JCA cr00091

あらまし

本災害は，移動式クレーンの補巻き用ワイヤロープを別の移動式クレーンに移し替える作業において，当該ワイヤロープを中間でつっていた玉掛け用ワイヤロープが切断し，移し替え中のワイヤロープが落下して被災者に激突し死亡したものである．
災害発生当日，被災者を含む４名の作業員は移動式クレーン（つり上げ荷重１２０ｔ，以下「Ａクレーン」という．）にカウンタウエイト，ジブ，ワイヤロープ取り付け等当該移動式クレーンの組立を行うことになり，災害発生時は，カウンタウエイトの取付が終了し，別の移動式クレーン（つり上げ荷重１２０ｔ，以下「Ｂクレーン」という．）から補巻き用ワイヤロープを移し替える作業を行っていた．
ワイヤロープ移し替えの作業手順は，(1)Ｂクレーンから補巻き用ワイヤロープをドラムを回転させて送り出し，(2)送り出されたワイヤロープをＡクレーンのドラムに取り付け，
(3)さらに別の移動式クレーン（つり上げ荷重９０ｔ，以下「Ｃクレーン」という．）のフックに玉掛け用ワイヤロープを用いて滑車を取り付け，ＡクレーンとＢクレーンの中間で移し替えるワイヤロープを滑車に通し，(4)Ｃクレーンの巻き上げ操作により，ワイヤロープを緊張させ，(5)Ａクレーンのドラムを回転させワイヤロープを巻き取りながらＣクレーンの巻き下げを行うものであった．
作業手順に従い，Ｂクレーンから十分にワイヤロープを送り出し，Ａ，Ｃそれぞれのクレーンに運転士が乗り込み，Ｃクレーンの巻き上げ操作を行い，ワイヤロープを緊張させた時点で，Ａクレーンのドラムを回転させ，ワイヤロープを巻き取りながら，Ｃクレーンの巻下げ操作を開始したところ，Ａクレーンの巻き取り速度がＣクレーンの巻下げ速度を超えてしまい，Ｃクレーンに滑車をつり下げていた玉掛けワイヤロープが切断したため，移し替え中のワイヤロープがちょうど真下にいた被災者の頭部に激突した．