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積載形トラッククレーン災害と安全ポイント
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1.はじめに
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 表1は,厚生労働省安全衛生部安全課の資料を基に,過去5年間の移動式クレーンによる業種別死傷災害発生状況(休業4日以上の負傷者及び死亡者)をまとめたものです。
  表2は,そのうちの移動式クレーンによる業種別死亡災害(死亡者数)状況です。
死傷災害発生状況にあっては,年度によって多少の相違はあるものの,55%が建設業において発生しています。
  また,5年間の死亡災害(死亡者数)の約67%が建設業において発生しており,他の業種より死亡災害率が高いことを意味しています。
 表3は,移動式クレーンによる死亡災害(死亡者数)を現象別・機種別死亡災害発生状況としてまとめたものです。
  このなかで積載形トラッククレーンによる5年間の死亡者数は105名で,全死亡者290名の実に36%強に相当します。
  なお,5年間の積載形トラッククレーンにおける現象別死亡災害状況としては,機体,構造部分が折損,倒壊転倒したもの45名(全ての移動式クレーン災害による死亡者数の16%),つり荷や積み荷等荷の落下によるもの23名,つり荷の転倒や床上の物体の転倒などによる挟圧23名,作業床等から墜落したものなど墜落8名,つり荷,つり具が激突したもの4名,感電2名です。

表1 移動式クレーンにおける業種別死傷災害発生状況
業種  年度
平成13年 平成14年 平成15年
平成16年
平成17年
製造業 113 115 87 97 76
鉱業 3 6 1 1
建設業 530 575 496 460 479
運輸交通業 142 157 155 169 161
貨物取扱業 25 35 24 22 18
農林業 17 17 16 13 21
畜産・水産業 5 2 5 6 5
商業 68 70 71 61 56
その他の事業 45 48 58 51 53
948 1,025 912 880 870

 

表2 移動式クレーンにおける業種別死亡災害発生状況
業種  年度 平成13年 平成14年 平成15年
平成16年
平成17年
製造業 5 5 6 10 4
鉱業
建設業 51 43 32 41 27
交通運輸事業 1 1
陸上貨物運送事業 4 8 3 10 10
港湾荷役業 2 1 2
その他の事業 5 7 6 2 4
合計 66 65 49 63 47

 


 特に多い積載形トラッククレーンの機体,構造部分の折損,倒壊転倒に焦点を絞って考察します。

 


2.運転資格及び玉掛け資格
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(1)移動式クレーン運転資格

 労働安全衛生法施行令(平成2年8月31日改正,平成2年10月1日施行)により,積載形トラッククレーンの運転には,表4移動式クレーンの運転資格の区分に応じた資格を有する者でなければ就業できません。(道路交通法第二条第一項第一号に規定する道路上を走行させる運転を除く。)
  なお,これ以前の移動式クレーン運転資格は,つり上げ荷重が5トン以上の移動式クレーンは,現在と同じく移動式クレーン免許を必要としました。一方,つり上げ荷重が5トン未満の移動式クレーンは特別教育修了者であれば運転できました。
  しかし,積載形トラッククレーンを運転される方への知識と技能の向上によって労働災害を減少させるために『小型移動式クレーン運転技能講習』規程が制定され今日に至っています。
  なお,平成2年10月1日労働安全衛生法施行令の施行に伴い,これより以前に移動式クレーン特別教育を修了されたままの方(小型移動式クレーン運転技能特例講習未受講者及び不合格者)は,つり上げ荷重1トン未満の移動式クレーンの運転の業務にしか従事できません。資格の再取得が必要です。

 

(2)玉掛け資格
 
  つり具を用いて行う荷かけや荷はずし業務のことを玉掛け作業といいます。
  玉掛け作業は,労働安全衛生法に基づく就業制限業務として,労働安全衛生法施行令第二十条第十六号制限荷重が1トン以上の揚貨装置又はつり上げ荷重が1トン以上のクレーン,移動式クレーン若しくはデリックの玉掛けの業務とあります。
  積載形トラッククレーンの玉掛け作業には,表5 玉掛け資格の区分に応じた資格を有していなければ就業することはできません。
  すなわち,リモコン(有線)装置やラジコン(無線)装置を備えた積載形トラッククレーンを使用して一人で作業するには,積載形トラッククレーンのつり上げ荷重に応じた「移動式クレーン運転資格」「玉掛け資格」積載形トラッククレーンを架装した車両(自動車)の運転に必要な「自動車の運転免許資格」を持っていなければなりません。

