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電線の近くのクレーン作業では特にこの点に気を付けましょう
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1.はじめに
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  皆さんが使われている電気は,電力会社の送電線や配電線を使ってそれぞれの工場や家庭まで届けられています.送電線や配電線の近くでクレーン作業を行う場合には通常の作業以上に気を付けていただきたいことがあります.それは,それらの電線に接触または近づきすぎることから発生する感電災害の防止です.人身災害にまで至らない場合であっても,クレーンの接触等で故障が発生すると停電により,多くのお客さまにご迷惑をお掛けしてしまいます.感電災害の防止については,日本クレーン協会のパンフレット「感電災害を防ぐために」でもポイントが解説されており,さらに私ども電力会社からも繰り返しお願いしていることもあり,会員の皆様も十分に承知されていることと思います.
 しかし,残念ながらこの災害を撲滅することはできていません.毎年同様な災害が発生しています. 今回本欄を執筆する機会をいただきましたので,この機会を活かして感電災害の発生状況等を示すとともに,災害防止について会員の皆様にあらためてお願いしたいと思います.

 


2.災害発生状況
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(1)災害発生件数の推移
 平成元年からの当社管内で発生したクレーン等にともなう災害件数は,図1のとおりです.平均3回/年程度発生しており,災害防止の努力にもかかわらず繰り返し同種の災害が発生していると言えます.


図1 災害発生件数の推移

 

(2) 災害事例
次に,至近に発生した具体的な事例を紹介します.

事例1
@  災害発生状況
 図2に示すように,77kV 送電線の線下で3t 積載形トラッククレーンによりヒューム管をトラック荷台からつり上げて設置場所へ移動していた.誤ってクレーンのブームを電線に接触させたため,つり荷の介添えをしていた作業員が感電死亡した.
なお,電力会社が巡視した際には作業のけはいはなく,電力会社に作業の実施に関する連絡もなかった.
A  感電についての基礎知識
 感電の危険の程度は,人体に流れる電流の量,時間および人体のどこを流れるかなどの要素により変わってきます.
例えば電流の量から言うと,比較的わずかな電流(数mA から10mA 程度)であっても筋
肉がけいれんして自分の力で感電している場所から手などを離すことができなくなってしまいます.また,心臓に多量の電流(数10mA 程度)が流れることはさらに危険であり,心室細動により死に至る可能性があります.もちろん家庭で使用している低圧の電気であっても感電死亡の可能性はありますが,送電線や配電線は電圧も高いことから,感電した場合には大変危険であると言えます.
一方,感電による危険には火傷もあります. 例えば,電流が人体の内部組織を流れると,電流による熱により組織が壊死してしまいます. 感電直後から時間の経過とともに症状が進行する場合が多く,壊死した部分の切断を繰り返して死に至るなど大変悲惨な事例もあります.


図2 災害発生状況(事例1)                         図3 災害発生状況(事例2)

 

事例2
@  災害発生状況
 図3に示すように,77kV 送電線の線下で5t クレーンにより,油タンクをトラックに積み込もうとしていた.クレーンのワイヤロープが電線に接近しすぎため,送電線とワイヤロープの間で放電し,当該送電線から供給を受けているお客さまへの送電が停止した.なお,電力会社に作業の実施に関する連絡もなかった.
A  放電についての基礎知識
 事例2では,クレーンのワイヤロープが直接送電線に接触していない状態で災害が発生しています.通常空気は絶縁物ですが,高い電圧がかかると絶縁が保てなくなり放電します.球電極を用いた実験室レベルの値では1cm あたり30kV 程度で放電します.実際には物体の表面形状や気圧等の条件により,もっと低い電圧で放電することがあります.放電のイメージは,雷を考えればわかりやすいと思います.
したがって,送電線等の近くでクレーン等の作業をする場合には,触らなければよい,との考えは禁物であり,危険な距離まで決して近づくことのないように細心の注意を払い安全対策を実施する必要があります.
労働基準局長通達第759号(昭和50年12月17日)「移動式クレーン等の送配電線類への接触による感電災害の防止対策について」では表1 のように「離隔距離」が定められています. 実際にクレーン等で作業する場合には,目測による誤差や風によるフックや電線の揺れ等にも配慮する必要があるため,当社では表2のように「より安全な距離(以下,安全距離という)」を定めています.


