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安全な玉掛け作業の進め方 (3)完
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W 玉掛け作業の安全に係るガイドライン
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 前回まで、玉掛け作業を安全に行う上での様々なポイントを述べてきた。
 最終回となる3回目では、玉掛け作業の安全について行政から示されているガイドライン「玉掛け作業の安全に係るガイドライン」について説明する。
 
1 ガイドラインの概要
 厚生労働省では、玉掛け作業に起因する労働災害を防止するため、玉掛け者はもちろんのこと、クレーンの運転者、合図者等の玉掛け作業に関わる労働者の基本的な作業分担、作業の実施に際しての留意事項をとりまとめた上記ガイドラインを策定して、平成12年2月24日付け基発第96号による通達で公表している。
 ガイドラインでは、事業者に対し、これに基づき適切な措置を講ずることにより、玉掛け作業等における労働災害の防止に努めることを求めるとともに、玉掛け作業に従事する労働者に対しても、ガイドラインに基づく安全作業の実施を求めている。
 事業者が講ずべき措置として、次の実施事項を示している。
(1) 作業標準等の作成
(2) 玉掛け等作業に係る作業配置の決定
(3) 作業前打合せの実施
(4) 玉掛け等作業の実施
(5) 玉掛けの方法の選定
(6) 日常の保守点検の実施
 
2 ガイドラインの各実施事項について
 左記実施事項について、ガイドラインで示していることの概要を紹介する。
(1)  作業標準等の作成
   「作業標準等の作成」では、事業者が玉掛け等作業(玉掛け作業を含む荷の運搬作業)について、労働者の編成、作業分担、クレーン等の種類・能力、玉掛け用具と合図について作業標準を定め、また、作業標準が定められていない玉掛け等作業を行う場合は、作業を行う前に作業計画を作成し、それぞれ労働者に周知することとしている。
(2)  玉掛け等作業に係る作業配置の決定
   「玉掛け等作業に係る作業配置の決定」では、(1)で定めた作業標準又は作業計画に基づき、事業者は作業に従事する者の配置を決定するとともに玉掛け作業責任者を指名し、作業に関連する情報を通知することとしている。
(3)  作業前打合せの実施
   「作業前打合せの実施」において、事業者は、玉掛け作業責任者に関係労働者を集めて作業開始前の打合せを行わせるとともに、作業の概要と作業の手順について、それぞれ次に掲げる事項を労働者全員に指示、周知させることとしている。
  (3)-1 作業の概要
   つり荷の種類、質量、形状等を周知させること。
   運搬経路を含む作業範囲、建物・仮設物等の状況、作業範囲内での他の作業の状況を周知させること。
   玉掛け者、合図者、玉掛け補助者の作業位置、退避位置の周知とつり荷の振れ止め作業がある場合の担当者の位置を周知させること。
  (3)-2 作業の手順
   玉掛け者に対し、玉掛用具の種類、個数、玉掛けの方法を指示すること。
   使用するクレーン等の仕様を労働者全員に周知すること。また、移動式クレーンを使用する場合は、その運転者に対し、据付位置、据付方向、転倒防止措置について確認させること。
   使用する合図について具体的に指示するとともに、関係労働者に合図の確認を行わせること。
   運搬経路において他の作業が行われている場合に、退避指示をする者を指名し、その指示者に対し退避の時期、退避場所を指示すること。
   不安全な状況が把握された場合の作業中断を全員で確認させるとともに、危険を感じた場合にクレーン等の運転者に作業の中断を伝達する方法を指示すること。
(4)  玉掛け等作業の実施
   「玉掛け等作業の実施」において、玉掛け等の作業中に、事業者が、@玉掛け作業責任者、A玉掛け者、B合図者、Cクレーン等運転者の各担当者に実施させるべき事項を具体的に示し、上記(3)で指示した事項の確実な実施を求めている。
   具体的には、
  (4)-1 玉掛け作業責任者が実施する事項
   つり荷の質量、形状及び数量の確認と、玉掛用具の種類、数量の確認及び、必要な場合の玉掛用具の変更、交換等。
   クレーン等の据付状況及び作業範囲内の状況の確認と、必要な場合の障害物の除去等。
   玉掛けの方法の確認と、不適切な場合の玉掛け者への改善指示。
   つり荷の落下のおそれ等不安全な状況を認知した場合の、作業の中断、つり荷を着地させる等。
  (4)-2 玉掛け者が実施する事項
   玉掛用具の準備、点検と、損傷等が認められた場合の適正なものとの交換。
   つり荷の質量及び形状の確認と、用意された玉掛用具で安全に作業が行えることの確認、必要な場合には、玉掛け作業責任者に玉掛けの方法の変更又は玉掛用具を交換するよう求めること。
   玉掛けに当たっては、つり荷の重心の見極め、打合せで指示された方法での玉掛け、安全な位置に退避した上での合図者への合図。
     また、地切り時のつり荷の状況の確認、必要な場合の玉掛けのやり直し等。
  荷受けを行う際のつり荷の着地場所の状況の確認、まくら、歯止め等の配置等の荷が安定するための措置。
     また、玉掛用具の取り外しにおいて、着地したつり荷の安定を確認した上での実施。
  (4)-3 合図者が実施する事項
   クレーン等運転者及び玉掛け者を視認できる場所に位置し、玉掛け者からの合図を受けた際の、関係労働者の退避状況の確認、運搬経路に第三者の立入等がないことを確認の上でのクレーン等運転者への合図。
   常につり荷を監視し、つり荷の下に人が立ち入っていないこと等運搬経路の状況の確認しつつ、つり荷を誘導。
   つり荷が不安点になった場合に、直ちのクレーン等運転者への合図と作業を中断する等の措置。
  (4)-4 クレーン等運転者が実施する事項
   使用するクレーン等の作業開始前点検。移動式クレーンを使用する場合は、据付地盤の状況の確認、必要な場合は、地盤の補強等の措置の要請と必要な措置を講じた上での移動式クレーンの据付け。
   以上のような事項が示され、作業責任者、玉掛け者、合図者、運転者それぞれが重要な役割を担っており、相互の緊密な連携のもとに玉掛け作業が実施されるべきことが提示されている。
(5)  玉掛けの方法の選定
   「玉掛けの方法の選定」では、玉掛け作業の実施に際して、事業者が玉掛けの方法に応じて次のような事項に配慮して作業を行わせることとしている。
   共通事項として、安全係数の確保、つり角度を原則として90度以内とすることなど。
   玉掛け用ワイヤロープによる方法について、使用するワイヤロープの数、つり方別に、それぞれ配慮すべき事項を列挙。
   クランプ、ハッカーを用いた方法について、同じく配慮すべき事項を列挙。
(6)  日常の保守点検の実施
   最後に、「日常の保守点検の実施」では、日常の保守点検において、事業者が、定期的点検の時期・担当者を定めるべきとするとともに、玉掛用具の点検方法、判定基準を表で示している。
 
