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玉掛け作業の安全(2)完―玉掛け用具に係る使用上の注意点―
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4. 玉掛け用具の注意点
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 先月号では玉掛け作業の安全に係る再教育等に参考となる内容として,玉掛け関連用語や玉掛け用具の選定例および玉掛け用ワイヤロープの使用上の注意点について述べましたが,今回はその他の用具についての使用上の注意点について述べます。
2 玉掛け関連用語
3 玉掛け用つりチェーンの選定計算
4 玉掛け用具の注意点
1) 玉掛け用ワイヤロープ
先月号掲載
 
2) つりチェーン(チェーンスリング)
  @  玉掛けに用いるつりチェーンは,使用荷重が明らかなものを使用する。
(リング部に使用荷重表示のタグを付けたものもある。)
  A  正しいつり角度で使用し,安全係数は5又は4以上としなければならない。
  B  ねじれた状態で使用しない。
  C  高いところからチェーンを投下しない。
  D  チェーンに火炎や熱が直接当たらないようにする。
  E  荷の下からチェーンをクレーンにより引き抜かない。
  F  チェーンのリングにフックの先端を押し込んだり,ピン等を差し込んで短くしたりして使わない。
  G  低温の場所で使用するときは,衝撃を与えないように特に注意する。
  H  足場用つりチェーンを玉掛け用具に使用しない。
 
図1 チェーンスリングの例
 
3) ベルトスリング・ラウンドスリング
  @  使用状態に合った適切なものを選定・使用する。ポリプロピレン製のものは紫外線に弱いので屋外での使用は避ける。また,新規の薬品や組成の不明な薬液に使用するような場合は,製造者に問い合わせて確認する。
  A

 使用限界標示のあるものは,損傷が進むと色が異なる標示が現れるので,使用してはならない。

  B  −30℃〜+50℃の温度範囲を超えて使用する場合は,使用荷重について製造者に確認する。なお,100℃を超えて使用してはならない。
  C  水,油などにぬれると,滑りやすくなるので注意する。
  D  角張った荷には必ず当てものを使用し,つり荷とベルトスリングを保護するとともに,横滑りさせないように注意する。
  E  目通し(チョーク)つりする場合は,深絞りしてつる。
  F  荷をつったままで,長時間放置してはならない。
  G  極端なねじれ,結び又は互いに引っ掛けた状態で使用してはならない。
  H  荷の下から引き抜くとき,ベルトスリングを損傷しないように注意する。
  I  地面や床の上を引きずったり,金具付きのものを高所から落下させてはならない。
  J  つり荷の下敷きにして(長時間)放置してはならない。
  K  他の玉掛け用具又は補助具類と組み合わせて使用するときは連結部分でベルトスリングが損傷することのないように注意する。
  L  熱,薬品,直射日光などの影響を受けない場所に保管する。
  M  化学薬品用ベルトスリングは,化学薬品に使用した後は,十分に水洗いしてから保管する。
  N  油分や埃が付着し汚れが著しいものは,中性洗剤で洗ってから保管する。
  O  点検の結果,廃棄することになったベルトスリングや金具は,補修したり使用荷重を減らすなどして再使用してはならない。
  P  その他特殊な状態で使用するときは,製造者に確認する。
 
図2 ベルトスリング
 
 以上は,ベルトスリングとラウンドスリングに共通した使用上の注意点でありますが,これらの他にラウンドスリングとしては次の点に注視する必要があります。
  @

 一般用ラウンドスリングを,化学薬品用や耐熱用として使用してはならない。
(耐熱用は市販されているが,化学薬品用は今のところ市販されていない。)

  A  点検の結果,表面布だけが軽微な損傷であっても,補修する場合は製造者に依頼する。
 
図3 ラウンドスリング
 
4) つりクランプ
  @  縦つり作業には“縦つり用クランプ”,横つり作業には“横つり用クランプ”を使用する。(縦横兼用クランプもある。)
  A

 使用荷重(最大使用荷重,最小使用荷重)及び使用板厚の範囲内で使用する。

  B  つり角度60度以内,掛け幅角度30度以内で使用する(図5)。
  C  一点つりで重心をつり上げても,荷振れなどによりクランプが外れる恐れがあるので一点つりはさける。
  D  クランプをつり荷に取り付ける場合は,開口部の奥まで完全に差し込み,外れ防止用ロック装置を掛けて使用する。
  E  つり荷にクランプを装着する箇所に抜け方向に勾配のある部材の場合には,製造者に確認の上使用する。
  F  カム及びジョー(歯)に目詰まりがあるものは目詰まりを必ず除去して使用する。
  G  カム及びジョーが摩耗(製造者基準による)しているものは使用しない。
  H  つり荷のつかみ部に油・塗料・さび・スケール等の付着がある場合は,よく取り除いてから使用する。
  I  つり荷やクランプに衝撃荷重が働くことのないよう十分注意する。
  J  クランプの温度が150℃以上になるような,高温物の玉掛けに使用しない。
  K  2枚以上の重ねつり,当てものつりはしない。
  L  つり環に直接ワイヤロープを差し込んで使用しない(つり環にはシャックルを使用する)。
 
