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あらまし |
本災害は,下水道管の埋設工事のため,くい打機として使用していた移動式クレーンを用いて矢板の打ち込み作業を行っていたところ,アウトリガーを張り出していた路肩が沈下して横転し,被災者が側溝とアウトリガーとの間に挟まれたものである.
本下水道工事は,道路改良工事と並行して行われており,道路改良工事は,民家横の農道を水田側に拡幅し山砂を敷き,両端の路肩に側溝を設け,路面をタイヤローラー等で展圧するものであった. 工事の2次下請け事業場に所属する被害者ともう1人の作業員が現場に入った時は路面は展圧前の状態であり,この路面上でラフテレーンクレーン(つり上げ荷重25t)に油圧バイブロハンマー(質量5.8t)を取り付けて設置した.この時点ではこのクレーンは労働安全衛生法に定める「くい打機」に該当するものであったが,このくい打機により,合計38本の鋼矢板(1枚約0.5t)を地面に垂直に打ち込む作業を行う予定になっていた.
災害発生当日の朝,被災者が鋼矢板のセットやくい打箇所への誘導を,もう1人の作業員がオペレーターとして運転操作を担当して作業を開始した.2本目の矢板を打ち込むとき,くい打機運転室内の水平器が水田方向への傾斜を示したが,特に処置することもなく作業を続行した.続いて3本目の矢板をつり上げているとき再び傾斜し始めたため,被災者に足回りを見てくれるよう依頼したところ,異常なしとの報告を受けた.
次にオペレーターは,コーナー矢板と呼ばれるくい打ち箇所の角部用の矢板のつり上げにかかった.被災者が玉掛け用ワイヤロープを掛け荷から離れて右後部アウトリガー付近まで来たので,巻上げを開始したところ急にくい打機が水田方向に横転し,運転室のドアを開けていたオペレーターはくい打機の外に投げ出された.被災者は路肩のU字溝側面のくぼみに落ちており,右後部アウトリガーに押しつぶされていた.
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