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あらまし |
本災害は,橋梁基礎のコンクリート打設工事において,クローラクレーンで杭穴からケーシング(杭穴の崩壊を防ぐための鋼管)を引き抜き,鉄板上で―旦直立させた後,ケーシングを横倒しするためにクレーンジブを旋回させてケーシングを傾けたところ,接地部分が滑って付近に待機していた作業者がケーシングと掘削機の間に挟まれたものである.
本橋梁基礎工事は直径1.2m,長さ16mのコンクリート杭を12本打ち込むもので,災害前日までに6本の杭打ちと7本目の杭穴掘削が終了していた.
災害発生当日はKY活動後,9時頃から7本目の杭穴に鉄筋かごを建て込む作業を開始した.続いて,トレミー管と呼ばれるコンクリートの打設に用いる垂直鋼管を,つり上げ荷重6Oトンのクローラクレーンで杭穴に挿入した.このトレミー管にコンクリートを注入しながら,前日の作業で杭穴に挿入してあったケーシングをクローラクレーンで引き抜き,掘削機とクローラクレーンの間の僅かなスぺースに仮置きする作業に移った.
ケーシングは5本の管がロックピンで接合した状態で埋設されており,地表面から2本のケーシングが抜き終わり,3本目のケーシング(直径1.17m,長さ6.2m質量4トンの鉄管)を杭穴からクローラクレーンでつり上げ,その一端を鉄板上に接地して直立した状態にした後つりながら横倒しにするため,クローラクレーンのジブを旋回させてケーシングを傾けたところ接地箇所が突然すべり,近くにいた作業者がクローラクレーンと掘削機
の間に挟まれた.
なお,ケーシングの一端が接地した場所はクレーンから掘削機の方向に向かって勾配が約12%の斜面になっており,その上に鉄板が敷かれていたためケーシングは滑りやすい状態であった.
災害発生時のクレーンのジブ傾斜角は76.5度,ジブ長さ21.3m,作業半径10.3m,定格総荷重34.6トンであった.
また,当日の天候は晴れ,無風状態であった.当日のクレーン作業は1次下請けのA建設会社が作成した作業計画に基づいて,2次下請けであるB建設の4名がクレーンの運転,玉掛け,合図等に従事していたが,いずれも作業に応じた資格を有していた.
しかし,ケーシングを倒す際の作業については「クレーン旋回範囲内への立入禁止」がKY活動時等において口頭での注意が行われていたが,柵等による立入禁止措置は講じられていなかった.
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