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移動式クレーンの安全な道路通行のために
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1.移動式クレーンの道路通行上の危険性
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 道路を走行する移動式クレーンは,台数の多い順に次の3種類に集約されています(写真1)。
 @積載形トラッククレーン
 Aラフテレーンクレーン(ホイールクレーン)
 Bオールテレーンクレーン(クレーン用台車)

 これらは自動車として道路走行上のリールを守らなければなりません。
 特に,Aラフテレーンクレーンはその約70%,Bオールテレーンクレーンはその全てが,安全性確保や道路保全,交通の危険防止のために法令で定められた重量や寸法の制限を超える車両です。そこで,クレーンは特殊な使用形態,使用目的をもつ車両として,条件を付された上で,特例として道路通行を認めてもらっています。

 法令の基準,制限を超える車両ですから,道路を走行するときは,より厳しい安全走行が求められます。この度,安全な道路通行を目的に道路運送車両法と道路法の規制を中心にまとめました。


2.道路運送車両法による保安基準の緩和の認定
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 道路運送車両に関し,安全性の確保及び公害の防止その他の環境の保全を図ることなどを目的とした法律「道路運送車両法」に基づく省令「道路運送車両の保安基準」によって,車両の重量,寸法の基準が定められています(表1,図1)。
 
表1 道路運送車両の主な重量,寸法の基準
車両の諸元 基準(超えてはならない値)
長さ 12m
2.5m
高さ 3.8m
車両総重量 20t(車両の長さ及び最遠軸距に応じ,20t,22t,25t)
軸重 10t
隣接軸重
隣り合う車軸の軸距が1.8m未満は18t
(ただし,隣り合う車軸の軸距が1.3m以上,かつ隣り合う車軸の軸重がいずれも9.5t以下のときは19t)
隣り合う車軸の軸拒が1.8m以上のときは20t
輪荷重 5t
最小回転半径 12m
接地圧 200kg/タイヤ接地部の幅1cm

 

 道路運送車両の保安基準を超える車両は,同基準第55条の規定に基づき,地方運輸局長に保安基準緩和の申請を行い,構造もしくは使用の形態が特殊であることにより,保安上及び公害防止上支障がないと認定を受けた上で,自動車登録をして運行することができます。
 メーカーや型式によって異なりますが,つり上げ荷重16t〜20t以上のラフテレーンクレーン,オールテレーンクレーン(クレーン用台車)は通常,保安基準の緩和の認定が必要です。
 基準緩和申請には個別緩和申請と一括緩和申請があります。オールテレーンクレーン(クレーン用台車)は自動車の使用者が個別緩和申請を行います。新型届出自動車であり,かつ寸法・重量が一定の基準内であるラフテレーンクレーンは,自動車製作者等が一括して一括緩和申請を行えます。
 基準緩和された自動車には,認定の条件,制限が付きます。現行のつり上げ荷重25tのラフテレーンクレーンでは,次の条件,制限が付されています。
@  自動車の後面及び運転席に緩和された寸法(幅等),重量(車両総重量,軸重,輪荷重,隣接軸重),接地圧を表示すること(写真2
A  運行記録計を備え,運行状況の記録をすること。緩和認定の必要なクレーンは,製品カタログや製品仕様書に,「道路運送車両の保安基準の緩和の認定が必要です。」と注記されています。




3.道路法による通行許可
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 道路法では,車両で,車両制限令で定める重量,寸法の最高限度を超えるものは道路を通行させてはならない,と規定しています。
 実際の社会・経済活動に伴い,車両の使用目的,車両に積載する貨物の特殊性から,やむをえず,最高限度を超える車両を通行させる必要性が生じることがあります。
 そこで,同法では,車両の構造等を審査し,必要上やむを得ないと道路管理者が認める場合に限って,必要な条件を付して,最高限度を超える車両の通行を許可することができる,とされ,殊車両通行許可制度」によって運用されています。
 メーカーや型式によって異なりますが,つり上げ荷重20t〜25t以上のラフテレーンクレーン,オールテレーンクレーン(クレーン用台車)は,特殊車両として,道路管理者に通行許可を申請して許可を受け,付された通行条件に従って道路を通行することができることになります。
 通行許可の必要なクレーンは,製品カタログや製品仕様書に,「道路法による特殊車両の通行許可が必要です。」と注記されています。

