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あらまし |
この災害は,建設資材置き場において,積載形トラッククレーン(以下「クレーン」という.)により型枠材をつり上げて旋回しようとしたところ,当該クレーンが転倒し,運転操作をしていた被災者がクレーンと資材との間に挟まれ,胸部圧迫により死亡したものである.
災害発生当日の被災者の作業は,現場監督の指示によりクレーン(つり上げ荷重2.93トン)を用いて資材置き場から型枠材を工事現場に運搬すること,また,工事現場から使用済みの型枠材を持ち帰ること,さらに,資材置き場に野積みされている型枠材を整理することであった.
災害は,資材置き場に野積みされた型枠材をクレーンにより整理する作業を行っているときに発生した.資材置き場には2基のクレーンがあり,被災者は片方のクレーンを用いて,工事現場から持ち帰ってきた使用済みの型枠材の荷卸しを行い,その一部はもう1基のクレーンの荷台上に載せた.これは野積みされた型枠材をそのクレーンで前方づりするときのカウンターウェイト代わりとするために載せたものであった.
野積みされた型枠材は1山が30枚重ねにしたもの(質量約700キログラム)が4山あったが,前方づりをするためクレーンの運転席の前面がこれらの山の前に接するような位置にクレーンを停車させ,アウトリガーは操作レバーのある側をその場張り出しとし,反対側を全張り出しにして,いずれも敷板を使用することなく地面に直接設置した.
玉掛けした型枠材を地切りするとき,荷が振れて周囲の資材に当たるのを防ぐため,同僚の作業者はつり荷を手で押さえながら巻き上げさせ,続いて次の型枠材を玉掛けするための準備作業に取りかかった.
被災者は単独作業によりクレーンの前方において,つり上げた荷を側方に旋回し移動する作業を行っていた.ところが突然,被災者の叫び声がしたので同僚の作業者が振り返ると,クレーンが転倒しており,被災者がクレーンのアウトリガーと他の資材との間に挟まれていた.
クレーンには,荷重計及び荷重指示計が取り付けられており,災害発生時の作業半径は約3.75メートル,定格荷重は0.55トンであった.なお,被災者は小型移動式クレーン運転技能講習を修了していなかった.
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