表1 離隔距離 表2 安全距離
(各電力会社の安全距離は添付資料をご参照ください)
電路の電圧 離隔距離
特別高圧 2m
ただし,60,000V 以上は10,000V またはその端数を増すごとに20cm 増し.
高圧 1.2m
低圧 1m
電圧 安全距離
6,600V 2.0m
11,000V〜44,000V 3.0m
66,000V〜77,000V 4.0m
154,000V 5.0m
275,000V 7.0m
500,000V 11.0m



(3) 災害の影響
 クレーン車などによる感電災害では,玉掛け作業などを担当する作業員の方が負傷することが多く,最悪の場合,死亡するケースもあります.尊い命を失った上に,労働災害として企業責任を問われることになり,その損失は計り知れません.
 また,鉄道・道路等の公共交通機関のマヒ,工場の生産ラインやオフィスの機能停止,断水等による生活影響,病院機能のマヒなど社会的にも大きな影響を及ぼす可能性があり,莫大な補償金を請求される場合もあります.

   

 


3.災害を防止するために
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 不幸な災害を防止するため,以下の点に配慮していただくようお願いします.

作業実施前に行う現地確認の時点で送電線や配電線の有無をチェックして下さい.
送電線等がある場合には電力会社に連絡し,安全に作業を進めるための打ち合わせを実施して下さい.
当日の作業においては,打ち合わせ内容を遵守し,監視責任者の配置やジブの作動範囲設定など確実な安全措置を実施して下さい.
作業計画や感電の危険性について関係する作業者全員に確実に周知し,安全施策を遵守させて下さい.

 残念ながら災害事例の多くが,電力会社への連絡なしで発生しています.この程度ならいいだろう,などと安易な判断をせず確実な連絡を特にお願いします.

 


4.おわりに
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 図1で示したように,送電線や配電線の近くにおけるクレーン等の作業による感電災害が繰り返し発生しております.これは,当社管内に限った話ではありません.日本クレーン協会の会員の皆様がこのような災害に遭うことがないよう,電力会社への事前連絡等の施策についてあらためて確認するとともに,関係者に徹底していただきますようお願いします.

 


資料(日本クレーン協会パンフレット「感電災害を防ぐために」抜粋)
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◎電線から離すべき距離(安全距離)
 電圧の高い送配電線は,ジブやワイヤロープ等が直接電線に触れなくても放電することがあります.
 このため各電力会社では,作業を安全に行うため電線から離すべき距離を安全距離として電圧ごとに決めておりますのでこれを順守して下さい.

種 類 公称電圧(V) 北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄 電源開発
低圧(配電線) 100 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2  
200 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2  
高圧(配電線) 6,600 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2  
特別高圧
(送電線)
11,000     3 3              
13,800                   2  
22,000 3 3 3 3   3 3   2 2  
33,000 3 3 3 3 3 3 3 3 4   2
44,000       3              
66,000 4 4 4 4 4   4 4 4 2.2 2.2
77,000       4 4 4 4       2.4
110,000 5           5 5 4   3
132,000                   3.6  
154,000   5 5 5 5 5         4
187,000 7             6     4.6
220,000             6   6   5.2
275,000 10 7 7 7 7 7         6.4
500,000   11 11 11 11 11 11 11 11   10.8
DC250,000                     7
DC500,000           14          
表中に示す電力会社のほかJR などが送電線や配電線を管理している場合があることからそれぞれ確認が必要である.

 

◎送配電線近接作業の留意点
 送配電線に接近しての作業計画の作成に当っては,事前に地元の電力会社等送配電線類の所有者と作業の日程,方法,防護措置,監視の方法,送配電線類の所有者立合い等について十分打合せを行うことが労働基準局長通達(昭和50年基発第759号)に規定されております.
 作業を行う場合にも,同労働基準局長通達に従い,関係作業者に対し作業計画を周知徹底させるとともに,感電防止に対する措置(建設用防護管や防護ゲート等)が講じられているか,監視責任者が配置されているかなどを確認して下さい.

 


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