 

3.1 車両制限令による制限値

 車両制限令で,幅,高さ,長さ,重量及び最小回転半径の最高限度,つまり一般的制限値が規定されています。
  一般的制限値は,表1の道路運送車両の保安基準と基本的に同様ですが,接地圧の規定はありません。

 

3.2 特殊車両の通行許可申請

 最高限度(一般的制限値),個別的制限値を超えるクレーンは特殊車両通行許可制度に従って,(図2)。

 道路管理者への通行許可申請は,従前からの書面申請によるほか,国土交通省道路局ウェブサイトの「特殊車両システム」とインターネットを利用して,申請データを作成して窓口にデータで申請したり,オンラインで申請したりすることもできます(図3)。

 通行許可は,国土交通省特殊車両システムに申請経路と車両諸元を入力して得られる算定結果に基づいて行われます。
 通行条件も,同システムの算定結果に基づき,道路の構造の保全又は交通の危険を防止する目的で付されます。
 通行条件の区分と内容については表2,図4を参照してください。

表2通行条件の区分と内容(通行時間帯指定基準含む)
区分 内容 通行時間帯の指定基準
重量に関する条件 寸法に関する条件
A 徐行等の特別の条件を付さない。 徐行等の特別の条件を付さ
ない
 
B 徐行および連行禁止を条件とする。 徐行を条件とする。  
C 徐行,連行禁止および当該車両の前後に誘導車を配置することを条件とする。 徐行および当該車両の前後に誘導車を配置することを条件とする。 寸法の幅に関して通行条件区分Cとなり,かつ幅が3mを超える車両は原則,夜間(21時〜6時)通行が指定される。
D 徐行,連行禁止および当該車両の前後に誘導車を配置し,かつ,2車線内に他車が通行しない状態で当該車両が通行することを条件とする。道路管理者が別途指示する場合は,その条件も付加する。   重量に関して通行条件区分Dとなる車両は原則,夜間(21時〜6時)通行が指定される。

 

3.3 特殊車両の指導・取締り

(1) 指導・取締り方法
 これまで指導取締基地における指導・取締りが定期的に実施されてきました。これに加え,全国に設置された車両重量自動計測装置の活用による,違反常習者への指導・取締りが強化されています(写真3)。

 

(2) 違反車両に対する指導・取締りの流れ
 違反車両に対して取締調書が作成され,違反の程度が軽微であり,措置命令処分を行う必要がないと認められる場合は指導警告が行われます。指導警告以外の場合は,クレーン部取外し,条件適合,通行中止等の措置命令が出されます。
 違反通行で重大事故等を発生させたり,道路管理者の命令に違反したり,常習として違反通行したときは許可を取消し,道路管理者からの告発に至る流れになっています(図5)。

 

(3) 罰則
 道路法では特殊車両通行許可制度に対して罰則が規定されています(表3)。

表3特殊車両通行許可制度に対する道路法の罰則
違反事由 罰則
一般的制限違反
(許可を受けずに走行,条件違反)
100万円以下の罰金
措置命
令違反
一般制限違反 6月以下の懲役又は
30万円以下の罰金
橋梁等の制限違反 100万円以下の罰金
幅の個別制限違反 50万円以下の罰金
橋梁等の制限違反 6月以下の懲役又は
30万円以下の罰金
許可証不携帯 100万円以下の罰金
法人両罰 各条の罰則
注: 一般的制限違反と橋梁等の制限違反には,条件違反を含む。


 

