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腰痛から自分のからだを守る
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1.なくならない職場の腰痛
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 腰痛は,職場でなかなか減らない疾病の一つです。
統計からも,長年にわたって業務上疾病者の半数以上が腰痛を理由に休業していることが分かります。みなさんの中でも,病院に行くほどではなかったけれど,今までに腰の痛みを感じたことがあるという人は多いのではないでしょうか。
  一旦腰が痛くなってしまうと,仕事だけでなく,日常生活でもからだを動かすのが億劫になり,大変辛い思いをすることになります。手足のけがであれば(もちろんけがが無いのが一番よいのですが),けがをしたところを使わないようにしたりもう一方の手足で動きを補ったりすることができますが,腰の場合はそうもいきません。体重を移動させる動きのほとんどは腰の筋肉を使うので,その都度腰の痛みを感じてしまうか,痛みを気にするあまり動きが緩慢になってしまい,普段の生活に大きな支障を来たします。
  ですから,腰痛は未然に防ぐことがとても重要なのです。普段から腰に負担のかかる作業姿勢にならないように注意し,腰に疲れをためないように気をつけることで,十分予防が可能です。これからご紹介する腰痛予防のポイントで,自分のからだをじっくり見直してみましょう。

 


2.物を持つ・運ぶときの動作に注意する
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 重い物を持ったり運んだりするときは,腰に負担がかかるので動作に気をつけなければなりません。ただ,扱う物の重さ・軽さで動作を変えるのではなく,普段から腰に負担の少ないからだの動かし方を心がけましょう。腰にやさしい動きのクセをつけることで,腰痛のリスクを減らすことができます。次のように「何を持つか」よりも「どのようにからだを動かすか」という視点で確認してみましょう。

(1)物を持ち上げるときはひざを曲げてからだを物に近づけてから
 
  床に置いてある物は,つい立ったままかがんで持ち上げようとしてしまいますが,これは腰への負担が大きく危険な動作です。ひざを曲げて十分に物に近づき,お腹に力を入れながらひざを伸ばして立ち上がります。物を持っているときも,なるべくからだに引きつけて持つことが大切です。

(2)方向転換は腰をひねらずからだごと向きを変えて
 
物を持ったまま腰をひねることも,腰に負担の大きい動作です。方向を変えるときは面倒がらずに,足も動かしてからだごと向きを変えるようにします。


(3)高い所・狭い所での不自然な姿勢に注意
 
  自分の身長より高い所で物を扱うときや狭いスペースで物を運ぶときには,一時的に腰を反らせたりねじったりするような不自然な姿勢になりがちです。なるべく安定した姿勢で作業ができるようにするため,必要に応じて台を用意する,周囲を片付けて十分なスペースを確保してから物を運ぶなどの対策をとりましょう。
  また,足元が滑りやすく不安定であるとか照明が暗くて周りが見えにくいなどの作業環境も,からだに余計な緊張を与え腰にも負担をかける原因となります。このように,腰にやさしい姿勢や動作を妨げる原因を見つけることも,腰痛を予防するためには重要です。


   

 


3.同じ姿勢でじっとしていても腰は疲れる
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 仕事上あまり動くことがなく,長時間立ったまま,あるいは一日中座っているという人も少なくないでしょう。腰への負担を軽くするためには,立っている人は背筋を伸ばしてお腹を軽く引きしめる,座っている人はいすに深くかけて背筋を伸ばすというように,よい姿勢を維持することが基本となります。
  しかし,どんなによい姿勢を維持していても,ある程度時間が経つと誰でも疲れを感じます。なぜなら,見た目には動いていなくても,からだを支えるために腰の筋肉が少しずつ使われていて疲労するからです。人間のからだには重力が働いているので,それに対抗して姿勢を保つために筋力が静かに発揮されています。疲れた筋肉は硬くなって,血流も悪くなります。それが腰のだるさや痛みとなって症状に現れるのです。
  これを解消するには,体操やストレッチングで意識的に腰まわりの筋肉を動かすことが必要です。運動を行うことで疲れた筋肉の柔軟性を取り戻し,血流を回復させることができます。次はその運動の方法を具体的に見ていきましょう。

 


4.腰の疲れをとる運動
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 物の持ち運びなどでからだをよく動かす人だけでなく,同じ姿勢が長時間続く人も,腰に疲れを感じたときには運動で筋肉をほぐしましょう。この場合は硬くなった腰の筋肉をゆるめることが目的なので,運動も力を入れるのではなく,からだをゆらしたり筋肉を伸ばしたりしてリラックスするものを行います。大きくゆったりと呼吸しながら,休憩時間などにやってみましょう。(※腰に強い痛みがある人や腰痛治療中の人は,運動前に医師に相談しましょう。)

(1)背伸び
  足を肩幅に開いて立ち,かかとを床につけたまま両手を組んで上に伸びます。背中が丸くなったり,逆に反ったりしないようにまっすぐ伸ばすのがポイントです。腰から背中,からだの側面が伸びていく感じを味わいましょう。


