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玉掛業務従事者安全衛生教育について
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1.まえがき
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 クレーン作業における安全確保は,クレーン運転者および玉掛け作業者の技量・知識・判断力に頼るところが多い。
 玉掛け作業について,技量・判断力についてはトレーニングする事により習熟できると考えられる。知識については技術の進歩等に対応した新しい情報が必要であり,クレーン等の安全装置,関係法令の改正,災害の動向等を含めて定期的な安全衛生教育を受講することにより習得できることになる。
 ここでは,玉掛業務従事者安全衛生教育(「定期教育」「随時教育」)の内,玉掛け技能講習修了後,一定期間ごと(…概ね5年以内ごと)に実施する安全衛生教育(「定期教育」)について,玉掛け技能講習等講師の観点から教育のポイント等を含めて述べさせていただく。


2.玉掛け作業による災害
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2.1クレーン等による死亡災害
 平成22年に発生したクレーン等による死亡者数は76人で,前年と比較して4人の減少となっている。機種別では,移動式クレーン37人,クレーン33人となっており,両機種で92%を占めている。
 
図1 クレーン等による死亡災害の内訳(平成22年)
(クレーン誌 2011年 12月号より)
 
2.2玉掛け作業に起因する死亡災害
 クレーン・移動式クレーン・デリックによる死亡者数の内,玉掛け作業に起因する死亡災害は平成22年で39人となっており,55.7%を占めている(表1)。
 
表1 クレーン,移動式クレーン,デリックにおける死亡者数
現象                       年 H15年 H16年 H17年 H18年 H19年 H20年 H21年 H22年
クレーン・移動式クレーン・デリックによる死亡者数(A) 92 96 93 86 92 87 69 70













玉掛け用ワイヤロープ等の切断 5 3 4 12 3 9 4 2
クレーンフック等から玉掛け用ワイヤロープ等が外れた   2 2 2 2 1   6
玉掛け用ワイヤロープ等からつり荷が外れた 9 16 15 17 12 11 11 6
クレーンフック等からつり荷が外れた   2   1 1 1 1 1
その他 13 4 9 5 7 13 1 6
小 計 27 27 30 37 25 35 17 21

つり荷,つり具が激突した
5 7 6 3 3 4 2 7
つり荷,つり具と床上の物体に挟まれた 3 4 3 8 7 8 10 5
つり荷の転倒により挟まれた
9 5 10 8 8 4 5 6
小 計 12 9 13 16 15 12 15 11
合 計 (B) 44 43 49 56 43 51 34 39
玉掛け作業に起因する 比 率 B/A (%) 47.8 44.8 52.7 65.1 46.7 58.6 49.3 55.7
 
 過去の災害事例から玉掛け作業に起因する災害の主たる原因を下記に示す。
@ 玉掛け用具からつり荷が外れた。
A クレーンフック等から玉掛け用具が外れた。
B つり荷,つり具等に激突・狭圧された。
C 玉掛け用具が破損・切断した。
 この他,荷外し後の玉掛け用具の介添え不良,無線による合図の上下引継ぎ不良によるものが最近多くなっている。
 これらの主たる原因を無くしていく事により,玉掛け作業に起因する災害が減少していく事になる。


3.玉掛業務従事者安全衛生教育の目的と背景
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 労働安全衛生法第60条の2では,「事業者は(中略)その事業場における安全衛生の水準の向上を図るための教育を行うよう努めなければならい。」と定めている。
 第2項では「厚生労働大臣は前項の教育の適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を公表するものとする。」と定めており,平成8年12月に「危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育に関する指針」が公示されている。
 教育の種類としては,一定期間ごとに実施する安全衛生教育(「定期教育」)又は取り扱う機械設備等が新たなものに変わる場合等に実施する安全衛生教育(「随時教育」)となっている。


4.玉掛業務従事者安全衛生教育の内容等
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 一定期間ごと(…概ね5年以内ごと)に実施する安全衛生教育(「定期教育」)について,教育の内容,時間,方法等は,次のとおりとなっている。
 
4.1教育の内容及び時間
 教育内容としては,労働災害の動向,技術革新の進展等に対応した事項とし,時間は原則として1日程度となっている。
 以下に教育カリキュラムを示す。
 
