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クレーン等のワイヤロープの安全点検
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1.はじめに
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 ワイヤロープはあらゆる産業の設備,運搬及び荷役用として非常に幅広く使用され,必要欠くことの出来ないもので,重要な役割を担っている.
  ところが,ワイヤロープはいずれは取替えるもので消耗品であるとの認識から,ややもすると比較的雑に取扱われて,高価な設備を損傷したり,重大な人身事故につながる場合もある.
  ワイヤロープを使用する場合は,正しい知識を持って管理することが必要であり,設備・装置を管理される方々にご一読いただき,その安全使用に役立てていただければ幸いである.
  今回はクレーン用ワイヤロープを安全に使用するため,保守・管理方法,点検項目と廃棄基準について取り上げることにした.

 


2.保守保管
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2.1 使用中の保守
  ワイヤロープの保守は,ロープを安全にかつ経済的に使用するため,使用者が実施すべき必須項目である.
  ロープの保守については日本クレーン協会規格JCAS 0501で次のように規定されている.

(1) 塵埃,砂粒等を除去し,清潔な状態保持する.
(2) ロープグリースが適量塗布された状態に保持する.
(3) 補給するロープグリースが既塗布のものと同系 統のものとする.
(4) 端末部は雨水が浸入しないように保護する.
(5) ドラム及びロープ車に接する部分で断線している素線は,ストランドの谷部から折って取り除く.
(6) 端末部に異常が認められた場合は,補修又は切詰め,あるいは必要に応じて天地振替えを行う.
(7) クリップにゆるみが認められたら直ちに締め直しを行う.

2.2 保管
  ワイヤロープはグリースの乾燥,流失を防止するため,日光のあたる所や高温の場所を避け,できるだけ屋内に保管する.止むを得ず屋外に保管するときは,雨,露がかからないよう防水シートをかける.また,ワイヤロープの下に枕木等を置き地面から30cm 程度離す.
  ワイヤロープを長期に保管する場合は,ロープグリースを充分に塗布するのが望ましい.


   

 


3.点検
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 ロープは,日常及び定期的に点検して,損傷や劣化の状態を常に把握しておき,取替時期を失しないようにしなければならない.点検不備のため,ロープの破断事故を起した例は非常に多い.
@ エコライザーシーブ部のシーブに接触していて見えない部分の片減り摩耗と集中断線を見逃し,ロープの破断事故を起こした.
A ロープ径の測定を1方向のみしか行わなかったため,片減り摩耗が発見できず,ロープの破断事故を起こした.
B ロープの取替えを月単位で行っていたが,1ヵ月の稼動が従来の2〜3倍に増し,早期に寿命に達し破断した.
C 点検していなかったため,疲労断線が多発しているのに気付かず,突然破断した.
D 屋外のクレーンで,長期間(5〜6年)使用したため繊維心が腐食し,ストランドが落込み形崩れしたが,それに気付かず,ロープの破断事故を起こした.

等々の事故例があり,ロープの点検は欠かせないものである.
  なお,法的に決められている点検について,クレーン等安全規則を表1に,.日本クレーン協会規格の点検箇所及び点検項目を,表2及び表3に示す.

 

 

表3 日本クレーン協会規格による点検項目
項 目

日常点検

定期点検
特別点検
備考
断線
断線本数と分布状況を調べる.フラット形及び
4ストランド・3ストランドロープは谷断線に注意が必要.
摩耗 最も細い部分の直径を測定する.
腐食 赤錆程度なのか,内部腐食まで進んでいないか調べる.
崩形れ 異常の種類と程度及び位置を調べる.
電弧または熱影響
塗油の状態 過不足及び乾湿の状態を調べる.
端末止め金具(クリップ
を含む)及び取付け部
端末金具と境目でのロープのずれ,
断線・腐食が無いか調べる.
ドラム及びロープ車 縄目等キズがついていないかを調べる.

3.1 点検箇所
  ワイヤロープは断線の有無,摩耗の程度・腐食の程度・グリースの状態・形崩れの有無・ワイヤロープ端末部の状況などについて,外部だけでなく内部も含めた点検を行う必要がある.
  ワイヤロープの主な点検箇所を次に示す.

