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現場で役立つ日本クレーン協会規格(JCAS)のあらまし
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1.はじめに
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 (株)日本クレーン協会は,クレーン等による労働災害の防止と運搬管理の向上をめざして,クレーン等に関する各種の技術的調査・研究や,知識の普及,検査検定及び技術的指導等の事業を推進しております.調査研究に進め方としてクレーン等の製造者・使用者・学識経験者等の方々により構成される委員会方式によって,クレーン等についての各種課題解決に努めております.その活動の一つとしてクレーン等の安全に係わる日本クレーン協会規格(JCAS:Japan Crane Association Standard)を制定し,公表することによって広く会員の方々の参考となる情報を発信しております.
  以下に日本クレーン協会規格の概要についてご説明し,現場で役立つ規格という観点からJCAS のあらましについてご紹介します.

 


2.日本クレーン協会規格とは
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2.1 制定目的

クレーン等(クレーン,移動式クレーン,デリック,エレベーター,建設用リフト,簡易リフト)及びゴンドラによる労働災害の防止を図るため,調査研究委員会活動の成果に基づき,(株)日本クレーン協会が自主的に定める日本クレーン協会規格(以下JCAS という.)を制定する.

2.2 制定方法

(1)  当協会にある約20の技術委員会において,基準,標準,指針などの規格原案を作成する.
(2)  規格を制定する前に,「クレーン」誌に掲載する等により広く会員の意見を求める.
(3)  前項の意見等に基づき,関係委員会において必要な再検討を行い,技術審議会に付議する.
(4)  審議会において承認されれば,審議結果に基づき,会長がこれを制定し,公表する.

2.3 適用範囲

規格の適用範囲は次の各号に掲げる範囲とする.
(1)  クレーン等安全規則,クレーン等に関する構造規格又は日本工業規格の規定を除く技術的事項で,クレーン等又はこれらを用いて行う作業の安全の向上を図るための望ましい要件
(2)  クレーン等の構造規格において規定する性能要求を満たすための具体的要件
   

 


3.JCAS のあらまし
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 昭和40年前半より約40件以上の規格を制定・改正してきましたが,廃止したものもあり平成18年中間期時点では表1に示す通り,クレーン(天井・定置ジブ式等)関連5件,移動式クレーン関連11件,クレーン一般関連5件,玉掛け関連8件,ゴンドラ関連3件の計32件の規格を制定しています.この表は, 上記分類別に,年代の新しい順に並べ替えたものです.
図1 無線操作装置 図3 外部表示の例
 
図2 ペンダントスイッチ操作式クレーン
(メッセンジャー方式)
図4 移動式クレーンの共づり作業
 
4m/s:42° 8m/s:70° 10m/s:76°
図5 吹流しの風速と角度の関係(335型)
 