表2 玉掛業務従事者安全衛生教育カリキュラム
科   目 範    囲 時間
1 最近の玉
掛用具等の
特徴
(1) 玉掛用具等の構造上の特徴
(2) クレーン等の安全装置等の
特徴
1.0
2 玉掛用具
等の取扱い
と保守管理
(1) 玉掛作業の安全
(2) 玉掛用具等の点検・整備
2.5
3 災害事例
及び関係法
(1) 災害事例とその防止対策
(2) 労働安全衛生法令のうち玉
掛けに関する条項
1.5
  5.0
 
4.2教育の方法及び講師
 安全衛生教育の方法として,「講義方式,事例研究方式,討議方式等教育内容に応じて効果の上がる方法とする。」と定めており,災害事例に対する防止対策等の研究討議を含めて教育を行う。
 講師の条件については,「当該業務についての最新の知識並びに教育方法についての知識及び経験を有する者とする。」と定めており,玉掛業務に関する知識と経験を求めている。
 
4.3推進体制の整備等
 教育の推進体制について,「教育の実施者は事業者であるが,事業者自らが行うほか,安全衛生団体等に委託して実施できるものとする。」と定めている。
 この安全衛生教育は,原則として就業時間内に実施するものとし,あらかじめ実施責任者を定めるとともに,実施計画書を作成するものとしている。また,事業者は,実施した安全衛生教育の記録を個人別に保存するものとしている。
 日本クレーン協会各支部では,玉掛業務従事者安全衛生教育を定期的に開催しているので,該当する有資格者に対して受講推進願いたい。
 テキストは「玉掛作業の安全」(1,500円)等を使用して行っている。


5.玉掛業務従事者安全衛生教育のポイント
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 玉掛け技能講習及び玉掛業務従事者安全衛生教育を通じて筆者が日頃より感じている,受講生の理解不足,勘違い点等を含めて教育のポイントを講師の観点から以下に示す。
 これらの項目を重点的に教育することにより知識の向上に.がると考える。
(1)  用語
つり上げ荷重,定格荷重,定格総荷重の違い。
(2)  外部表示灯(過負荷防止装置)
3色表示の意味。(定格総荷重の負荷率)
緑:90%未満
黄:90%以上100%未満
赤:100%以上及び過負荷防止装置等の安全装置を解除している場合に点灯する。
(3)  外れ止め装置付きフックから玉掛け用ワイヤロープが外れるメカニズム
(外れるという認識が不足している)
(4)  質量,荷重,力の単位
質量:kg,ton
荷重,力:N,kN
1ton=9.8kN
(5)  つり角度
3本3点つり,4本4点つりのつり角度
(6)  玉掛け用ワイヤロープの選定計算例
1本当りのワイヤロープに必要な基本安全荷重
=(つり荷の質量/掛け数)×張力係数
(7)  つりクランプのつり角度と掛け幅角度
(4本4点つりの場合)
つり角度:60度以内
掛け幅角度:30度以内
(8)  シャックルの選定
玉掛け用ワイヤロープの径の1サイズ以上の呼び径のシャックルを選定する。
呼び径:シャックル本体の直径あるいは,ねじ込み部の厚さをいう。(ボルトあるいはピン
の直径ではない…呼び径より径が大きい)
(9)  つり荷の下とは
つり荷の下とは,つっている荷の真下だけではなく,その荷が回転あるいは転倒する範囲を含むものとする。
(10)  ワイヤロープの曲げによる強度低下
 シャックル等を使用して玉掛け用ワイヤロープを掛ける場合,そのD/dによって強度の低下を考慮しなければならない。例えば,D/d=5の場合は,玉掛け用ワイヤロープの強度は30%減となる。
(D:シャックル等の軸径,d:ロープ径)
 
以上のような項目を含めて重点的に教育することにより,更なる災害の減少を期待したい。


6.玉掛け作業のポイント
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 玉掛け作業は,多種多様なつり荷,玉掛け用具,クレーン等の組合せの中から最善の方法を選択する必要がある。
 玉掛け作業に係る重点ポイントを以下に示す。
 