図4 ロック装置付きつりクランプ
 
図5 クランプつりにおけるつり角度と掛け巾角度
 
5) ハッカー
  @  つり荷の形状,質量及び板厚に適したハッカーを選ぶ。
  A  寸法の異なるつり荷を重ねてつらない。
  B  つり角度60度以内,掛け帽角度30度以内で使用する。
  C  重心を正しく見極め,2個以上のハッカーで重心を挟む位置にハッカーを取りつける。
  D  ハッカーは爪の奥まで確実に差し込む。
  E  2本爪ハッカーの1本爪だけの使用はしない。
  F  爪に玉掛け用ワイヤロープを掛けて使用しない。
  G  ハッカー温度が150℃以上になるような高温物や気温が−15℃以下になるような寒冷地での玉掛け作業には使用しない。
(日本クレーン協会規格つりハッカーの点検マニュアル)
  H  溶接補修されたものや改造されたハッカーは使用しない。
 
図6 ハッカー
 
図7 ハッカーつりのつり角度と掛け巾角度
 
6) シャックル
  @  使用荷重と使用方法等に適したシャックルを選ぶ。
  A

 ねじ込み(アイボルト)式を使って絞りつりをするときは,図8右側○印のように玉掛け用ワイヤロープのアイ部にシャックルのボルトを通す。
(玉掛け用ワイヤロープの移動による力でアイボルトが緩むか又は締まることになり,ボルトが外れて荷が落下するか,シャックルの取外しが困難になることを防止するため)

  B  シャックル本体に曲げの力が加わらないようにする(図9)。
  C  加熱したり,打撃による変形の修正をしたものは使用しない。
 
         図8 シャックルの方向              図9 シャックルの使用例
 
7) アイボルト・アイナット
  @  使用荷重に適したアイボルト・アイナットを選ぶ。
  A  横方向に対しては強度が著しく低下するので,横方向の力を掛けない。
  B  座面を密着させて使用する。密着させることによってアイの向きが合わない場合は,座金を入れるなどして調整する(図11)。
 

図10 アイボルト(左)とアイナット(右)
 
        図11 アイボルトの使用例                 図12 つりビーム
 
8) つりビーム
  @  使用荷重に適したつりビームを選ぶ。
  A  多目的に用いられるものにおいては,つり点と負荷条件を確認して使用する。
  B  多点つりは荷重が各点に均等に負荷しないことがある,不均等荷重を考慮してつりビームが水平になるようなつり方をする。
 
9) まくら
  @  2本1組で両方の高さ,長さがともに揃っているものを使用する(図13(A),(B))。
  A  木材の場合,割れ,腐れなどのないものを使用する。
  B  荷の下に差し込むときは,まくらの両側から手を添えて持つ(図13.)。
(上から持つと挟まれる危険がある。)
  C  荷の下でまくらの位置を微調整する場合は,まくらの断面を左右から押さえて調整する(図13(D))。
 
図13 まくら
 
5. あとがき
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 先月と今月2回にわたり玉掛け作業の安全,特に各種の玉掛け用具に係る使用上の注意点にポイントを絞った内容について述べました。しかし,玉掛け作業に係る安全では,資格について,玉掛けの方法,合図の方法,玉掛け用具の点検,関連する法令といった項目についても詳細に知る必要があります,次の機会には,それらについて述べてみたいと思います。最後に,本稿が各事業場や職場における安全に多少とも寄与すれば幸いと存じます。(完)
 
参考文献
「クレーン等安全規則の解説」(社)日本クレーン協会 H20年3月1日発行
「クレーン等用語辞典」(社)日本クレーン協会 H13年2月1日発行
「玉掛け作業者必携:改訂版」(社)日本クレーン協会 H23年2月25日発行
「クレーン」(社)日本クレーン協会発行(H13年9月号)(H14年9月号)
(H14年11月号)(H15年9月号)(H16年9月号)
(H17年9月号)
(H18年9月号)(H19年9月号)(H20年5月号)
(H20年9月号)
(H21年11月号)(H22年12月号)
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