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あらまし |
本災害は,クラブトロリ式天井クレーンの補巻き用ワイヤロープを交換する作業を行っているとき,取り替えたワイヤロープがドラムに乱巻きとなったため,被災者がトロリの上にあがってこれを修正しようとしていたところ,ドラムに巻き込まれて死亡したものである.
災害が発生した事業場は,スクラップを購入し,切断,プレス加工等を行ったのち鉄鋼原料として販売しており,工場内には2基の天井クレーンが設置されていた.これらのクレーンは主巻きにリフティングマグネット,補巻きにグラブバケットを装着することができるもので,ピット内の屑鉄廃材をストックヤードに運搬する作業とトラックへの積み込み作業に使用されていた.この2基の天井クレーンのうち,北側のクレーンの補巻き用ワイヤロープを交換することとなり,会社の休日を利用して被災者を含む4人の作業員が担当することになった.
作業は災害発生当日の午後2時頃から開始された.クレーンの運転者と被災者をクレーン運転室とトロリ上に,2名の作業者をクレーンの下に配置してワイヤロープの交換作業を始めたが,新しいワイヤロープを巻取りドラムに巻き取り,最終段階のリミットスイッチを調整するまでの作業が進んだとき,ワイヤロープが巻取りドラムに乱巻きとなっているのが発見された.
そこで,この乱巻きを修正するために,被災者の指示によりグラブバケットの巻下げを行わせ,ピット内に積み上げられた屑鉄廃材の上に載せて停止させた.このときワイヤロープは緩んだ状態になっていたが,しばらくして廃材上のグラブバケットが斜めに傾きだし,緩んでいたワイヤロープがピンと張った状態となった.
間もなくして被災者からクレーンの下で待機していた作業員に助けを求める声がしたので,作業員がトロリ上に上ってみたところ,被災者がワイヤロープに体の一部を挟まれて身動きできない状態になっていた.直ちに作業員はクレーンの運転者に対しワイヤロープを巻下げるよう繰り返し叫んだが,運転者はこれを巻き上げの指示と勘違いし,巻き上げ操作を行ったため,被災者が巻き取りドラムに巻き込まれた. |
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