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あらまし |
本災害は,墓石の工事現場において,道路上に設置した積載形トラッククレーンを用いて荷台に積んであった工事用機材を道路下の墓地通路に下ろす作業中,クレーンが転倒し,運転者がクレーンとガードレールの間に挟まれ死亡したものである.
災害発生当日の朝,工場長で墓石建立責任者のAと雑役作業者B及び石工Cの3名が工場においてつり上げ荷重2,53トンの積載形トラッククレーンの荷台に墓石,セメント,発電機,ミニクローラクレーン,不整地運搬車等の建材や機材を積み,Bの運転で墓地に向かった.
BはAの指示でトラックの前方を坂の下り側に向け,ガードレールから約50cm離して停止させた.この停止位置は全体に傾斜しており,トラッククレーンの前後方向に約3度,左右に約8度の勾配がついていた.
道路から約2,7m下の墓地通路に機材を下ろすため,Aはアウトリガーを中間張り出しにした.
続いてAはトラッククレーンの助手席側にある操作レバーを操作して,トラッククレーンの荷台前列に積んであったミニクローラクレーンの上にフックが位置するようにしながら,玉掛けするようにCに指示した.玉掛け後,Cは墓地内の荷下ろし場所に向かった.
Aはトラッククレーンを操作しながら質量1,100kgのミニクローラクレーンをつり上げた.このときAはBにつり上げたミニクローラクレーンが回転しないように,ガードレールの外側から荷を手で押さえているように指示した.
Bは最初荷に手を添えていたが,ジブが旋回するに連れて手が添えられなくなったため,Bはその場でクレーン作業の様子を見ていた.
Cが荷下ろし場所に到着し,下からクレーン作業を見上げたところ,ミニクローラクレーンの下部がガードレールに接触していたので,それをAに伝えた後,後方に移動して作業を見ていた.
Aはガードレールと荷の接触を回避するためクレーン操作を行ったが,このときCはトラッククレーンの車体が少し浮き上がっているのに気付き,危ない,逃げろと叫んで避難し,Bも声を聞いて荷台後方に避難した.
ほぼ同時にドーンという音がしたので,Cが道路上に駆け上がったところ,Aが転倒したトラッククレーンとガードレールの間に挟まれていた.Aは直ちに病院に収容されたが,胸部圧迫で死亡した.
被災したAは小型移動式クレーン運転の技能講習を修了しておらず,転倒防止に対する知識が不足していた.またBも玉掛けの技能講習を終了していなかった.
なお,災害発生時のジブ長さ4,8m,ジブ角度45度,作業半径3,36mであって,定格荷重を超えていた.
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