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あらまし |
本災害は,金属製建具の製造工場において,製品をパレットに積んでべルトスリングで玉掛けしてテルハを用いてつり上げ中,べルトスリングが突然破断してパレットが落下し,荷の下を通りかかった被災者を直撃したものである.
災害が発生した事業場はアルミサッシュ等の金属製建具を製造しており,主に工場の2階で材料の切断,加工,組み立てを実施し,1階で塗装を行っていた.この工場の2階には,製品を搬出するための搬出口とつり上げ荷重1トンのテルハが設置されており,テルハのレールは搬出口からオーバーハングして取付けられていた.
災害発生の当日は,製品を2階から出荷する予定であったので,製品を積込んだパレット(1段パレット)と,このパレットを2段重ねにしたもの(2段重ねパレット)とが前日にクレーンの近くに置かれていた.
当日,朝9時頃からAとBの2名で製品の出荷作業に取りかかった.まず,Aが1段パレットにべルトスリングで玉掛け後,テルハのぺンダントスイッチを操作して1段パレットを2階の搬出口から工場の外の1階に下ろした.
Bは1階に行き,Aが下ろした1段パレットをフォークリフトでトラックの積みやすい位置に移動した.
次に2段重ねパレットを下ろすため,組立工のCが加わってBと一緒に2段重ねパレットの下側のパレットのつり金具にべルトスリング2本 を通して,フック半掛け2本4点つりで玉掛けした.
Aがペンダントスイッチを操作して荷をつり上げ,移動して2段重ねパレットの長手方向が約半分搬出口から出る状態にした.
ここでAは2段重ねパレットを手で押して水平に9O度回転し,再び荷を下ろし始めた.このとき,搬出口の真下の1階出口から組立工Dが搬出作業に気づかず出てきて荷の下に入った.
AはDを見つけたので,すぐにクレーンを停止したところ,衝撃でべルトスリングが2本とも切断し,2段重ねパレット(質量約500kg)が落下してDを直撃した.なお,搬出作業の際に,荷の下付近への立ち入り禁止措置は講じられていなかった.
また,クレーンを運転していたAは特別教育を修了しておらず,さらに,玉掛け作業を行っていたB及びCは,いずれも玉掛技能講習を修了していなかった.切断したべルトスリングは1本の長さが4,100mm,幅25mmであって,メーカーが示す新品時の最大使用荷重は750kgであった.一方,使用中のべルトスリング1本にかかる使用荷重は約250kgであった.
破断したべルトスリングは変色や摩耗が認められ,また.メーカーや製造年月を示すラべルも剥がれていて,かなり古いものであった. |
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