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あらまし |
この災害は,橋梁建設工事現場において,前日の作業中にジブのフート部分が変形したクローラ式タワークレーン(つり上げ荷重11.5t,以下「クレーン」という.)を使用して,橋脚柱の上面部に載せてある移動作業車の傾きを修正するため,その作業車をつり上げたところクレーンのジブが折損し,移動作業車の横で待機していた被災者を折損したジブが直撃したものである.
災害発生前日の作業中に,旋回していたところ,つり荷の端部が橋脚型枠に引っ掛かり.つり荷が外れた瞬間ジブのストッパーがクレーンのタワーの先端部分にあるストッパーに当たり,ジブのフート部分が約1mにわたって最大で20cm程度の変形を生じていた.
災害発生当日,作業開始前に整備関係の技術者を現場に呼んでジブの損傷状態を調査させた結果,ジブを解体して修理する必要のあることが判明した.解体は翌日に行うことになった.しかし,当日軽作業に限定してこのクレーンを使用させることとし,その際,運転士はその技術者から軽い荷であればクレーンを使用しても差し支えないと言われなのたが,軽い荷とは一体どれくらいの重さのものなのかについての具体的な指示はなかった.
当日の作業は,当該クレーンを使用して足場に用いる単管20本(質量約240㎏)を,橋脚上面に設置された移動作業車の作業台上に載せる作業を数回行った.その後,作業台が水平な状態になっていないことが判明したため,クレーンにより移動作業車を一旦つり上げて水平にする作業を行うこととなった.作業は移動作業車の側部に取り付けられているつり柱の上部に空けてある穴にシャックルるを掛け,ワイヤロープ1本を用いて玉掛けしクレーンでつり上げるものであったが,つり柱が約3mm巻き上げられたとき突然クレーンのジブが折れ,移動作業車の傍らで待機していた被災者をそのジブが直撃した.
なお,災害発生時の荷重計は約2tを示していた.移動作業車のつり上げ作業はあらかじめ予定されていたものではなかったため,作業計画や手順等の打ち合わせはなされていなかった. |
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