(両端アイ型) (両端金具付き)
図6 ベルトスリングの例

3.1 作業上の安全対策に関する規格

(1)  無線操作式クレーンの安全に関する指針(JCAS 1002-2004)
 運転者の操作装置(電波法の免許を要しない無線局,図1)により,無線で遠隔操作される方式のクレーンは,運転操作する場所を選ぶことができ,足元が不安定な箇所や作業環境の悪い場所を避けて運転することができるため,最近多く使用されるようになってきています.
 ここでは安全上特に必要となる操作・受信装置の構造機能要件及び該クレーンの管理・運転に関する使用基準などについて定めたものです.
(2)  ペンダントスイッチ操作式クレーンの安全に関する指針(JCAS 1001-2004)
 クレーンのトロリ又はガーダからつり下げられたペンダントスイッチにより床上から操作されるクレーンについての規定です.このクレーンにはペンダントスイッチがメッセンジャーワイヤからつり下げられるもの等も含み,床上運転式クレーン(図2)及び荷の移動にともなう方式の床上操作式クレーン等が相当します.
 ここでは安全上特に必要となるペンダントスイッチの構造機能要件及び該クレーンの管理・運転中の留意事項等について定めたものです.
(3)  軌条上を走行するクレーンの電気設備に関する接地の指針(JCAS 1301-2002)
 テルハを含む軌条上を走行するクレーンの電気機械器具について,事業者が電気設備技術基準に基づき,接地工事を行う場合等に参考とするための指針として,接地方法,接地抵抗値の測定,測定記録の
保存及び保守・管理などについて規定したものです.
(4)  クレーン用緩衝装置等の技術指針(JCAS0201-1989)
 クレーンの移動体(クレーン走行体,トロリ)が衝突した時に生ずる衝撃を緩和し,クレーンの安全性を確保するため,横行・走行レール又はクレーン・トロリに取り付けられる緩衝器等の設計条件,緩衝器の種類と選定,施工上の注意事項及び保守管理について規定したものです.
(5)  移動式クレーンの安全装置の使用状況を外部表示する場合の基準(JCAS 2001-2004)
 つり上げ荷重が3トン以上の移動式クレーンの安全装置(過負荷防止装置及び巻過防止装置)を使用しないとき,警告のため赤色灯を点灯させ,外部に表示する場合(図3)の方法を規定したものです.制定は1993年(平成5年)です.「道路運送車両の保安基準」に留意する必要があります.
(6)  移動式クレーンの共づり作業を行う場合の指針(JCAS 2004-2002)
 移動式クレーンによる共づり作業(複数のクレーンで1つの荷をつり上げる作業;図4)は,基発第218号通達により「原則として禁止」となっています.この指針では,やむを得ずこの作業を行う場合の作業手順,方法,定格総荷重に対する低減率を考慮したクレーンの能力を検討しなければならない.また,作業を行う際に実施すべき事項を「クレーン等安全規則」や「玉掛け作業の安全に係るガイドライン」などに規定された内容と関連づけて解説したものです.
(7)  移動式クレーンにおける操作レバーの配列及び操作方向(JCAS 2202-1990)
 移動式クレーンにおける操作レバーの配列及び操作方向の相違に起因するオペレータの誤操作による災害を防止するため,前後方向操作レバー及びクロスシフトレバーについて,基本操作レバーの配列及び操作方向について定めたものです.
(8)  クレーン作業に使用する吹流し(JCAS 9001-1998)
 クレーン作業における風速,風向きの判断の目安に供する目的で,作業場所の付近に設置する吹流しの各部寸法及び色,材料,取付け金具などについて規定したものです.(図5)
  なお,この規格に合致した2種類の吹流し(直径を表す335型,670型)を,商品として当協会各支部にて販売しております.
(9)  ゴンドラ操作部の表示の基準(JCAS 5003-1995)
 ゴンドラ構造規格の第35条第2項(操作部分の表示)に関し,各製造者を対象に操作部分の表示の現状を調査した結果,それぞれ製造者毎に表示方法は不統一でした.誤操作による災害を防止するため,操作部分の表示方法を統一することとし,その表示方法を検討し,その基準を定めたものです.
(10)  つりハッカーの作業マニュアル(JCAS 6804-2006)
 ワイヤロープスリング,チェーンスリング等の下端につりハッカーを連結し,鋼板,形綱及び鋼管などのつり荷を保持運搬するハッカー作業について,選定基準や使用上の禁止事項などを規定したものです.
(11)  つりクランプの作業マニュアル(JCAS 6802-2005)
 市販されている5種類のつりクランプを用いて,鋼材をつり上げる際の作業基準について規定したもつり上げ装置のです.
(12)  ベルトスリング使用基準(JCAS 0601-1989)
 合成繊維からなる玉掛け用ベルトスリング(JISB 8818に準拠し,ナイロン,ポリエステル及びポリプロピレン繊維とする;図6)について,形式,材料の種類,安全係数,基本使用荷重,使用限界判定方法,取扱い(使用開始時の処置,使用上の注意,保管),点検及び廃棄に関する基準について規定したものです.現在,改正案を作成中です.

 

図7 クレーン機能を備えた油圧ショベル 図9 つり荷走行
 
図8 ワイヤロープの簡易点検用の下敷き

3.2 点検基準に関する規格

(1)  クレーン機能を備えた油圧ショベルのクレーン
 部分に係る定期自主検査実施要領(JCAS 2206-2004)
 クレーン等安全規則第76条の規定により1年以内ごとに1回,定期に自主検査を行う場合において,クレーン機能を備えた油圧ショベル(図7)のクレーンに関係する部分について,検査項目,検査方法及び判定基準を定めたもので,つり上げ荷重が3トン未満のクレーン機能を備えた油圧ショベルに適用されます.
(2)  クレーン等に使用されるワイヤロープの保守,点検及び廃棄基準(JCAS 0501-1986)
 クレーン等及びゴンドラに使用されるワイヤロープに関して,保守・取替え・保管の基準,点検箇所・項目及び廃棄基準について規定したものです.
 なお,本規格を簡便化した「ワイヤロープの簡易点検」という写真刷りの下敷きと,玉掛け用具としてのワイヤロープについてもこれに準ずることが望ましいことから,「玉掛け用ワイヤロープの簡易点検」という下敷きも作成・販売しております(図8).
(3)  つりハッカーの点検マニュアル(JCAS 6805-2006)
 玉掛け用つり具として使用するつりハッカーの点検要領及び処置,点検箇所,判定基準・使用限度などについて規定したものです.
(4)  つりクランプの点検マニュアル(JCAS 6803-2005)
 玉掛け作業に使用されるつりクランプに関して,点検の種類,点検要領及び処置,点検箇所,判定基準,使用限度などについて規定したものです.

