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あらまし |
本災害は,鉄骨加工工場内において,製品である建築用鉄骨部材の一部に不具合な部分が見つかったため溶接補修をすることとなり,当該鉄骨部材をつりチェーンにより玉掛けし,天井クレーンで一旦つり上げた状態にしたまま反転させようとしたところ,突然,玉掛け用つりチェーンが切断して鉄骨部材が地上に落下し,被災者がその下敷きとなったものである.
災害発生当日,検査担当者が建築用鉄骨部材の製品検査を行っていたところ,その一部に不具合な部分が見つかったので,溶接工である被災者が補修のための溶接作業を行うこととなった.補修を行う当該鉄骨部材(質量3.9トン)は鉄骨加工工場内の北側の位置に仮置きされていたため,被災者は部下の作業者に対してその部材を工場内の南側に設置してある架台(高さ1.2メートル)の上に移動するよう指示をした.そこで,作業者は工場内に設置してあるホイスト式天井クレーン(つり上げ荷重10.2トン)により,工場内の玉掛け用具置き場に掛けてあった5トン用のつりチェーンを使用して鉄骨部材の中央部分をじか巻きとして玉掛けし架台の上まで運んできた.ところが溶接をする箇所の面が下側になっていたため,被災者はその鉄骨部材を反転させて溶接する面を上向きにするように更に指示した.すると作業者は先ほど使用したつりチェーンを鉄骨部材の重心位置付近に一周させて巻き,天井クレーンのフックを鉄骨部材の重心位置側面に位置する部分のつりチェーンに掛け,クレーンの巻き上げ操作を行いながら鉄骨部材を90度回転させた.作業者は再びつりチェーンを鉄骨部材の重心部位置に巻き直して鉄骨部材を回転させるために,天井クレーンの巻き上げ操作を行ったところ,フックを掛けていたチェンのリンクが切断して部材が架台に落ち,更に地上に落下した.このとき,反転作業時の鉄骨部材の振れを止めるために部材の端部を手で押さえていた被災者が落下してきたその鉄骨部材の下敷きとなった.
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