表4 移動式クレーン運転資格の区分
区分  資格 特別
教育
技能
講習
免許 備考
つり上げ荷重が1トン未満の
移動式クレー ンの運転
道路上を走行させる運転を除く。
つり上げ荷重が1トン以上5トン
未満の移動式クレーンの運転
つり上げ荷重が5トン以上の
移動式クレー ンの運転
〔参考〕
@ つり上げ荷重:アウトリガーを最大に張出して,ジブ長さを最短にし,起伏角を最大にしたとき に負荷させることができる最大の荷重。(定格総荷重の最大値)
つり上げ荷重にはフック,グラブバケット等のつり具の質量が含まれます。
A 小型移動式クレーン運転技能特例講習:小型移動式クレーン運転技能講習と同等の運転資格です。
B つり上げ荷重0.5トン未満の移動式クレーンは労働安全衛生法が適用されません。

 

表5 玉掛け資格の区分
区分  資格 特別
教育
技能
講習
つり上げ荷重が1トン未満の移動式
クレーンへの玉掛けの業務
つり上げ荷重が1トン以上の移動式
クレーンへの玉掛けの業務
職業能力開発促進法による玉掛けの訓練を修
了した者(安全衛生規則第42条)を含む。
〔参考〕
@ 玉掛けの業務:つり具を用いて行う荷かけ,荷はずしの業務をいいます。


   

 


3.移動式クレーンの原理と機体の安定
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(1)移動式クレーンの原理

  移動式クレーンは“てこの原理”で重量物をつり上げる機械装置です。
  積載形トラッククレーンにあっても全く同様です。このことを十分理解して使用することが転倒事故を防ぐ上で大変重要です。
  積載形トラッククレーンで荷をつった状態は図1の天びんに例えることができます。
  この時クレーンが安定状態にあるか転倒するかは,天びんの支点を境にした安定モーメントと転倒モーメントのいずれが大きいかによって決まります。
  力学においては,力が物体を回転させようとする働きを“力のモーメント”といいます。
  その大きさは,力(腕の長さと直角方向に作用する力)と腕の長さ(回転軸中心から力の作用点までの距離)との積で表します。
  すなわち,力の大きさF,腕の長さをL とすれば,力のモーメントM は,

M=F×L となります。
M の単位: Ncm(ニュートンセンチメートル)やKNm
(キロニュートンメートル)が使われます。
Fの単位: N( ニュートン)やKN( キロニュートン)
Lの単位: cm(センチメートル)やm(メートル)

 すなわち,クレーン作業においては,転倒支点を境にしての安定モーメントが,常に転倒モーメントよりも大きな状態になければなりません。

 

(2)積載形トラッククレーンの転倒支点

 積載形トラッククレーンの多くは,クレーン本体に設けた左右アウトリガーのジャッキフロートと車両後軸の左右タイヤの4点で機体を支えてクレーン作業を行います。
  図2積載形トラッククレーンの作業領域において安定度を考えた場合,後方領域では後輪タイヤが,車両の真横では荷をつっている側のジャッキフロートが転倒支点となります。
  側方領域では,後輪タイヤとジャッキフロートの両方で荷重を分担することとなり,後方へ近づけば後輪タイヤに多くの荷重がかかり,側方へ近づけばジャッキフロートに多くの荷重がかかります。
  側方領域における転倒支点は,ジャッキフロート中心と後輪タイヤ中心を結ぶ線上において,各旋回角度ごとに旋回中心からジブ中心をとおり,つり荷方向に引いた線との交点と考えることができます。

 

