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積載形トラッククレーンの安全運転のポイント
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1.積載形トラッククレーンによる災害状況
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 平成20年度の移動式クレーンによる死亡災害は41名で,そのうちの11名が積載形トラッククレーンを使用して発生したものです(表1参照)。
  過去5年間の移動式クレーンの死亡災害要因を分析すると,機体・構造部分の折損・倒壊・転倒に起因するものは,積載形トラッククレーン39名に対して,それ以外は15名となっており,他の移動式クレーンと比べて目立って多く,積載形トラッククレーンの死亡災害要因の44%に達しています(表2参照)。
  これは,つり上げ荷重3トン以上の移動式クレーンには過負荷防止装置の取り付けが義務付けられていますが,積載形トラッククレーンのほとんどがつり上げ荷重3トン未満であり,この規制の対象外であること,また,積載形トラッククレーン特有の性能特性が人為的なミスにつながりやすいことが要因であると考えられます。

移動式クレーンの死亡災害要因の中でも、積載形トラッククレーンの
「機体・構造部分の折損・倒壊・転倒」によるものが最も多い

表1 移動式クレーン及び積載形トラッククレーンの死亡災害発生件数の推移と比率
  16年 17年 18年 19年 20年 合計
 @移動式クレーン 63 47 45 47 41 243
 A積載形トラッククレーン 21 21 12 23 11 88
 A/@ 33% 45% 27% 49% 27% 36%
 
表2 過去5年間の積載形トラッククレーンの死亡災害要因
  16年 17年 18年 19年 20年 合計 割合
 落下
5 3 4 5 4 21 24%
 つり荷,つり具の激突 0 0 0 1 0 1 1%
 挟圧 2 3 6 5 1 17 19%
 墜落 1 2 0 4 1 8 9%
 機体の折損・倒壊・転倒 13 12 2 8 4 39 44%
 感電 0 1 0 0 0 1 1%
 その他 0 0 0 0 1 1 1%
 合計 21 21 12 23 11 88 100%

 


2.積載形トラッククレーン特有の性能特性
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 積載形トラッククレーンはつり上げ専用の移動式クレーンとは異なり,トラックに架装されたクレーンであり,荷物を運び,荷物を積み降ろしする機能を備えていることにより,以下の二つの性能特性があります。
 
(1)旋回方向による安定度の変動
 
  旋回中心と転倒支点間距離が旋回方向により大きく異なるため,後方・側方・前方の作業領域で安定度に極端に差がでます(図1参照)。
 
     
(2)荷台の積載による安全度の変動
 
  同一旋回方向でも,荷台の積荷の質量・位置により安定度に差がでます。また,荷物の積み降ろしにより自重が変化し,安定度も変化します(図2参照)。
 

 


3.転倒事故防止について
     
 転倒事故を防止するポイントをまとめると,次のようなことが挙げられます。
<転倒事故を防止するポイント>
@ アウトリガーは最大に張り出す。
A アウトリガーの設置地盤は養生する。
B 旋回時には作業領域に注意する。
C 荷物を降ろすときは車体の安定度に注意する。

 


4.アウトリガーは最大に張り出す
     
 積載形トラッククレーンの性能は,アウトリガーの張り出し幅によって変化します。最小張り出しの性能は,最大張り出しに比べて大幅に低下します(表3)。さらに,張り出し幅が狭くなるほど転倒に至るまでの余裕が少なくなりますので,注意が必要です。これらのことからアウトリガーは最大に張り出すことが原則です。
 
表3 空車時定格総荷重表(例)
3. 27m/5.5m (側方・後方領域)
作業半径(m) 2.6 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.3
@アウトリガー最大張出 2.93 2.18 1.58 1.25 1.05 0.90 0.83
Aアウトリガー最小張出 1.18 0.93 0.73 0.58 0.48 0.43 0.38
A/@ 40% 43% 46% 46% 46% 48% 46%
 

(1)アウトリガーは最大に張り出す。
  アウトリガーは常に最大に張り出してください。やむを得ず最小張出または中間張出で作業する場合には,「空車時定格総荷重表」の最小張出の性能で作業してください。

(2)アウトリガー張出幅が左右で異なるときは,最小張出の性能で作業する。
  やむを得ず左右の張出幅が異なるアウトリガー設置状態にしたとき,必ず最小張出の性能で作業してください。アウトリガー張出幅の大きい領域でつり上げ,張出幅の小さい領域に不用意に旋回すると転倒する恐れがあります。張出幅の小さい領域へ旋回するときは,つり荷の質量がアウトリガー最小張出の「空車時定格総荷重」以下であることを確認した上で作業を行ってください。

