JCA cr02121

あらまし

本災害は，斜面に作られた上段，中段，下段の3段からなる階段状の墓地内において，つり上げ荷重995kgのアウトリガー付きミニクローラクレーン(カニクレーン)を用いて墓石の移設作業中，当該クレーンが墓地の中段から下段に転落し，作業者1名がその下敷きとなって死亡し，2名が激突されて負傷したものである．
墓石の移動は墓地の上段から1本，中段から4本，下段から4本を移動する計画で，災害発生前日までに，上段1本と中段4本の移設を終わっていた．
災害発生当日，ミニクローラクレーンの前後が各段に平行になるようにして中段に設置した．しかし，場所が狭く，また地盤も弱かったので，クレーン運転者のAの指示で墓地の上段側のアウトリガーは全張り出しにして直接土の上に，下段側は中間張り出しにしてコンクリート擁壁の上に設置した．続いて下段に建てられている墓石を約2.5m離れた下段の別の場所に移動するため，Aは作業者BとCに手伝わせてべルトスリングで墓石に玉掛けを行った．
玉掛け後，Aが無線で移動式クレーンを操作し，所定の位置に墓石を移動した．午前9時頃から2本目の墓石の移動に取りかかったが，この墓石は上部の仏石と下部の上台と呼ばれる2段構造となっていたため，まず仏石の移動を行った．次に，上台(寸法48cm×95cm×23.5cm，質量267.8kg)を移動するためBが両手で上台の揺れを防ぎ，Aは右手で無線操作を行いながら左手で上台を押さえてジブの伸ばしと旋回を行って所定の位置まで移動し，さらに上台を地面から約30cmの高さに下ろしたときに，突然クレーンが墓地の中段から下段に転落した．
このときAは右足ふくらはぎを，Bは両膝をアウトリガーと地面の間に挟まれ，さらにBは頭部にジブが激突した．近くで骨壷を取り出す作業を行っていたCは，転落してきたクレーンの下敷きとなり，内臓破裂で死亡した．
事故発生時のクレーンはジブ長さ3.75m，作業半径2.81m，ジブ傾斜角41度で使用されていたが，このときの定格総荷重は210kgであって，つり荷の質量267.8kgよりも小さく，したがって過負荷となりクレーンが転落した．
なお，このクレーンには過負荷防止装置や警報装置は取り付けられていなかった．
クレーン運転者Aは小型移動式クレーン運転技能講習を修了していたが，玉掛けの資格は有していなかった．また，他の2名の作業者は安全衛生法上の資格は何も有していなかった．