3.3 クレーン等の安定度に関する規格

(1)  油圧ショベル兼用屈曲ジブ式移動式クレーンのつり荷走行時の能力設定に関する指針(JCAS2005-2005)
 移動式クレーンのつり荷走行は,昭和50年の労働省通達に基づき安全上原則として行わないことになっていますが,実際の現場では作業の性質上止むを得ずつり荷走行が日常的に行われております.こうした背景のもと,当該クレーンにより荷をつって走行することを不可避なこととして,安全な作業を行うために,実験結果をもとに,つり荷走行時定格荷重の設定,使用の条件,過負荷制限装置の設定等について指針として定めたものです.
 なお,このクレーンと後述する「クレーン機能を備えた油圧ショベル」や「クレーン機能付き車輌系建設機械(ドラグショベル)」は同一の機種です.
(2)  クローラクレーンのつり荷走行時の安定に関する指針(JCAS 2002-2002)
 移動式クレーンのつり荷走行は,原則として禁止の通達(昭和50年4月10日基発第218号)が発出されています.臨時的で短期間の作業,代替の方法が確立されていない場合等,やむを得ない理由によりこの作業を行う場合には,つり荷走行時の定格総荷重を低減し,使用条件に制限を加えクローラクレーンの安定を図る必要があります.
  本指針は定格総荷重の低減方式や走行速度,ジブ長さ,路面状態及びつり荷の高さなどの使用条件について規定したものです.
(3)  ホイールクレーンのつり荷走行時の安定に関する指針(JCAS 2003-2002)
 従来から,ホイールクレーンは定置づりでの性能だけでなく,つり荷走行での性能を定めていました.しかしながら,日本においては,つり荷走行性能を定める公的な基準はなく,製造者が独自の基準でつり荷走行性能を定めていました.一方,ISO 4305 では,移動式クレーンは,つり荷走行が行われるという前提で,つり荷走行時の条件を規定しています.これらを参考にホイールクレーンについての前記と同じ内容を規定したものです.
(4)  ゴンドラ作業床の安定度の基準(JCAS 5001-1995)
 ゴンドラ作業中における作業床の転倒災害を防止するため,オーバーハング型,環状型及びせり出し型の作業床のモーメントについて標準的な計算基準を示し,安定度が1.5以上必要であることを規定したものです.

 

図10 過負荷制限装置(その2) 図11 屈曲ジブ式積載形トラッククレーン
 
図12 油圧ショベル兼用屈曲ジブ式移動式クレーンの過負荷制限装置と関連センサ
 
図13 過負荷制限装置(その1)

 

3.4 過負荷制限装置に関する規格

(1)  積載形トラッククレーンの過負荷制限装置規格(その2)(JCAS 2207-2005)
  つり上げ荷重3トン未満の移動式クレーンについては過負荷防止装置の装着が義務付けられていないこともあり,転倒事故に歯止めがかからない状況です.
  そこで図10の「アウトリガー反力検出装置」タイプを備えることによって,転倒するおそれがある操作をした場合あるいは定格荷重を超え,設計強度を超える負荷がかかるおそれがある場合に,警告又は停止する機能を持たせるべきであることを提案しております.
(2)  屈曲ジブ式積載形トラッククレーンの過負荷制限装置(JCAS 2204-1998)
  つり上げ荷重が3トン未満の屈曲ジブ式積載形トラッククレーン(図11)に使用する,起伏シリンダー圧力を検出し負荷率を表示するタイプの過負荷制限装置の機能,性能,構造について規定したものです.
(3)  油圧ショベル兼用屈曲ジブ式移動式クレーンの過負荷制限装置(JCAS 2205-1998)
  移動式クレーン構造規格に適合している油圧ショベル兼用屈曲ジブ式移動式クレーン(図12)のうち,つり上げ荷重が3トン未満のものに装備する,作業半径及びつり荷の質量を自動的に検出するタイプの過負荷制限装置の機能,警報性能,構造などについて規定したものです.
(4)  積載形トラッククレーンの過負荷制限装置(その1)(JCAS 2203-1995,2005)
  つり上げ荷重3トン未満の積載形トラッククレーンに使用する,作業半径及びつり荷の荷重を自動検出するタイプの「過負荷制限装置」(図13)の機能,警報性能,構造などについて規定したものです.
  その他設計基準に関する規格等8件については割愛します.

 


4.おわりに
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 以上,日本クレーン協会規格の概要について述べましたが,これらの内容の詳細についてご要望があれば協会会員には本文と解説をコピーして頒布しております.
  また,原則的に5年に1度の割合で見直し・改正を行って,常に新しい技術情報を取り入れた規格としていくこととしております.新規に制定又は改正しようとするときには機関誌「クレーン」に掲載しますので是非安全作業にご活用を御願い致します. 最後に,当協会規格に対する御意見,御提案等がございましたら,技術部までお寄せいただきますよう御願い致します.

 


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