(1) ドラムにおける端末固定部分

(2) ドラムに巻かれた部分

(3) ロープ車(シーブ)を通過する部分

(4) エコライザ部分

(5) 装置への端末固定部分

3.2 点検項目
  点検は,ワイヤロープの劣化を早期に発見して,事故を防止するための重要な作業であり,ワイヤロープごとの劣化状態を正確に把握するために,日常点検や定期点検の記録をとることが大切である.
  主な点検項目を次に示す.


 
注) 点検で使用した絵は,日本鋼索工業会監修の「絵で見るワイヤロープの正しい使い方」から抜粋.

 


4.廃棄基準
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 ワイヤロープの廃棄基準について,日本クレーン協会では簡易点検マニュアルを作成しており,それに従って実施するのが最も簡便である.簡易点検マニュアルにはクレーン等に使用されるワイヤロープのマニュアルと玉掛け用ワイヤロープのマニュアルの2種類がある.
  クレーン等に使用されるワイヤロープの簡易点検マニュアルを次に示す.

 ワイヤロープの簡易点検マニュアル

 ワイヤロープのシーブを多く通過する部分等を中心に,目視で損傷の状況をチェックする.
  その損傷の状況をワイヤロープの損傷写真と比較する.

点検は <ステップ1>:形崩れ
  <ステップ2>:摩耗・腐食
  <ステップ3>:断線

により行ない,どれか一つでも廃棄基準に達していれば,そのワイヤロープは廃棄する.

 

<ステップ1>:形崩れ

 形崩れの部分を良く似た損傷写真と比べてみる.

 

<ステップ2>:摩耗・腐食

 摩耗してワイヤロープの表面が光っている部分や,赤錆のある部分の油や汚れをよく拭いて,損傷写真と比べて見る.

 

<ステップ3>:断線
  目視による点検する.断線を発見したら,その周辺の油や汚れをよく拭いて点検する.点検後はロープグリースを塗布しておく.

(1)クラウン断線(山切れ)の場合
  ロープ径(d)の6 倍(約1 ピッチ)及び30倍(約5ピッチ)の範囲内の断線数を数え,使用されているワイヤロープの構成を確認して,次表の断線数以上あれば廃棄する.

ワイヤロープの構成
可視断線数
点検範囲

6d

30d
18×7 19×7 4 8
6×Fi(25)
6×WS(26)
6×P・WS(26)
34×7 35×7
5
5
5
5
10
10
10
10
6×Fi(29)
6×WS(31)
6
6
11
13
6×WS(36)
6×P・WS(36)
7
7
14
14
6×SeS(37) 8 16
6×WS(41) 9 18
6×37 10 19
4×F(40)
3×F(40)
2
2
4
4
・IWRC のものも同様に扱う.

 

(2)ニップ断線(谷切れ)の場合
  1本でもあれば廃棄する.

<廃棄基準・更新基準>
  ロープの廃棄基準・更新基準は,その業種を管理・監督する各省庁により,法的な規則が決められている.ロープの関連法規を表4に示す.

表4 ワイヤロープの関連法規
No.
法規 最新の改正時期
(未改正のもの
は制定時)
内容
名称 種類 安全率 D/d フリート
アングル
取替基準
1 建築基準法施工例 政令 平成2年    
2 石油鉱山保安規則 通産省令 平成2年    
3 石炭鉱山保安規則 通産省令 昭和61年    
4 金属鉱山等保安規則 通産省令 平成1年    
5 鋼索鉄道の施設に関する
技術上の基準 の細目を定める告示
運輸省告示 昭和62年    
6 鋼索鉄道の索条交換基準について 運輸省通達 昭和62年      
7 索道施設に関する技術状の
基準を定める省令
運輸省令 昭和62年    
8 単線自動循環式普通索道の
支えい索に使用される索条の
交換基準について
運輸省通達 昭和62年      
9 船舶安全施工規則 運輸省令 平成2年    
10 労働安全衛生規則 労働省令 平成2年    
11 クレーン等安全規則(玉掛索) 労働省令 平成4年    
12 クレーン構造規格 労働省告示 平成7年
13 移動式クレーン構造規格 労働省告示 平成7年
14 デリック構造規格 労働省告示 昭和43年
15 エレベータ構造規格 労働省告示
昭和46年
16 簡易リフト構造規格 労働省告示 昭和43年
17 建設用リフト構造規格 労働省告示 昭和43年
18 ゴンドラ構造規格 労働省告示 平成6年
19 機械集材装置構造基準(指導基準) 労働省通達 昭和37年
20 運材索道構造基準(指導基準) 労働省通達 昭和39年 ○*  
21 集材機作業基準(作業要領) 林野庁通達 昭和58年  

