をめざした職場環境改善の具体的方法として,「メンタルヘルスアクションチェックリスト(職場環境改善のためのヒント集)」を用いた方法があります.このチェックリストは,ストレス対策や働きやすい職場づくりに役立った実際の改善事例を調査し,その取組事項を集約・整理してリスト化したものです.このリストを使用して,職場の管理監督者と労働者がグループ討議を行い,職場環境改善を実施します.現場ですぐに,低コストで改善できる優先対策を実施できます.是非活用してみてください.

 


6. 労働者の健康情報の管理
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 「個人情報の保護に関する法律」が平成17年4月に全面施行され,関連する指針等が公表されています.メンタルへルスに関する情報は,健康情報のなかでも特にプライバシーの保護が求められる情報です.取扱いに十分な配慮が必要です.注意すべきポイントはつぎのとおりです.

(1) 利用目的を明確にし,それ以外の目的には使わない.目的外使用については本人の同意を得る.
(2) 情報の収集は本人から行う.第三者からの情報については本人の同意を得た者からの情報であることが必要.
(3) 第三者への情報提供には本人の同意を得る.

 


7. 職場復帰支援の手引き
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 心の健康問題により休業した労働者の円滑な職場復帰は大きな課題になっています.昨年,厚生労働省から「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(注5)が公表されました.事業者は,この手引きを参考にしながら,組織的,計画的に取り組むことが重要です.

 


8. 国の支援事業等(注6)の活用
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 メンタルヘルス指針の普及・定着のため,中央労働災害防止協会では,厚生労働省からの委託を受けて,次の事業を実施しています.積極的に参加・活用しましょう.



(1)メンタルヘルス対策支援事業

メンタルヘルス対策に取り組みたいが,具体的にどのように取り組めばよいかわからない,あるいは,事業場内に実施できる者がいないといった場合に,国が無料で事業場のメンタルヘルス対策を支援する「メンタルヘルス対策支援事業」を実施しています.この事業では,メンタルヘルス専門家の支援を無料で受けることができます.

(2) メンタルヘルスに関する研修等

 メンタルヘルス指針に関する研修会や,自殺予防に関するセミナーを実施しています.また,職場のメンタルヘルス対策の最新テーマに関するシンポジウムを実施しています.

 


9. 情報等の入手先
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ここで紹介した指針,調査票,関連情報等はそれぞれ次のところから入手できます.

(注1) 事業場における労働者の心の健康づくりのための指針(メンタルヘルス指針)
安全衛生情報センターホームページ
http://www.jaish.gr.jp/
又は厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/

(注2) 職業性ストレス簡易調査票
東京医科大学衛生学公衆衛生学教室ホームページ
http://www.tokyo-med.ac.jp/ph/ts/

(注3) 仕事のストレス判定図及び
(注4) メンタルヘルスアクションチェックリスト
岡山大学のホームページ
http://eisei.med.okayama-u.ac.jp/jstress/

(注5) 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/10/h1014-1.html

(注6) 国の支援事業について
詳しくは,中央労働災害防止協会健康確保推進部メンタルヘルス推進センター(tel 03-3452-3473)まで.
中央労働災害防止協会ホームページ
http://www.jisha.or.jp/health/

【各種ツールの出典】

「職業性ストレス調査票」及び「職場のストレス判定図」
厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課「労働省平成11年度作業関連疾患の予防に関する研究『労働の場におけるストレス及びその健康影響に関する研究報告書』成果物,2000
「メンタルヘルスアクションチェックリスト」
厚生労働科学研究費補助金労働安全衛生総合研究事業「職場環境等の改善等によるメンタルヘルス対策に関する研究」平成15年度総括・分担研究報告書,2004 年3月

【参考文献】
1 管理監督者・産業保健スタッフ等のためのメンタルヘルス指針基礎研修テキスト,2005年度版,中央労働災害防止協会
2 平成16年度職場におけるメンタルヘルス対策支援委員会報告書―職場におけるストレス対処マニュアル作成事業関係―,平成17年3月,中央労働災害防止協会

 


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