(3)アウトリガーの張出幅と安定

 アウトリガーは,クレーン作業時の機体の安定性を増すための装置です。
  クレーン等安全規則の〔使用及び就業〕第70条の5(アウトリガー等の張り出し) 事業者は,アウトリガーを有する移動式クレーン又は拡幅式のクローラを有する移動式クレーンを用いて作業を行うときは,当該アウトリガー又はクローラを最大限に張り出さなければならない。と定められています。
  図3はアウトリガーの張出幅と転倒支点の変化を示したものです。アウトリガー最小張出幅における側方領域の転倒支点は,図3の点線上において旋回角度によって変化します。
  アウトリガーを最大張出幅にすることによって,転倒支点は図3の実線に変わります。すなわち,アウトリガーを張出すことにより“てこの原理”における支点位置を変えて,安定側モーメントの“腕の長さ”を長くして安定モーメントを大きくしています。
  側方の安定度は,このほかに後軸のスプリンング固さやシャーシフレームのたわみ等も関係します。
 なお,側方領域において最も安定度の悪い位置は,アウトリガー最小張出(点線)のときも最大張出(実線)のときも,転倒支点までの距離が最も短くなる位置です。すなわち,この線にたいしてジブが直角に交わる作業位置が最も転倒しやすいことになります。

 


4.積載形トラッククレーンの性能
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(1)移動式クレーン性能を決める三要素

 移動式クレーンの性能は,つぎの要素によって決められています。

spacer.gif @ 巻上装置の能力とワイヤロープの強度(荷を巻上げる力があるかどうか)(図4のイ〜ロ)
  A 機械装置及びジブ等の構造部材の強度(破壊するかどうか)(図4のロ〜ハ)
  B 機体の安定(移動式クレーンが転倒するかどうか)(図4のハより右側)

  以上の三つの要素の値のうち,最も小さい値によって性能は決められています。
  これを図で表したものが,図4性能曲線です。すなわち,移動式クレーンの性能は,作業半径が大きいときは安定度によって決められ,作業半径が小さいときはジブその他の強度によって決められています。

 

(2)三要素による性能曲線と危険操作

 図4性能曲線にあって,巻上げ(ウインチ)装置は,作業半径に関係なく最大定格総荷重をつり上げる能力を備えています。
  通常フックブロックの巻き掛け本数を変えることのない積載形トラッククレーンでは,ウインチによる荷の巻上げ操作において(ロ)より大きな作業半径で定格総荷重(安定曲線よりも大きな荷重)よりも重い荷をつり上げたとき積載形トラッククレーンは転倒します。
  また,最大定格総荷重をつって作業半径を大きくするために起伏の下げ操作や伸縮の伸ばし操作をした場合,(イ)から(ロ)の作業半径ではクレーンが破壊することがあります。


 

(3)空車時定格総荷重と表示条件

 積載形トラッククレーンの性能表は,メーカーによって「空車時定格総荷重」で表示したものと,「空車時定格荷重」で表示したものがあります。いずれの場合も下記条件にて性能を表しています。

  • 水平堅土上でクレーン本体アウトリガーを使用して,クレーンを水平に設置したとき。
  • 性能表で言うところの「作業半径」は負荷時のたわみを含んだ実際の作業半径です。
  • 性能表は,側方,後方領域におけるものであり,前方領域での性能は,この25%以下である。
  なお,作業においては,つぎのことを遵守しなければなりません。
  • 各ジブ(ブーム)長さを少しでも超えたときは,次のジブ(ブーム)長さの性能で作業する。
  • クレーン本体アウトリガーの中間張出時は,最小張出の性能で作業する。
  • 長いジブ(多段ブーム仕様)では,使用するジブ(ブーム)長さによっては,クレーン本体
〔注記〕
spacer.gif 「空車時定格総荷重」とは,積載形トラッククレーンのみに使用される用語でトラックの荷台に積み荷がない状態(空車時)における安定度に基づいて決めています。
また,アウトリガーは最も安定度の高い最大張出幅で,ジブ(ブーム)方向が後方,側方つりの状態での性能を表しています。
この場合,フックやグラブバケット等のつり具の質量が含まれています。
「空車時定格荷重」とは,「空車時定格総荷重」からフックやグラブバケット等のつり具の質量を差引いた荷重(質量)です。
すなわち,実際フックにかけたり,グラブバケットでつかんだりすることができる荷重(質量)です。
 アウトリガー最大張出でないと使用できない。

 


5.安全装置等の機能と使い方
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 移動式クレーンの安全装置等は,移動式クレーン構造規格によって装備と機能の保持が義務づけられています。
  図5は,積載形トラッククレーンの安全装置等を示したものです。
  事業者や運転者は,クレーン作業を開始する前に必ず作業開始前点検を行い,安全装置等に異常のないことを確認した上で,安全装置を正しく取扱い,定められた性能範囲を遵守して安全作業を行う義務があります。
  主な安全装置とその機能はつぎのとおりです。

