spacer.gif
工事用エレベーター災害と安全ポイント
spacer.gif  
1.はじめに
spacer.gif spacer.gif


 建築物の高層化や施工期間の短縮などから,最近の工事用エレベーターは大型化・高速化を求められ,また,施行方法の多様化より種類や型式・制御方法なども多くの種類が増えてきました。これらの事により,工事用エレベーターの定期点検や組立・解体に専門知識がよりいっそう必要となりつつあります。
  そこで,工事用エレベーターの災害を減らす為に,定期自主検査(定期点検)や組立・解体時の安全のポイントをまとめます。

 


2.定期自主検査
spacer.gif spacer.gif


 エレベーターの定期自主検査に対して,平成10年に「エレベーターの定期自主検査指針(クレーン等安全規則第155条の自主検査に係るもの)の公表について」が,基発第144号通達としてだされています。通達を基に点検表を作成し点検を行っていることと思いますが,改めて検査のポイントを紹介いたします。

2.1 定期自主検査時の安全心得
  定期自主検査を行う際は,安全第一で行動することが求められます。
1) 作業前準備

  • 適正な保護具,検査工具または検査治具などの準備を行ってください。
  • 機種によっては,専用工具が必要となる場合などもありますので事前に確認してください。
  • 朝礼や注意看板で周知の徹底を図り,作業関係者以外は立ち入らないようにしてください。
2) 搬器上での点検
  • 建屋やガイドレールとの接触に十分に注意し検査を行ってください。
  • カウンタウエイト有の場合は昇降行程の途中で交差しますので,特に注意して下さい。
  • 駆動部や回転部の点検の際は,手足や被服の挟まれに注意しながら作動させてください。
3) 電気装置の点検
  • 電気装置の動作検査時や,やむを得ない場合以外は電源ブレーカを遮断し検査してください。
  • 最近の機種には,制御装置として電子機器が使用されている場合が多くあります,これらに高電圧を掛けると破損につながる恐れがあるので十分に注意してください。
4) ピット内での点検
  • ピット内で検査を行う際は,十分な安全措置を施しエレベーターが動作しないことを確認してから検査してください。

2.2 日常点検
  日常点検は,エレベーターのオペレータや機械担当者の方などが主に行う点検となります。
  日常点検は始業前点検とも呼ばれるように,始業前の短時間で行うことを要求されていますので,容易に実施できるような内容となっており,点検表(資料1)も同様に簡便なものが多く採用されています。
  この点検のポイントは,日々エレベーターを使用している方が検査することにより,異音・異常振動及び異臭などが早期に発見でき,重度な故障や重大災害が発生する前に対処することが出来ることです。

指針による検査項目,検査方法及び判定基準検項目
検査項目 検査方法 判定基準
1安全
 装置
(1)ファイナルリミ
  ットスイッチ
@作動状態を調べる
A取付け部の緩みの有無を調べる
@正常に作動すること
A緩みがないこと
(2)非常止め @取付け部の緩みの有無を調べる
A腐食の有無を調べる
@緩みがないこと
A腐食が無いこと
(3)ドアーインター
  ロックスイッチ
各階に停止させ,作動状態を調べる 正常に作動すること
2ブレーキ @作動状態を調べる
A異常音,異常振動及び異臭の有無を調べる
@スリップ等がなく,正常に作動すること
A異常音,異常振動又は異臭がないこと
3制御
 装置
(1)受電盤及び
  制御盤
@異常音及び異臭の有無を調べる
A取付け部の緩みの有無を調べる
@異常音又は異臭がないこと
A緩みがないこと
(2)調速機 異常音及び異常振動の有無を調べる 異常音又は異常振動がないこと
(3)操作盤 各ボタン又は各スイッチの取付け状態及び作動状態を調べる 正常に作動し,損傷がないこと
4ワイヤロープ 素線切れ,磨耗,キンク,形崩れ及び腐食の有無を調べる @ワイヤロープ1よりの間において素線(フィラ線を除く)の数の10%以上の素線が切断していないこと
A直径の減少が公称径の7%をこえていないこと
Bキンクがないこと
C著しい形崩れ又は腐食がないこと
5ガイドレール @ガイドレールの取付け部の緩み及び損傷の有無を調べる
A給油状態を調べる
@緩み又は著しい損傷がないこと
A給油状態が適性であること

 

2.3 月例点検
  月例点検を行うには,エレベーターに対する十分な知識が必要となり,現在ではメーカーのメンテナンス員や点検作業を専門で代行している業者などが行っています。
  この点検は,エレベーターの状態を最良に保ち事故や故障が発生しないようエレベーターの細部まで点検を行っています。
  なお,点検を行うに際は月例点検表(資料2)だけでなく,点検マニュアルや整備基準書なども必要となり,機種によっては専用工具も必要となります。
  また,月例点検では制御盤内の点検等も行いますが,その際に制御装置として組み込まれているINVやPLC などにメガテスターなどの高電圧が流れ込むことによって,破損につながる恐れがあります。
  このようなことから,月例点検はメーカーの教育を受けた,メーカー推奨の点検員が点検を行うことが望ましいです。