 


5.アウトリガーの設置地盤は養生する
   


  安全な作業を行うためには,車体とつり荷を十分支持することができる堅い地盤の上にアウトリガーを設置することが必要です。軟らかい地盤の上にアウトリガーを設置すると,ジャッキフロートが地中に沈んで車体が傾き,最悪の場合,転倒します。また,一見して堅そうな地盤でも,内部の状態によっては車体を支える力が不足する場合があります。次のような地盤に対しては十分注意を払い,地盤の養生を行ってください。

(1)簡易舗装の路面
(2)歩道等の敷石路面
(3)埋め立て地等

<地盤の養生>
  軟弱地などの車体とつり荷を支える力が不足する場所にアウトリガーを設置する場合,下記の処置を行って地盤を養生してください。
@ 傾斜地及び凹凸のある場所は,水平に設置できるように地盤を整地する。
A 地盤にかかる力を分散させるため,地盤の状態に見合った大きな面積と十分な強度のある鉄板や木材を敷き,その中央にジャッキフロートを設置する。

 


6.旋回時には作業領域に注意する
     
 積載形トラッククレーンの作業領域は下図のようになります。旋回中心と転倒支点間距離が旋回方向により大きく異なるため,後方・側方・前方の作業領域で安全度に極端に差がでます。この積載形トラッククレーンの特性をよく理解して作業を行うことが必要です。後方領域は最も安定度が良く,安定度に関係なくウインチ能力一杯の荷物をつり上げることができます。このため,後方領域で荷物をつり上げ,側方領域へ旋回するときには安定度の変化に注意しなければなりません(図3参照)。
   

 


7.荷物を降ろすときは車体の安定度に注意する
     
 車体の安定度は荷台に荷物を積載しているときと積載していないときでは大きく異なります。積荷が減るにしたがって安定度は悪くなりますので,荷台から荷物を降ろすときには特に注意が必要です。

(1)

たくさんの積荷を順番に降ろすときは,作業半径が順次小さくなるように,荷台後方の積荷から降ろす。

(2)

後方領域から側方領域へ旋回するときは,つり荷が荷台から外へ出たら,万一バランスを崩しても,転倒する前につり荷が先に接地する安全な高さまで荷物を降ろしてから旋回する。

(3)

側方領域での作業は,後方領域よりも安定度が悪くなります。後方領域から側方領域へ旋回するときは安定度を確認しながらゆっくりと旋回する。

 


8.安全装置について
     
 積載形トラッククレーンは,市販のトラックの運転席と荷台の間に架装されるものがほとんどです。したがって,専用の台車に架装される他の移動式クレーンとは性格が異なります。
  @ 後方・側方・前方の作業領域で安全度に極端な差がでる。
  A 荷物の積み降ろしにより,自重が変化し,安定度も変化する。

  この特有の性能特性により,人為的なミスにつながりやすくなっています。人為的なミスを防止するためには,安全装置は効果的です。日本クレーン協会規格JCAS2207-2005「積載形トラッククレーンの過負荷制限装置規格(その2)」について紹介します。
  本システムは.旋回方向による安全度の変動及び(2)荷台の積載による安全度の変動を考慮した「使い勝手」を重視し,かつ,積載形トラッククレーンの災害の典型である転倒災害を確実に防止するものです。クレーンの強度と安定度の両方を監視して,いずれか一方が限界に達する前に警報を行い,クレーンの破損と転倒を未然に防止します。安定度に関しては,ジャッキ接地反力を監視しています。これは,機体が転倒の状態に近づくにつれて,反転倒側のジャッキ接地反力が減少することを利用しており,旋回方向や荷台の積載状態による自重変化によって刻々と変化する安定度を常に把握することができます。

 


9.おわりに
     
 積載形トラッククレーンは「吊る,積む,運ぶ,作業する」といった一連の作業を一台で行うことができるため,さまざまな業種で幅広い用途に便利に使用されています。一方では,積載形トラッククレーン特有の性能特性が人為的なミスにつながり,重大な災害を発生させています。人為的なミスには安全装置は効果的ですが,運転される方が基本事項を守らなければ事故は防げません。積載形トラッククレーンの特性を理解して安全運転を行ってください。

 

((株)タダノ LE開発第二部 小型開発ユニット 秋田真壮)


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