 

@ 巻過警報装置,巻過防止装置

  巻上げ用ワイヤロープは,巻過ぎるとフックの上面がジブ(ブーム)などに激突してジブ(ブーム)を破損させたり,ワイヤロープが切断してつり荷が落下したりする恐れがあります。
  これを防ぐために,フックが上限の高さまで巻上がると,巻上げ用ワイヤロープに沿って下げられているおもりを押上げてスイッチが切れて回路をしゃ断し,警報を発する装置を巻過警報装置といい,自動停止する装置を巻過防止装置といいます。
  なお,最近の機種では巻過防止装置が多くなっています。

 

A 過負荷防止装置

  移動式クレーン構造規格では,つり上げ荷重が3トン以上の移動式クレーンは過負荷防止装置の取付けが義務付けられています。
  過負荷防止装置は,ジブ(ブーム)長さ,ジブ(ブーム)傾斜角及びつり荷の質量を計測して総合モーメントを演算します。
  そしてコンピュータに記憶させてある定格値と比較し,定格総荷重に近づくと警報を発して運転者に注意を喚起します。また,定格総荷重を超えると自動的にクレーンの作動を停止させます。
  なお,自動停止した場合でも安全側の操作,すなわち,つり荷の巻下げ,ジブ(ブーム)の縮め及び起こし操作は行えます。

B 荷重計

  つり上げ荷重が3トン未満の移動式クレーンでは「過負荷防止装置以外の過負荷を防止するための装置(安全弁を除く。)」を備えるものでも差支えないとあり,多くのものに“つり上げる荷重を検出する”荷重計が取付けられています。
  荷重計は圧力計を用いて,巻上(ウインチ)装置の油圧モータ作動圧力を荷重に変換したものです。したがって,巻上(ウインチ)装置の巻上げ時のみつり荷の質量を示し,停止時や巻下げ時,また他の操作時にはつり荷の質量は示しません。(指針は動きますが,つり荷の質量ではありません。)
  また,作動油の油温が適正温度(55〜60℃)に達していないと誤差を生じます。メーカーの取扱い説明を十分理解して使用する必要があります。

【荷重計による質量測定】

荷重計によるつり荷の質量測定はつぎの手順で行います。
@ エンジンの回転数を低速にします。
A 無負荷(つり荷をつらない)状態で,巻上げ操作を行い,荷重計の指針が0点を指すようにエンジン回転数を調整します。
B 巻上げ用ワイヤロープのフックへの掛け数によって読取る荷重計の目盛線を確認します。
C フックにつり荷を掛け,10〜20cm つり上げる間に,指針が指し示した荷重計の目盛線の値を読みます。これがつり荷の質量です。



C ジブ傾斜角度計(荷重指示計)
  ジブ傾斜角度計はジブ(ブーム)の側面に取付けられており,本来ジブ(ブーム)起伏操作によるジブ(ブーム)の傾斜角を表示するものです。
  積載形トラッククレーンにあっては,同時にアウトリガー最大張出時の各ジブ長さにおける空車時定格総荷重(又は空車時定格荷重)を,指針で示すようにした荷重指示計の機能を備えています。
  実作業においては

【アウトリガー最大張出時の場合】
  ジブ傾斜角度計(荷重指示計)で作業ジブ(ブーム) 長さに合った空車時定格総荷重(空車時定格荷重)を読取り,荷重計で計測した荷重(質量)が,常にこの定格総荷重(定格荷重)を超えない範囲で作業します。

【アウトリガー最小(中間)張出時の場合】
  ジブ傾斜角度計(荷重指示計)でジブ(ブーム)の傾斜角を読取り「作業半径―揚程図」から作業ジブ(ブーム)長さの作業半径を求めて空車時定格総荷重表(空車時定格荷重表)で作業できる定格総荷重(定格荷重)を読取ります。
  荷重計で計測した荷重(質量)が,この定格総荷重(定格荷重)を超えない範囲で作業します。

 