6.1玉掛け作業の意味
 玉掛け作業とは,つり具を用いて行う荷掛けから荷外しまでの一連の作業をいう。従って荷外しのみでも有資格者が行う必要がある。
 
写真1 クライミングクレーンの組立作業
 
6.2フックの外れ止め装置
 フックに玉掛け用ワイヤロープ等を掛ける場合は,外れ止め装置を使用するよう法令で定められている。したがって,荷をつり上げるときは必ず外れ止め装置を使用し,使用中に破損したときは,直ちに修理する必要がある。
 外れ止め装置を正常な状態で使用していても,作業の状況によっては玉掛け用ワイヤロープがフックから外れることがある。
 図2に玉掛け用ワイヤロープがフックから外れるメカニズムを示す
 
図2 フックからアイが外れるメカニズム
 
 ねじれが加わっている玉掛け用ワイヤロープがたるむと,アイ部がフックに沿って大きく回転し,やがてフック先端を乗り越え,フック先端と外れ止めの間に入り込みアイ部が外れる。
 このような現象を防止するために,2重の外れ止め等を使用している例もある。
 
6.3つり角度
 つり角度とは,フックに掛けられた玉掛け用ワイヤロープ等の間の開きの角度をいう。
 
図3 つり角度a
 
 つり角度が大きくなれば玉掛け用ワイヤロープに働く張力も大きくなる。
 4本4点つりの場合は,つり荷の形状や玉掛け用ワイヤロープの長さの微妙な違いにより,4本のワイヤロープに荷重が均等に掛かりにくいので,3本つりと考えてワイヤロープ等を選定する方が安全である。
 「玉掛け作業の安全に係るガイドライン」(労働基準局長通達,基発第96号)では,「つり角度は原則として90度以内であること」と定めている。ワイヤロープに掛かる張力や水平分力等を考慮すると,つり角度は60度以内が望ましい。
 なお,クランプ,ハッカーを用いる場合は,つり角度は必ず60度以内とすると定めている。
 また,横つり用クランプを使用する場合の掛け巾角度は,30度以内とするよう定めている。
 
図4 横つり用クランプのつり角度と掛け巾角度
 
6.4折り曲げによるワイヤロープの強度低下
 フックやシャックルなどの径とワイヤロープの径の比(D/d)によってワイヤロープの安全荷重が減少する。
 したがって,玉掛け用ワイヤロープを選定する場合は,この強度低下率を考慮する必要がある。
  (%)
ロープの構成    D/d 1 5 10 20
6×24 50 30 25 10
6×37 45 22 10 5

6×Fi(25),Fi(29)
45 25 15 4
図5 折り曲げによる強度低下率例
(出典:日本鋼索工業会)
 
6.5玉掛け用ワイヤロープの選定

 玉掛け用ワイヤロープの安全係数は,クレーン等安全規則により6以上と定められている。
 また,安全係数を考慮し,1本の玉掛け用ワイヤロープで垂直につることができる最大の荷重を,基本安全荷重と称している。
 通常の玉掛け作業では,つり角度が生じるためワイヤロープに掛かる張力を割増しする必要がある。この割増し係数を張力係数と称している。
玉掛け用ワイヤロープの選定では,1本当りのワイヤロープに必要な基本安全荷重を求め,基本安全荷重表より必要とするワイヤロープ径を選択する。

 1本当りのワイヤロープに必要な基本安全荷重
  =(つり荷の質量/掛け数)×張力係数
図6 玉掛け用ワイヤロープの選定
 
 (例)質量8t,つり角度40°,4本4点つりの場合の玉掛け用ワイヤロープ(6×24,A種)の適正な直径を選定する。
 4本4点つりの場合,安全をみて3本つりと見なして計算する。張力係数はつり角度が30°を超えているので,表3のつり角度60°の1.16を採用する。
 基本安全荷重=(8t/3点)×1.16=3.09t
 表4で6×24,A種の中から基本安全荷重が3.09t以上の径の20mm(4本)を選定する。
 
表3 つり角度による張力係数
つり角度 張力係数
1.00
30° 1.04
60° 1.16
90° 1.41
120° 2.00
 
表4 玉掛け用ワイヤロープの基本安全荷重
(t)
公称径(mm)   ロープの区分 6×24
G種 A種
10 0.778 0.837
12 1.12 1.20
14 1.52 1.64
16 1.98 2.14
18 2.51 2.71
20 3.11 3.34
 
6.6シャックルの使用方法

 シャックルを選定するときは玉掛け用ワイヤロープの径の1サイズ以上の呼び径のシャックルを選定することが基本となる。
 玉掛け用ワイヤロープ6×24A種12mm用のシャックルを選定する場合,基本安全荷重は1.2tであるので,シャックルは1サイズ上の14mmを選定することにより,使用荷重1.25tとなりバランスがとれることになる。

