地震災害後におけるクレーンの点検ポイント
 
 以下の表は、平成7年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大地震)の後に、その地震におけるクレーンの災害事例に基づいて当協会にて作成したもので、天井クレーンの点検を中心としてまとめられています。他のクレーンでも共通部分については適用することができますのでご活用下さい。
 
(1) 走行路関係
装置名 点検項目 解説/備考
1) 走行レール
@ レールの側面で光っている所はないか
A レールの踏面に車輪が滑った跡はないか
B 走行レールや継ぎ目の溶接部のクラックやボルトの緩みはないか、また、走行レール継目板の変形はないか
C 走行レール取付ボルトの緩みはないか
建家が傾いていると車輪が片当りしている場合がある
地震よりクレーンがレール上を滑ると表面に傷が付いている
2) エンドストッパー
(車輪止め)
@ 溶接部のクラックやボルトの緩みはないか
A 走行バンパーが左右均等にストッパーにあたっているか
見逃されやすいのでチェックが必要
 
(2) 鋼構造関係
装置名 点検項目 解説/備考
1) 鋼構造
@ トラス構造の場合、各部材に曲がりや捩じれはないか
   
A ボックスや板桁の場合溶接部に異常はないか
B サドルとガーダーの継ぎボルトに緩みはないか
まず目視で確認してみる。トラスの変形は即倒壊につながる
同時にボルトの緩みもチェックのこと
目視でおかしいと思ったらカラーチェック等で検査のこと


2) 横行レール
@ レールの側面で光っている所はないか
建家が傾いていると車輪が方当りしている場合がある。しばらく使用したらレールの側面をチェックして見ること
A レールの路面に車輪が滑った跡はないか
B 横行レール継ぎ目の溶接部のクラックやボルトの緩みはないか、またレール継目板の変形はないか
C 横行レール取付ボルトの緩みはないか、また横行レールが角レールの場合は、横行レール取付部の溶接にクラックはないか
地震によりクラブがレール上を滑ると表面に傷が付いている
2) 横行エンドストッパー
@ 溶接部のクラックやボルトの緩みはないか
A 走行バンパーが左右均等にストッパーにあたっているか
見逃されやすいのでチェックが必要
 
(3) 機械装置関係
装置名 点検項目 解説/備考
1) 減速機
@ 騒音
なにか異音はないか、聴音棒等で聞いてみること
A 振動
なにか異常な振動はないか、手を当ててみてもわかる
減速機はクレーンの心臓部だから、早めにチェックしておくこと
もしなんらかの異常が認められたら、直ちに専門家に相談のこと
B 発熱
軸受部に発熱があれば専門家に相談のこと
C 油漏れ
油漏れはないか
2) 歯車
@ 車輪ギア
見にくいため異常を見落としがちなので一度点検のこと
3) 車輪
@ 偏摩耗
車輪がブレーキされた状態で滑った形跡がないか
4) ワイヤロープ
@ 外見の傷
地震でワイヤロープがこすれ傷が付く場合がある
5) ころがり軸受
@ 異常音
地震で大きな衝撃が加わった場合、軸受内部に傷が出来ている可能性がある
A 発熱
手を当ててみる、さわれない温度であれば直ちに専門家に相談すること
6) 取り付けボルト
@ ゆるみ
多数の取り付けボルトがあるが、重要度の高いものからチェックのこと
減速機、シーブ、モータ、ブレーキ等の取り付けボルトは入念に点検のこと
手すりのボルトについてもチェックのこと
 
(4) 電気関係
装置名 点検項目 解説/備考
1) 走(横)行集電装置
@ トロリー線と集電子の接触状態に異常がないか
走行及び横行距離全長に亘って確認する
A トロリー線及び集電子の支持部材に変形や緩みがないか
B 集電子(器)のリード線が緩みがないか
C 感電防止設備の変形、損傷はないか
絶縁体の割れの有無なども確認する
D 給電ケーブルにあっては給電ケーブルの架設状態に異常がないか
E ケーブル接続部の緩みはないか
ケーブルの絶縁被覆の損傷、ケーブルの案内機構の場合も確認する
2) 機内配線
@ 機内配線の絶縁抵抗に著しい低下はないか
配電盤等において各分岐回路ごとにかならず確認する(直近の測定値と較べる)
A ペンダント押釦スイッチ(金属ケース製のもの)のアース線に断線や接続部の緩みはないか
 
3) 機器全般
@ 巻上、横行、走行用各ブレーキの作動に異常はないか
A 非常停止の機能に異常はないか
B 巻上、横行、走行用各リミットスイッチの作動に異常はないか
無負荷時、負荷時のブレーキの効き具合などを確認する
非常停止スイッチを操作して確認する
各作動位置において確実に作動することを確認する
ストライカの変形、損傷の有無についても確認する
特に、直働式リミットスイッチは振動の影響を受けやすい機構なので、作動状況を含めて確認のこと
C コントローラまたはペンダント押釦スイッチの機能に異常はないか
コントローラハンドルの「進め」、「戻し」の動き及び「正転」「逆転」の動きなどを確認する
D 巻上、横行、走行用各電動機の起動−運転−停止の動き及び振動、運転音に異常はないか
無負荷時、負荷時において各々全移動距離について確認する
E 抵抗器のグリッドの亀裂、折損、グリッドの相互の接触、締付部分の緩みなどはないか
F 配電盤内器具の取付部の緩み、配線の緩みはないか
G 投光器やランプの落下のおそれはないか
H 警報、信号装置の作動に異常はないか
感電防護板、柵などの変形、損傷の有無についても確認する
I 各機器の取付状態に異常はないか
特に自立形の配電盤など
 
(5) その他
装置名 点検項目 解説/備考
1) 建家とのクリアランス
@ クリアランス
規定通りのクリアランスが確保されているか、走行及び横行の全域に亘って確認をすること
2) 給油配管
@ 配管外れ
給油がなくても、しばらくは異常なく稼働しているので、気づかないかもしれないので注意が必要

 
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