D 安全弁等
  安全弁(リリーフバルブ)は,油圧回路の異常な圧力上昇を防止し,油圧機器を保護するための装置です。設定圧力値を変えてはいけません。
  また,伸縮装置,起伏装置及びアウトリガー等の回路には,油圧の異常な低下(ホースの破損等)によって急激な降下等を防止するための安全装置として逆止め弁を設けています。

 

E 外れ止め装置
  外れ止め装置は,荷をつり上げる時にフックから玉掛け用ワイヤロープが外れるのを防止するための装置です。作業時には必ず使用し,破損したときは,直ちに修理しなければなりません。

 

F 警報装置
  クレーンの旋回時に周囲に警報を発して,はさまれ等の災害を防止するためのものです。

 

G 水準器
  アウトリガー設置時,車両左右方向の水平度を確保するために水準器が装備されています。

 

H 作業範囲制限機能
  この機能のひとつにジブ(ブーム)高さ制限機能があり,今ではこの機能を備えた積載形トラッククレーンもあります。ジブ(ブーム)の上限高さを予め登録しておくことで,クレーン作業時のジブ(ブーム)高さを自動的に制限する機能です。

 


6.ラジコンの機能と使い方
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 当初トラックの荷台への荷役用として開発された積載形トラッククレーンも,使用する業種が増え,用途が拡大されるにつれて,作業の効率化と安全面から遠隔操作を望む声があり,リモコン(有線)操作やラジコン(無線)操作が開発されました。

(1)ラジコンの作動

 積載形トラッククレーンの基本的な作動としては,
・ジブ(ブーム)の伸縮
・ウインチの巻上げ,巻下げ
・ジブ(ブーム)の起伏
・旋回があり,レバーにて操作します。
  速度は,レバー操作によって油圧バルブの開閉度を変えたり,エンジン回転数を変えて油圧ポンプからの油の吐出量を変えることで調整します。
  ラジコンは,図6に示すような送信機,通信ユニット,制御ユニットで構成されています。
  ラジコンでの操作は,送信機の動作選択スイッチを操作することによる操作信号を通信ユニットで受信して,制御ユニットからの電気信号で油圧バルブを動かします。



(2)送信機各部の名称と機能

 図7は,特定小電力型ラジコン送信機の一例と各部名称を示したものです。仕様により異なりますが,標準的な各スイッチの機能はつぎのとおりです。

  • 電源スイッチ:PTO「接」状態で電源スイッチを押すと送信機の電源が「ON」となり,電源LED が点灯します。もう一度押すと電源が「OFF」になり電源LED が消灯します。
  • ホーンスイッチ:スイッチを押すと車両のホーンが鳴ります。
  • 伸縮選択スイッチ:ジブ(ブーム)の「伸」又は「縮」の選択をします。
  • フック選択スイッチ:ウインチの「巻上げ」又は「巻下げ」の選択をします。
  • 起伏選択スイッチ:ジブ(ブーム)の「起」又は「伏」の選択をします。
  • 旋回選択スイッチ:クレーンの「右旋回」又は「左旋回」の選択をします。
  • 速度モードスイッチ:電源LED が点灯している状態で,このスイッチを押す毎に高速モード(LED 消灯)→微速モード(LED(赤)点灯)→中速モード(LED(緑)点灯)→高速モード(LED 消灯)の順に切替ります。
      なお,使用時は,前回電源を切った時のモードから始まります。
  • フック取出スイッチ:このスイッチを押している間「ブーム上げ+フック巻下げ」連動にてフックを取出します。また,ピンポン『フックを取出します』の音声メッセージがでます。
  • フック格納スイッチ:このスイッチを押している間,フックを格納した後,ジブ(ブーム)を縮小しながらフックを巻上げます。
    また,ピンポン『フックを格納します』の音声メッセージがでます。
  • フックの取出しや格納作業では,他の操作を併用することでもっと合理的な方法もあります。詳細は,取扱説明書を参照してください。
  • スピードコントロールレバー(トリガー):クレーンの作動速度を調整するレバーです。
    速度モードの範囲において,レバーの引く量に応じてエンジン回転数が上昇し,速度が速くなります。各モードの範囲はつぎのとおりです。
     高速モード:通常範囲のエンジン回転数
     中速モード:中速域までのエンジン回転数
     微速モード:アイドルアップ状態

