クライミングクレーンの知識
 高層ビルの建設工事で一番高いところで活躍しているクレーンは、一般にタワークレーンと呼ばれている。工事完成後は解体して搬出される。
 工事現場におけるタワークレーンの一連の工事の流れは、【組立⇒クライミング(必要回数繰り返す)⇒解体】の順で行う。組立はブロック積み、クライミングは尺取虫、解体は親亀・子亀・孫亀方式で屋上から消えて行く。

クライミングの仕組み
 
 タワークレーンのクライミングにはクレーン本体がマストを昇るマストクライミングと、工事の進捗とともに工事中の鉄骨を利用してベース架台(土台部分)を盛り替えるフロアクライミングとがある。

クライミング装置
 クライミング装置は上部カンヌキを有する上部昇降フレーム、下部カンヌキを有する下部昇降フレーム、昇降シリンダで構成され、上下のカンヌキでクレーン本体の全質量を交互に支えている。
 クライミング方式には油圧シリンダ、電動シリンダ、電動チェーンブロック、ワイヤロープ(巻上装置と併用)
などを用いたものがあり、このうち油圧シリンダ方式が主流である。 

マストクライミング
 地上にベース架台を設置し、最頂部に順次マストを継足しながらクライミングする方式で、一般的なビルや超高層マンション工事等で用いられている。

装置部位 動作 クレーンの動作
上部カンヌキ 本体はマストにより支持
昇降シリンダ 少伸び
上部カンヌキ 引き
昇降シリンダ 全伸び クレーン本体上昇
上部カンヌキ 出し
昇降シリンダ 少縮み
下部カンヌキ 引き
昇降シリンダ 全縮み 下部昇降フレーム上昇
下部カンヌキ 出し
昇降シリンダ 少伸び

1〜9 繰り返し


フロアクライミング
 超高層ビルではタワークレーンのマストが地上から建っていると仕上げ工事に支障が出るので、工事の進捗に伴い工事中の鉄骨を利用してベース架台を盛り替える。
 フロアクライミングではマストが根元ジブの脚の間を通過するので構造が異なり、フロアクライミング可能なタワークレーンは一部の機種に限られている。

装置部位 動作 クレーンの動作
上部カンヌキ マストは本体により支持
昇降シリンダ 少伸び
下部カンヌキ 引き
昇降シリンダ 全伸び 下部昇降フレーム下降
下部カンヌキ 出し
昇降シリンダ 少縮み
上部カンヌキ 引き
昇降シリンダ 全縮み マスト上昇
上部カンヌキ 出し

1〜8繰り返し


アニメーション【タワークレーンが屋上から消えるまで】
タワークレーンの組立から解体まで

組 立
 
 機械センターで整備されたタワークレーンはプラモデルのパーツのようにブロックごとに分割されている。
最下部のベース架台(土台部分)から順次搬入して移動式クレーンなどを用いて組み立てる。大型タワークレーンの組立工事は完了までに1週間から2週間ほどの日にちがかかる。
@ ベース架台、底部マスト
A 2段目マスト、昇降装置、旋回フレーム、ガイサポート
B 巻上げ装置、ジブワイヤロープ仕込み
C マストクライミング

鉄骨工事
 
 建物の骨格となる鉄骨の組み立てを開始する。
タワークレーンの自立限度までマストを自力で継足しながらマストクライミングで昇って行く。
@ 鉄骨柱第1節組立
A) 上部にマストの継足し
B マストクライミング完了
C 鉄骨柱第2節組立

フロアクライミング
 
 フロアクライミングは建物の床(梁)を利用してタワークレーンを上昇させる一般的な工法である。
フロアクライミングを繰返してタワークレーンは最上階まで到達する。
尺取虫⇒伸びて 尺取虫⇒縮んで 尺取虫⇒伸びて 尺取虫⇒繰返し
@ 最上階にタワークレーンを下げて昇降フレームを固定
ベース架台の基礎ボルトを開放
A 昇降装置の油圧シリンダを作動させてマストを引き上げ
ベース架台を途中階に固定
B 昇降装置の油圧シリンダを作動させて、タワークレーン旋回体部分をマストの最上部までマストクライミング
C @〜Bのフロアクライミングを必要回数繰り返す


解体・搬出
 
 タワークレーンを使用する工事が終了したら解体作業に入る。
 大型タワークレーンは一度に解体することができないので、解体されるクレーンよりひと周り小さいクレーンを傍らに組み立てて解体を行う。この作業を数回繰り返して、次第に小さいクレーンに置換えて行く。
親亀⇒子亀組立 子亀⇒親亀解体 孫亀⇒子亀解体 人力⇒孫亀解体
@ 屋上にあるタワークレーン(親)より一回り小さいタワークレーン(子)を近くに組立
A 組み立てたタワークレーン(子)によりタワークレーン(親)を解体して地上に下す
B ジブクレーン(孫)を近くに組立
タワークレーン(子)を解体して地上に下す
C 最後のジブクレーン(孫)は人の手で解体してエレベー タで地上に下す
 
 
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