JCA cr01021

あらまし

本災害は，廃車にした事業場所有のワゴン車をスクラップにするため，積載形トラッククレーンの荷台から荷卸し作業を行っていたところ，当該クレーンが突然転倒し，車体側部で運転操作をしていた被災者がその下敷きとなったものである．
被災者が所属する事業場は，建設機械の販売及び整備を行い，また，建設現場から持ち込まれる建設機械や建設現場に出張して建設機械の整備等の業務を行うものであるが，災害発生当日は，出張整備用の整備器具が積み込んであるワゴン車（質量約１トン）を廃車処分することになっていた．被災者と同僚作業者の２名は事業場が所有する積載形トラッククレーン（つり上げ荷重２.９トン）の荷台にワゴン車を積み込んで，廃棄処分業者の廃材置き場に向かった．
処分業者との事前打ち合わせでは，廃車にしたワゴン車は処分業者所有の移動式クレーン（つり上げ荷重２０トン）を用いて荷卸し作業をすることになっていたため，廃材置き場に到着すると，同僚作業者は直ちに事務所に赴いて処分業者の担当者と２人で打ち合わせを行い，荷卸し作業に使用するための移動式クレーンに同乗して現場に戻ってきた．ところが，被災者が積載形トラッククレーンを操作して荷台からワゴン車を下ろそうとしていたため，あわてて運転操作をやめさせようと大声で指示したが，ワゴン車はすでに鉄屑の上まで移動しており，そのとき突然当該クレーンが傾斜しながら横転し，車体側部で運転していた被災者が倒れてきたクレーンの下敷きとなった．
災害発生時の当該クレーンの定格荷重は，作業半径が５メートルで０.６５トンであった．なお，アウトリガーは張り出していたが，地盤の状態が堅固でなかったにもかかわらず，鉄板等の敷設による補強はしていなかった．
また，被災者は小型移動式クレーンの運転及び玉掛け作業に係る資格を有していなかった．