2.4 定期点検を行う目的
  定期点検は,エレベーターが納入時と同じ性能を維持することを目的として実施されています。
  その為には,定期点検を確実に実施し,故障箇所を発見するためだけの点検ではなく,故障を未然に防ぐ点検を行うよう努力しております。
  これらは工事の工程に支障を出さず安全に搬送作業が行えることに繋がっていきます。

 


3.組立・解体
   

 工事用エレベーターの組立・解体作業に対して,「工事用エレベーター組立・解体等作業指揮者に対する安全教育について」が平成18年3月22日,基安発第0322004号通達としてだされています。この通達は多種・多様化してきた工事用エレベーターの組立・解体を的確な指揮のもと,安全に作業できる環境を整えるために出されました。

3.1 組立・解体作業を行う場合の作業組織と指揮系統
  工事用エレベーターの組立・解体作業を行う場合は,クレーン等安全規則第153条に定められているとおり作業指揮者(安衛則第529条)を選任し,その指揮の下に作業を行わなければなりません。この場合の作業組織と指揮系統は図1のようになります。

 

3.2 組立・解体作業の事前準備と作業手順
  工事用エレベーターの組立・解体作業の作業手順を作成する際は,工事現場の状況や工事規模などに
より様々に変化する条件が多く,元請業者が作成した工事計画だけでは安全を確保するのは難しいです。
  そこで,工事現場の元請業者の組立(解体・クライミング)担当者は,当該作業の安全を確保するために,事前にエレベーター貸与者(メーカー・リースレンタル会社・機材センター等)の担当者,組立(解体・クライミング)作業指揮者,クレーンオペレータ等と綿密な打合せを行う必要があります。その打合せ内容と工事計画をもとに,現場の状況に即した作業手順を作業指揮者の方がまとめていきます。

手順 内容

1 作業条件をつかむ
  • 作業場所の状況,環境の有害性など
  • 作業員の能力,資格など
  • 設備,機械の配置および能力など
  • 元方事業者(元請)の作業計画,関係請負人(協力会社)の作業標準等を参考にする。
2 作業順序を組み立てる
  • 把握した作業条件により,作業の順序を組み立てる。
    @作業の大枠をきめる(まとまり作業という)。
    • 作業手順(書)を作成する範囲をきめる(その作業の始まりと終わりを明確にする)。
    • 仕事の区切りを良く考える(行程のあるポイントからあるポイントまで)。
    Aその作業の流れをきめる(要素作業という)。
    B要素作業ごとに作業内容を主な手順に分解し,各手順を最も合理的な順序に並べる。
3 安全のポイントを決める
  • 作業の順序に合わせ,安全のポイントをきめる。
  • 手順ごとに作業の「急所」を定め,記入する。
    • 仕事の「できばえ」がよくなる(成否)
    • 仕事の「安全」が確保できる(安全)
    • 仕事の「能率」が上がる(やりやすく)
      のようなことを記入する。

    ※急所を定める際の留意点
  • だれが読んでも同じ行動ができるように。
  • 「否定的表現」(〜しない)は避け,「前向きの表現」(〜して)で。
    (過去の災害事例の活用,危険予知活動など)
4 作業員の意見を聞く
  • 安全ミューティングで作業員の意見を取り入れる。
  • 「作業手順(書)にまとめる。
5 実施 現場での実施状況等を反省し,次の作業に生かすため,作業手順書をそのつど見直し,改善する。

 
3.3 参考となる作業手順書の例

  下記に,工事用エレベーターメーカーが作成した,組立手順書を記載します。

 この作業手順書では,工事現場の状況を考慮できておらず,実際の作業手順としては補足が必要となることが分かっていただけると思います。作業手順は,あれば良いという物ではないので必ず現場の状況に合わせた物へと見直しを掛けるようお願いいたします。

 


4.おわりに
spacer.gif spacer.gif

 本稿では,「工事用エレベーター災害と安全のポイント」として,定期自主検査と組立(解体・クライミング)に対して述べさせていただきました。
  安全のポイントは,実際に働く人が作業を安全に進めるための作業手順によって作業の担当,役割等について周知徹底させ,危険予知活動や作業前ミーティングを行って作業を実施することが大切です。また,作業中の作業指揮者は,直接作業を指揮し,作業の実施状況を確認しながら作業を進めることが安全に繋がります。
 

((株)コシハラ技術本部 東京技術部 渡辺康之)


spacer.gif
[このページの先頭] [ホーム]