 

(3)ラジコンの安全機能

 安全面からつぎのような機能を備えています。

@ 巻過防止機能
 
  フックの巻過ぎを防ぐ巻過防止装置です。おもりを押上げるとスイッチが切れてフックの巻上げ,ジブ(ブーム)の伸長及びジブ(ブーム)の上げを自動停止します。また,スピーカからピー『フックを巻過ぎています』の音声メッセージがでます。
  自動停止した場合は,フックの巻下げ,ジブ(ブーム)縮小操作をして巻過ぎ状態を解除します。

A スイッチ故障検出機能
 
  送信機の電源スイッチは,何も操作していない状態で「ON」「OFF」操作をします。
  選択スイッチやスピードコントロールレバー(トリガー)を操作した状態で,送信機の電源を「ON」にすると,エラー状態(送信機の4個のLED が点滅)となります。制御ユニットには,エラー番号が表示され,ラジコン操作,手動操作ともに出来なくなります。送信機の電源を「OFF」にすると手動モードになります。

B 連続操作制限機能
 
  故障やゴミの引っ掛かり等によって,選択スイッチが操作状態になったまま約5分間経つと,エラー状態にしてラジコン操作,手動操作ともに操作を出来なくします。送信機の電源を「OFF」にすると手動モードになります。
 
C 瞬間停止警報機能

  ラジコン操作中に,周囲の状況変化などによって送信機からの電波が届きにくくなると,スピーカから『ピー』の警報音で知らせます。

  • 『ピー』:電波状態が悪くなっていることへの警告で,クレーンは通常どおり作動します。
  • 『ピーピー』:2回連続して警報がでた場合は,クレーンの作動を停止させます。

いずれの場合も電波状態が悪いための警告であり,送信機と通信ユニットの距離を近づける等の対策をしてください。
 
D 音声メッセージ機能

  音声メッセージスイッチを「切」にしていると,音声メッセージは出ません。重要な警報です「入」にして作業してください。

 

(4)ラジコンのその他の機能

 より安全性や操作性を求めて,つぎのような機能を備えたラジコンもあります。

  • 安全監視(アイズ)システム:過負荷制限機能(B.M.L)と連動して,送信機の液晶デジタルパネルに定格荷重,実荷重,モーメント負荷率などの情報や,ブーム(ジブ)高さ制限機能や自己診断エラーコードなどを設定したり,表示できる作業時の安全監視装置です。
  • 過負荷制限機能(B.M.L):クレーン各部に設けたセンサーにて,作業状況を検出してモーメントを数値で把握し,作業が危険域に達した時に,警告音と音声メッセージで運転者に知らせる安全装置です。
  • ブーム高さ制限機能(A.W.L):作業前にブーム(ジブ)上限高さを予め設定しておくことにより,作業時のブーム(ジブ)高さを自動的に規制する作業範囲制限装置です。
      過負荷制限機能(B.M.L)には,この機能が内蔵されています。
  • ナビモション機能:作業時に「モード設定スイッチ」で,個別操作モードか連動操作モードの選択をします。連動操作モードにすることで,一つの操作で二動作を連動させて,つり荷をジブ(ブーム)と平行に移動させたり,地面と平行に移動させることができる機能です。
〔注記〕
spacer.gif 「ジブ(ブーム)との平行移動」は,伸縮操作に連動してウインチが作動し,つり荷がジブ(ブーム) と平行に移動します。
「地面との平行移動」は,伸縮操作に連動してウインチが作動し,つり荷を地面と平行に移動させる方法と,起伏操作に連動してウインチが作動し,つり荷を地面と平行に移動させる方法が選べます。

 

 


7.おわりに
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 安全装置や新しい機能を装備しても,運転される方が基本事項を守らなければ事故は防げません。
  安全作業のポイントは,つぎの4点です。

@ アウトリガー最大張出で必ずピンでロックする。
A アウトリガー設置地盤は,十分な強度と面積を備えた敷き板等で養生する。
B 必ず空車時定格総荷重(空車時定格荷重)の範囲内で安全な速度で作業する。
C 特に荷降ろし作業では,作業領域による安定度と,荷台の積荷が減ることによる安定モーメントの減少を考えて作業する。


((株)タダノ 大西則夫)


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