 
  (t)
呼び
(mm)
等級 Mストレー
トシャックル
SC型
12 1.00
14 1.25
16 1.60
18 2.00
20 2.50
22 3.15
24 3.60
図7 シャックルの使用荷重
 
 シャックルを使うときは,ワイヤロープのアイをシャックルのボルト側とする。
図8 シャックルの使い方
 
 逆に絞り側にボルトがくると,絞ったときにボルトが回転してネジが締め込まれたり,緩んだりすることがある。
 また,シャックル本体に曲げの力が加わらないように使用する。曲げの力が加わるような使用方法の場合は,引張り角度(直線方向に対する横方向の角度)が46〜90 °のとき,使用荷重は50%減少することになる。(JIS B2801シャックルより)
 なお,同 JISでは「摩耗率5%以上のものを使用してはならない」と定めている。
図9 シャックルの向き
 
6.7長尺物の玉掛け
 長尺物をつるとき,つり角度が大きくなると玉掛け用ワイヤロープが内側に滑りやすくなり,つり荷が平衡を失って荷が落下する危険性が増加する。
 つり角度が90 °以内となる玉掛け用ワイヤロープを選定し,目通しつり,あだ巻つりをして玉掛け位置がずれないようにする。
図10 長尺物のあだまきつり
 
6.8つり荷の下への立入禁止
 クレーン等安全規則第29条では,「次の各号のいずれかに該当するときは,つり上げられている荷の下に労働者を立ち入らせてはならない」と定めている。
 ハッカーを用いているとき,つりクランプ1個を用いているとき,1本つりのとき,磁力または陰圧により吸着させているとき等が対象となっている。
 一般的には広義の意味で「つり荷の下は立入禁止」としていることが多いが,つり荷の下の定義として次のことが示されている。
 
図11 つり荷の下
 
 すなわち,つり荷自体の真下のみでなく,つり荷が回転あるいは転倒する範囲を含むものとしている。
 
6.9退避の位置
 玉掛け作業責任者は作業開始前打合せを行い,作業場所の状況の確認と安全な退避位置を定め,確実な退避の実施のための手順等を周知する。
 
図12 退避の位置
 
 天井クレーン,橋形クレーン等の走行,横行の機能を有する場合は,走行若しくは横行方向の45°方向へつり荷の端から2m以上離れた位置に退避する。
 移動式クレーン,ジブクレーン等で旋回機能を有する場合は,つり荷の端から旋回外方向へ2m以上退避する。
 
6.10つり荷走行と共づり
 移動式クレーンのつり荷走行と共づり作業(相づり作業)は,労働災害の防止のために労働基準局長通達(昭和50.4.10基発第218号荷役,運搬機械の安全対策について)で,原則として禁止されている。ただし,止むを得ずこれを行う必要がある場合は,作業指揮者の直接の指揮のもとに行うことと定められている。
 日本クレーン協会では,クローラクレーンおよびホイールクレーン(ラフテレーンクレーン等)のつり荷走行時の安定に関する指針を定めているので参考に願いたい。また,共づり作業についても,移動式クレーンの共づり作業を行う場合の指針を定めているので,併せて参考に願いたい。
 なお,これらについてはクレーン誌の2011年1月号で筆者が詳細に記述してあるのでご覧いただきたい。
 
写真2 クローラクレーンのつり荷走行 図13 ラフテレーンクレーンのつり荷走行
 
 つり荷走行においては,つり荷走行時の定格総荷重の限定,走行速度の限定,ジブ長さの限定等が定められており,共づりでは,最大負荷の限定,原則同一機種,原則巻上げ・起伏動作での作業等が定めれている。
 
6.11荷外し後の措置
 つり荷の荷下ろしが終わり,玉掛け用具を荷から外した後にフックと玉掛け用具を巻上げている途中で,玉掛け用具がつり荷等に接触して,荷が転倒したり,落下したりする事故が多発している。
 荷外し後は玉掛け用具がつり荷等に接触しないよう介添えし,安全が確認できるまで看視することが必要である。


