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あらまし |
本災害は,下水道工事において積載形トラッククレーンのフックの先に取り付けたコンクリートバケット(以下「バケット」)を用いて立坑のコンクリート打設作業を行っていたところ,バケットを巻き上げた際にワイヤロープが巻過ぎの状態となって切断し,フックとバケットが落下し被災者の頭部を直撃したものである.
災害が発生した作業現場では,川の両岸に立坑を設けて河川の下を横断する下水道管を敷設する工事を行っており,災害発生当日はミキサー車からシュートを通して生コンを移動式クレーン(つり上げ荷重2.9トン)でつり下げたバケットに投入し,深さ6.4メートルの立坑下部を打設するものであった.なお,つり下げられたバケットの寸法は直径が約90センチ,高さが約1.3メートル,質量は約450キログラム,容量は約0.3立方メートルであった.
当日の作業は,朝礼後3名の作業者がコンクリート打設作業の段取りを行い,9時頃から作業を開始した.午前11時頃に予定箇所の打設が終わったが,バケットには未だ半分位コンクリートが残っていたため,そのバケットのあと片付けをすることになった.そこで,クレーン運転者はフックを立坑下部から地上まで一旦巻き上げた後,ワイヤロープがシュートに当たらないように注意しながらジブを左旋回させた.次に巻き上げとジブの起伏操作を行い,バケットがの底が地上の高さにまで来るようにつり上げた.この状態で旋回すると傍らのバリケードにバケットが当たる恐れがあり,また,ジブを起こすとバケットが車体に接触する危険性があったので,運転者はジブを伸ばして更に起こそうとした.このとき巻上げ用ワイヤロープが切れてフックとバケットが立坑内に落下し,坑内にいた作業者の頭部に当たり,頭蓋骨骨折により死亡した.
当該移動式クレーンには巻過防止装置は装備されていたが,検出用の錘及び警報を発するブザーのケーブルが破損していたため,災害発生時に巻過防止装置は作動しなかった.
また,定期自主検査や作業開始前点検は実施されていなかった.
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