3.4 移動式クレーンの通行許可の現状

(1) ラフテレーンクレーン
 つり上げ荷重20〜25t以上のラフテレーンクレーンは一般的制限値を超えるため,通行経路ごとに特殊車両の通行許可の取得が必要です。
 ラフテレーンクレーンの場合は分解しない全装備走行姿勢で通行許可を取得できますが,付された通行条件(A,B,C,D)にしたがい,徐行,連行禁止,前後の誘導車の配置,通行時間帯などを守って通行しなければなりません。
 申請経路,クレーン型式によって通行条件は異なりますが,つり上げ荷重25tクラスでは前後の誘導車の配置が必要な通行条件C,つり上げ荷重50t〜60tクラスは軸重を軽減した4軸車が開発されましたが,それでも夜間の通行時間帯指定等が加わる通行条件Dで許可が出るケースが多いのが現状です。
 クレーンの作業料金以外に,前後の誘導車の配置,夜間通行のための費用が発生することになります。

(2)オールテレーンクレーンの通行許可
オールテレーンクレーンはつり上げ荷重100tクラス以上の超大型車両がほとんどです。全装備状態では車両総重量が約60t以上となり,道路法,道路運送車両法の規定から道路通行は認められません。上部クレーン部(旋回体,ブーム等)を取外したクレーン用台車として自走し,上部クレーン部はトレーラ等で別搬送すること必要となります。作業現場に搬入して組立て,クレーン作業が終われば分解して搬出することが前提になります(図6)。

オールテレーンクレーンが全装備で通行することは違法であり,橋梁等の道路を損傷させる原因になります。特にルールの厳守が求められます(図7)。

 

 また,分解しても一般的制限値を超えるため,クレーン用台車,クレーン部搬送用トレーラについて,通行経路ごとに特殊車両の通行許可の取得が必要です。
 近年,軽量化技術によって,ブーム部だけを取外して旋回台付きクレーン用台車の形で,通行できる機種も開発されていますが(写真4),いずれにしてもクレーン作業料金のほか,分解組立,搬送の費用,また,通行条件によっては前後の誘導車の配置,夜間通行のための費用が発生します。

(3)新規開発車両証明制度による適合証明書
 新規開発車両の設計製作をしようとする者が,新規開発車両設計製作届出書を提出した場合,設計製作に関する基準に適合し,かつ重量について基本通行条件の範囲内にあれば,国土交通省道路局長から,重量,高さ又は長さにかかる基本通行条件(A,B,C,D)を記載した新規開発車両設計製作基準適合証明書(適合証明書)が交付されます。適合証明書の写しはクレーンメーカーからユーザーに提出し,通行許可申請時に参考資料として添付されています。
 実際の許可で付される通行条件は国交省特殊車両システムの算定に基づきますので,適合証明書の基本通行条件より厳しいケースが多くなっています。


4.まとめ
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 東日本大震災によって被災した道路の復旧は幹線道路から順次,迅速に進められました。道路は避難される方が使用したり,救援物資を緊急輸送する,人の移動や物流の動脈であり,みんなの財産であることが再認識されたのではないでしょうか。
 法令の制限や基準を超える移動式クレーンの通行は,一般の車両より道路に負担を掛け,他の交通の妨げになりがちです。道路通行のルールを守ることによって,道路を破損したり,事故を起したりすることのないようにしたいものです。
 クレーンメーカーとしては,ユーザーにルールを順守した通行の一層の徹底をお願いしています。また,車両の軽量化や軸重軽減などによって,道路に負担をかけない,つまり,通行条件ができるだけ付されない,また通行許可を取得しやすい移動式クレーンの開発を重点課題としております。
 一方,クレーン作業を発注する元請施工会社へは,通行許可取得に要する期間を考慮した発注をお願いします。また,前後の誘導車の配置や夜間の通行時間帯指定にかかる費用,オールテレーンクレーンの組立,分解,搬送にかかる費用について,一層の適切な発注をお願いします。

 

参考文献
道路交通管理研究会:最新車両制限令実務の手引第3次改訂版株式会社ぎょうせい

((株)タダノ 営業開発部 寒川篤志)

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