7.移動式クレーンの危険角度
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 ラフテレーンクレーン,オールテレーンクレーン,油圧トラッククレーンは小型から大型までほとんどの機種に危険角度が設定されている。
 危険角度とは,ジブを当該角度以下に伏せると,無負荷でも転倒する限界角度であり,無負荷時ジブ角度範囲の最小角度とも呼ばれている。
 危険角度は,アウトリガーの張出し幅が小さくなるほど,ジブ・補助ジブが長くなるほど大きくなっている。過負荷防止装置を無効にした時などは,危険角度以下に伏せると転倒することになる。
 
図14 危険角度が明示されている定格総荷重表の例


8.送配電線近接作業の留意点
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 移動式クレーン等を送配電線に近接する場所で使用中に,クレーンのジブやワイヤロープ等が接近・接触して起こる感電災害が多く発生している。
 作業を行う際は,作業計画を周知徹底し,感電防止に対する措置(建設用防護管や防護ゲート等)が講じられているか,専任の監視責任者が配置されているかなどを確認するとともに,慎重な合図と運転を行い,送配電線からの安全な離隔距離を保つことが重要である。
 
表5 送配電線からの離隔距離(安全距離)
種類 公称電圧
(V)
基発第759号 東京電力 関西電力
離隔距離
(m)
安全距離
(m)
安全距離
(m)
低圧 100 1.0 2 2
200 1.0 2 2
高圧 6,600 1.2 2 2
特別
高圧
22,000 2.0 3 3
33,000 2.0 3 3
66,000 2.2 4 4
154,000 4.0 5 5
275,000 6.4 7 7
500,000 10.8 11 11
45 25 15 4
 
離隔距離 労働基準局長通達で定められた,クレーンのジブ等を電線等から離す距離。
安全距離 各電力会社が定めた更に安全な距離。
配電線 市街地の電柱上に配線されている100〜6,600ボルトの電気が流れている電線。
送電線 鉄塔上に配線されている2万〜50万ボルトの電気が流れている裸の電線。
 特別高圧の送電線にクレーンのジブやワイヤロープ等が離隔距離(安全距離)より近づくと,空気の絶縁が破れて放電状態になり,玉掛け作業者等が感電する。


9.悪天候時の作業中止
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 労働安全衛生規則第522条では,「事業者は,高さ2m以上の箇所で作業を行う場合において,強風,大雨,大雪等の悪天候のため,当該作業の実施について危険が予想されるときは,当該作業に労働者を従事させてはならない」と定めている。
 また,クレーン等安全規則では,「事業者は,強風のため,クレーンに係る作業の実施について危険が予想されるときは,当該作業を中止しなければならない」と定めている。
 ここで,強風とは10分間の平均風速が毎秒10メートル以上の風をいい,大雨とは1回の降雨量が50ミリメートル以上の雨をいい,また大雪とは1回の降雪量が25センチメートル以上の雪をいう。
 屋外のクレーン作業においては,特に風による影響が大きいので,吹き流しあるいは風速計で風の強さを確認することが重要となる。
 移動式クレーンの安定度計算には風荷重が考慮されていない。長尺ジブの場合は風の影響を大きく受けるため,強風時には転倒する危険性が増加する。
 これら悪天候時の措置について,合図者および運転者も認識しておくことが重要である。
 


10.災害事例研究(グループ討議)
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 教育カリキュラムの「災害事例とその防止対策」として,災害事例に対する再発防止のためのグループ討議を行い,原因と対策を纏める。
 受講者を10人以内程度のグループに分け,リーダーと書記を選出する。リーダーはグループ内の意見調整,進行,発表を行う。書記は原因と対策に対するグループ内の意見を発表用紙に纏める。
 災害事例は玉掛け作業に係るものを選択し,原因として,法令違反(無資格,安全装置の解除,立入禁止等),不適格な玉掛け用具の使用,教育・知識・確認・情報伝達の不足等に注目する。対策として,原因事項を除去するための方策ほか,社会的要因や管理面の問題まで踏み込んで討議されると良い。
 


11.おわりに
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 事業場における安全衛生の水準の向上を図るために,玉掛業務従事者安全衛生教育を多くの有資格者に受講していただき,知識の向上と安全意識の更なる高揚を図っていただくことを期待したい。
 本稿が事故・災害防止のための一助となり,社内外の教育・管理用資料等として活用していただければ幸いである。
 
参考文献
・ 一般社団法人日本クレーン協会玉掛け作業者必携
 
(腰越技術士事務所代表 腰越 勝輝)


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