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あらまし |
この災害は,鋳造工場で,スケールバックと呼ばれる鉄屑を回収する容器を,天井クレーン(つり上げ荷重20トン)を用いて地下ピットの集水槽に搬入中,スケールバックが振れて作業者に当たり,作業者が壁とスケールバックとの間に挟まれたものである.
災害が発生した:事業場では,:製造工程において水圧を利用して製品表面からスケール(鉄屑)を除去しているが,使用後の水と除去されたスケールは集水槽の入り口に装着されたスケールバツクと呼ばれるフィルター付きの容器に導入され,そこで鉄屑が除去された後,水だけが集水槽に流入する構造となっている.
スケールバックの寸法は200cm×180cm×260cm正味本体質量4,230kgの立方体の容器である.スケールバックには鉄屑が集積するため,3日に1回程度の交換が必要であった.
災害発生の当日,スケールバックを交換することになり,13時より玉掛け補助作業者A,玉掛け者でかつ合図者のB,及びクレーン運転士Cの3名で作業を開始した.
まず,使用していたスケールバックにチェーンで玉掛けし,つり上げ荷重20.85トンの天井クレーンでつり上げ,スケールバックを所定の位置に移動した.
次に空のスケールバックを集水槽に装着するため,Aがチェーンを用いて玉掛けし,Bの合図でCがクレーンを操作して集水槽にスケールバックを設置した.玉掛けしたチェーンを外すため,Aが集水槽に取り付けられているタラップをおりていったところ,スケールバックが傾いた状態になっていることに気が付いた.。
Bが上から;確認したところスケールバックの収まりが悪いのでスケールバックを巻き上げて設置し直そうと思い,BはAにタラップを急いで上がるように指示した後,Cに巻き上げの合図を送った.このときAはタラップの上までは上がってはいなかった.BからCへの合図は巻き上げのみであったが,Cはスケールバックの向きを修正しようとして巻き上げと同時に横行も行った.
巻き上げ操作の際,Cは目測を誤り,巻き上げ過ぎてスケールバックの下端がフリーになったため,スケールバックが横揺れを起こしてタラップの途中に待避していたAはスケールバックと壁の間に挟まれた後,約3.2m下の集水槽中に転落した.
なお,Cはクレーン運転士免許を有しており,Bは玉掛技能講習を修了していたが,Aは何の資格も有していなかった.
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