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あらまし |
この災害は,立体倉庫内に設置されたスタッカークレーン(つり上げ荷重1.4トン)を遠隔操作により被災者が運転していたところ,突然,クレーンが異常停止したため,本人自らが立体倉庫内に立ち入って復旧作業を行っていたところ,スタッカークレーンが動きだし搬器とラック(荷を載せる台)との間に胸部を挟まれて死亡したものである.
この倉庫内には,水平方向に18列,垂直方向に13列のラックがクレーンを挟んで東側と西側(2列)に設置されており,各ラックにはそれぞれ番地がふられている.すなわち,2列のラックのうちの西側を1番,東側を2番とし,例えば(1-7-12)は西側のラックの水平方向7番目,上下方向12番目を意味しており,荷を積み込むためのステーションが3箇所に設けられている.なお,このクレーンはコンピュータによる全自動運転であり,実際の作業は操作端末から番地を入力するだけである.なお,被災者はこの業務に関する特別教育を受けており,当該クレーンの運転資格は有していた.
災害発生当日,被災者は一人で立体倉庫に行き,9時少し前から作業にとりかかった.約1時間の間にステーションで14件の端末入力を行うとともに,搬入搬出される荷の整理を行うため,ステーション周辺を行き来していた.そのうち,同僚と雑談しながら荷が搬出されるのを待っていたところ,荷ずれが生じてクレーンの緊急停止を報せる警報が鳴ったため,被災者は「またか.」と言いながら,警報音を止める操作をステーション1の操作端末で行うとともに,復旧作業のためステーション1から立体倉庫内に入った.このとき,被災者は安全通路を通らず,ラックを上っていくのを同僚が見ていた.
暫くして被災者を事務所に呼び出す構内放送があったが,戻ってこなかったので同僚たちが周辺を探したところ,被災者は立体倉庫内のラックとクレーンとの間に挟まれた状態で発見された.直ちに消防署に通報するとともに数人の同僚が救出しようとしたが,通常の操作ではクレーンを動かすことが出来ず,被災者を救出できなかった.救急隊が到着し,ラックを解体して被災者を救出したが,既に死亡していた.被災者はクレーンの運転業務に関する特別教育を受けていた.
事故発生時の作業は被災者が単独で行っていたため,被災時の状況は明らかではないが,被災者がクレーンの復旧操作を行った後,復旧用出入り口以外の通路を通ったために,復旧してオンライン運転に戻ったクレーンの搬器に挟まれたものと考えられる.
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