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あらまし |
本災害は,ジブクレーンを用いた足場の解体作業において,巻き上げたつり荷に被災者の手袋が引っ掛かり,被災者はそのまま荷とともにつり上げられたが,途中で引っ掛かっていた箇所が外れたため墜落したものである.
災害の発生した現場は,地上7階建てのビル建築工事であり,災害発生当日の作業は足場の解体作業であった.1週間前から開始された足場の解体作業は,前日までに7階の床面部分まで進み,当日は屋上に設置されたジブクレーン(つり上げ荷重9t)により解体部材を足場から張り出して設けられた簡易ステージから一旦屋上までつり上げ,部材の種類ごとに分類整理した後,地上のトラックに積み込むものであった.
足場の解体作業については,あらかじめ,元請事業場の現場監督と一次下請けの解体作業者との間で足場の解体作業の方法,解体作業の安全上の注意事項,作業員の人数,配置等を内容とする安全作業標準書が作成されており,当日はジブクレーンの運転士,屋上の縁(端部)から7階ステージ上の玉掛け作業を見ながら運転士に合図を送る合図者,7階で部材の整理及び玉掛けをする作業者3人の合計5人で作業を行うことになり,被災者は玉掛技能講習を修了している職長らとともに,7階フロア上での作業に従事することとなった.
合図者は,被災者ら3人が足場の部材をステージに運び,玉掛けをする作業を屋上から見ながらクレーン運転士に合図を送っていたが,建枠とブレスが運ばれてきたとき,ステージ上には被災者しかいなかったため,被災者に建枠とブレスを一緒に玉掛けするように指示し,クレーン運転士には巻き上げの合図を,被災者には更につり荷の下の部分を持ってつり荷がステージの手すりに引っかからないように注意するよう指示した.続いて,合図者はつり荷を手すりの高さ以上になるまで一旦巻き上げさせ,荷の半分くらいをステージから外に出したところで,クレーン運転士に巻き上げの合図を送って,屋上のつり荷の荷下し場所に移動した.
その時,被災者の手袋がつり荷に引っ掛かって,荷と一緒につり上げられたため,その様子を足場の上から見ていた職長は,巻き上げを止めるように大声で叫んだが,クレーンはそのまま巻き上げを続け,被災者がステージの外側までつり上げられたところで,引っかかっていた箇所が外れて地上へ墜落した.
被災者は,玉掛け作業の技能講習を受けていなかった.
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