(2)しゃがみ
  足を少し開き,なるべくかかとを床につけたまましゃがみ込みます。かかとが浮いて姿勢が不安定な場合は,手を床や壁についても構いません。自分のへそをのぞくようにしてからだを丸くすると,腰やお尻の筋肉が伸ばされるのが分かります。
  背伸びやしゃがみのように,はずみをつけずに筋肉をじわじわ伸ばす運動をストレッチングといいます。呼吸を止めないように気をつけながら,筋肉を伸ばす姿勢を10〜30秒間保持することで,硬くなった筋肉がほぐれ血流が回復し,疲労感を和らげてくれます。ただ,痛みを感じるところまで無理に伸ばすと,筋肉は縮んでしまいかえって逆効果となるので気をつけましょう。

(3)反動を使ってからだを左右にひねる
 
  足を肩幅に開いて立ち,膝を軽く曲げて上体をまっすぐにしてから,肩・腕の力をゆるめて両腕がからだに巻きつくように左右にひねる運動を繰り返します。30秒〜1分程度続けましょう。
 ひねる動作は,物を持ったり運んだりしているときは腰痛のリスクが高くなりますが,腰の疲れをとる目的で行うときは,筋肉が心地よく伸びているのが感じられる動作です。「作業中はからだをひねらない」「リラックスするときはゆったりひねる」という風にきちんと使い分けましょう。

 


5.疲れにくく安定した腰をつくる運動
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 腰痛予防のための運動にはもう一つ,加齢とともに落ちてしまう筋力を維持して,疲れにくい筋肉をつくることと,腰まわりを筋肉でガードして安定させるためのものがあります。この場合には,いわゆる筋力トレーニングと同じく筋肉に負荷が加わるので,少々きつく感じられる運動だと言えます。しかし,筋肉は刺激が無く使われないとやせてしまいます。細い筋肉だとすぐに疲労を感じてしまうだけでなく,腹筋や背筋の筋力バランスが崩れることによって起きる腰痛もあります。運動自体は,重りを持って行うのではなく,自分の体重を負荷にしてできるので安全ですから,疲労をとるための運動とあわせて,このような筋肉に力を入れる運動で安定した腰まわりをつくりましょう(※4と同様に,腰に強い痛みがある人や腰痛治療中の人は,運動前に医師に相談しましょう。)


(1)膝の曲げ伸ばし:下半身強化
 
  足を肩幅に開き,両手を頭に置いて,背中を丸めないようにしながら膝を曲げ伸ばしします。膝は最後まで曲げずに90度くらいになったら伸ばします。自分の後ろにいすが置いてあって,そこに座るようなイメージでやってみましょう。
  この運動は下半身の筋肉を強化できるほか,上半身の筋肉にも適度な緊張が加わるので,作業前にからだを目覚めさせるための体操としてもおすすめです。最初は10回を目安にやってみましょう。

(2)へそのぞき:腹筋の補強
 
  仰向けになり,両膝を90度に曲げて足は腰幅に開きます。両手を耳の横にそえて,へそをのぞくようにゆっくり上体を起こします。肩甲骨が床から離れるところまで起こしたら,その姿勢を10秒維持して元に戻します。この動きをまずは10回を目安に繰り返してみましょう。

(3)手足交互上げ:背筋の補強
 
  うつ伏せになり両腕を前に伸ばした姿勢から,右腕と左足を同時に上げて下ろします。次に左腕と右足を上げて下ろします。この交互に上げ下げする動作を10回繰り返します。
  腕と足は高く上げて腰が反りすぎないように,床から離す程度で構いません。からだのバランスをとりながら,ゆっくり行いましょう。
  このような筋肉に負荷を与える運動をすると,力んでしまって呼吸が止まりがちになるので注意が必要です。上体を起こすとき,手足を上げるときには意識して息を吐くようにしましょう。
  それから,腹筋と背筋は腰の前後で背骨や上体を支えている筋肉です。ここの筋力のバランスが崩れると,これも腰痛の原因になってしまうので,へそのぞきと手足交互上げはどちらか一方の運動を重点的に行うのではなく,なるべく両方行って筋力のバランスを崩さないようにしましょう。

 


6.目指すのは「コシがある」からだ
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  その他の腰痛を防ぐための心がけとしては,入浴や十分な睡眠で疲れを残さないとか,規則正しい食事をする,適正体重を維持する,さらにはストレスをためないようにするなど,日常の健康管理についても欠かせません。要するに,普段から腰の調子を整えておくことが重要で,その時々で調子をきちんと確認でき,不調であれば対処ができるようなコンディショニング能力を身につけることが大事です。
  ところで,うどんなどの.類に歯ごたえがあっておいしい様子を「コシがある」と言いますが,この言葉がよい腰の状態を理解するヒントになると思います。「コシがある」という言葉には,しっかりしているけれども柔らかいという相反する意味合いが含まれています。いくら筋肉ががっちりしていても,柔軟性が低ければ腰痛のリスクは高くなりますし,反対に柔らかさだけあっても同じです。力強さとしなやかさ,両方の要素を満たして初めて腰の調子がよいと言えるでしょう。
  日本語には腰を使った慣用句が多く,からだだけでなく物事の中心・かなめを表す言葉として広く用いられています。腰痛予防の取り組みも決して「及び腰」ではなく,みなさんには「腰をすえて」じっくり取り組んでいただきたいと思います。


(中央労働災害防止協会 内山信二)


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