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あらまし |
本災害は,つり上げ荷重35tのトラッククレーンにより船倉からロール紙5個(1個の質量が750kg)を専用繊維ロープ及び専用つり具を使用してつり上げ,ジブを起伏
・旋回させたところ,突然,起伏用ワイヤロープが切断してジブが倒れ,デッキ上にいた合図者Aがジブに挟まれ,船倉の中で玉掛けの段取り作業をしていたBがロール紙1個に直撃されて重傷を負い,さらに,玉掛け者Cはジブ先端のフックが激突して死亡したものである.
災害が発生した当日の作業現場では,接岸した船舶の船首側ハッチと船尾側ハッチに面した岸壁に各1台のトラッククレーンを設置するとともに,それぞれのハッチには6名の玉掛け者と1名の合図者を配置し,船倉から紙ロールを搬出して岸壁に待機しているトラックに積み込む作業を行っていた.荷役作業は,各紙ロールの芯に「つるぎ」と呼ばれるリング状の繊維ロープを通し,さらに,この繊維ロープをフックでつった専用つり具に掛けることにより,4個または5個の紙ロールをまとめてトラッククレーンでつり上げ搬出していた.
紙ロールの搬出作業が最終段階に入った午後4時30分頃,船尾側ハッチの船倉内では玉掛け者3人が紙ロール5個にそれぞれつるぎを通し,他の2名の玉掛け者がそれらのつるぎを専用つり具に掛けていた.玉掛け作業が終了した段階で作業主任者はデッキ上にいた合図者Aに地切りの合図を送り約1m巻き上げさせた.続いて合図者Aは移動式クレーン運転士に対し荷の巻き上げとジブの旋回を行うよう合図した.一方,船倉内の玉掛け者たちはジブが旋回し始めたのを確認したうえで,次のロールの玉掛け作業に移った.
このとき,紙ロールをつっていたトラッククレーンの起伏用ワイヤロープが切断し,支えを失ったジブがそのまま下方に倒れ,合図者Aの肩を直撃した.ジブの倒壊によりつっていた5個の紙ロールが船倉内に落下して,そのうちの1個が玉掛け者Bに激突した.また,ジブ倒壊のため荷の外れたフックが振り子のように大きく振れ,船倉の中央部にいた
玉掛け者Cの頭部に激突した.被災者たちは直ちに病院に収容されたがCは死亡し,他は重傷を負った.
切断した起伏用ワイヤロープは交換後約9ヶ月を経過しており,切断箇所付近には著しい素線の断線が生じていた.
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