*印:D/δで表現
D:ドラム・シーブの径mm
δ:ロープの外層素線径mm

(労働省関係の廃棄基準)
法規名称

記載条項

内容
労働安全衛生規則 くい打機又はくい打機の巻上用(第174条)
1. ロープの1より(1ピッチ)の間において素線(フィラー線を除く)の数の10%以上の素線が断線したもの.
2. 直径の減少が公称径の7%をこえるもの.
3. キンクしたもの.
4. 著しい形崩れ又は,腐食のあるもの.
(注) (1) くい打機」は継目のあるものの禁止.
  (2) 「巻上げ装置」「機械集材装置」では(フィラー線を除く)がない.
  (3) 「機械集材装置」では摩耗による直径の減少が公称径の7%をこえるものとなっている.
車道の巻上げ装置の巻上用(第217条)
揚貨装置の玉掛け用(第471条)
機械集材装置又は運材索道用(第501条)
クレーン等各構造規格 クレーン(第51条)
移動式クレーン(第14条)
デリック(第38条)
エレベーター(第36条)
ゴンドラ(第36条)
簡易リフト(第17条)
建設用リフト(第36条)
クレーン等安全規則 玉掛け(第215条)

 法的規制ではないが,実際には,各業界で規格や基準を作り対応している.クレーン用ワイヤロープに関しては,日本クレーン協会「JCA S 0501-1986クレーン等に使用されるワイヤロープの保守・点検および廃棄基準」(表5)があり,エレベータロープに関しては,「JIS A 4302-1992昇降機の検査標準」(表6)がある.

表5 日本クレーン協会規格の廃棄基準
項目 廃棄基準
断線 外層ストランド中の素線の総数(フィラー線を除く)に対して,断線数が次の率以上になったもの.
・ロープ1より(1ピッチ)の間において10%
 ただし,1本のストランドだけに発生している場合5%
・ロープ5より(5ピッチ)の間において20%
 なお,ケーブルレイドロープは,外層のロープ(シェンケル)を外層ストランドとみなす.
摩耗 ・直径の減少が公称径の7%を超えたもの.
腐食 ・素線の表面にピッチングが発生して,あばた状になったもの.
・内部腐食により素線がゆるんだもの.
形崩れ ・キンクしたもの.
・うねりの幅が公称径dの25倍以内の区間において4/3d以上になったもの.
・局部的な押しつぶしにより,偏平化し,最小径が最大径の2/3以下になったもの.
・心綱または鋼心がはみ出したもの.
・著しい曲がりがあるもの.
・かご状になったもの.
・ストランドが落ち込んだもの.
・1本のストランドがゆるんだもの.
・素線が著しく飛び出したもの.

 

表6 エレベーター用ワイヤロープの取替え基準
摩損状態

基準

素線の破断が平均に分布している場合
1構成より(ストランド)の1よりピッチ内での破断4以下
破断素線の断面積が,元の素線の断面積の70%
以下となっているか,又は,さびが甚だしい場合
1構成より(ストランド)の1よりピッチ内での破断2以下
素線の破断が1箇所または特定のよりに集中している場合 素線の破断総数が1よりピッチ内で6より鋼索では12以下,8より鋼索では16以下
摩耗部分の鋼索の直径 摩耗していない部分の鋼索の直径の90%以上

 


5.おわりに
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 前述の様に点検不備の為,クレーン用ワイヤロープに限らずワイヤロープの破断事故は繰り返し発生しております.適切な点検を行えば未然に事故は防止できます.
  ワイヤロープ破断による災害に遭うことが無い様に点検体制の確認をして頂くと共に,見直しの資料として頂ければ幸いです.

(東京製綱(株) 中野弘和)


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