3 おわりに
 ガイドラインで示された内容は、各事業場で既に取り組んでおられるものと思うが、玉掛けに係る作業内容の見直しや実際の作業の現場において、漏れが生じている可能性もないとは言えない。これを機会に、再確認を行ってはどうか。
 ガイドラインでは、各項目についてかなり詳細に記述がされているが、必要最小限の基本的な内容となっている。
 そこで、当協会では、ガイドラインに解説を加えるとともに、参考となるイラストや写真を添付した、「玉掛け作業の安全に係るガイドラインの解説」を発行し、玉掛け関係者の便宜を図っている。ガイドラインの事項を適切に実施する上で、有効な資料となるので、是非、活用いただきたい。
 また、ワイヤロープの代用として、ベルトスリングやラウンドスリングが使用されている。当協会では、玉掛け作業の安全確保に必要な知識や注意点を規格として定めた「ベルトスリング使用マニュアル」及び「ラウンドスリング使用マニュアル」をJCAS(日本クレーン協会)として制定している。玉掛け等作業に従事する労働者にとって有効な資料となるので、是非、活用されたい。
 
表 主な玉掛用具の点検方法及び判定基準(抄)
(1) 玉掛け用ワイヤロープ
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点検部分 点検方法 判定基準
ワイヤロープ部 

1 ワイヤロープ1より間の素線の断線の有無を目視で調べる。

2 ワイヤロープの摩耗量をノギス等で調べる。

3 ワイヤロープのキンクの有無を目視で調べる。

4 ワイヤロープの変形の有無を目視で調べる。

5 ワイヤロープのさび、腐食の有無を目視で調べる

6 アイ部の変形の有無を目視で調べる。

7 アイの編み込み部分の緩みの有無を調べる。

1 素線の数の10%以上の断線がないこと。

2 直径の減少が公称径の7%未満であること。

3 キンクがないこと。

4 著しい変形がないこと。

5 著しいさび、腐食がないこと。

6 著しい変形がないこと。

7 緩みがないこと。

圧縮止め部

1 合金の摩耗量及び傷の有無をノギス等で調べる。

2 合金部の変形及び広がりの有無を目視で調べる。

1 合金の厚みが、元の厚みの2/3以上あり、著しい傷がないこと。

2 著しい変形、広がりがないこと。

(2) 玉掛け用つりチェーン
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点検部分 点検方法 判定基準
チェーン 

1 き裂の有無を目視で調べる。。

2 変形及びねじれの有無を目視で調べる。

1 き裂がないこと

2 著しい変形、ねじれがないこと。

リンク等

1 リンク、フック等のき裂の有無を目視で調べる。

2 変形及びねじれの有無を目視で調べる。

1 き裂がないこと。

2 著しい変形、ねじれがないこと。

※上記の他、「(3)ベルトスリング」、「(4)フック」、「(5)クランプ」、「(6)ハッカー」及び「(7)シャックル」について、点検方法等が示されている。


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