クレーンの災害事例
CR03031
事 例
工事用エレベーターのカウンターウエイトと鉄骨に挟まれる
業 種
建築工事業
機 種
エレベーター
被 災
死亡 1名
現 象
搬器と他の構造物による挟圧
あらまし
本災害は,エレべーター方式による立体駐車場の工事現場において,自動車運搬用エレべータを工事用に仮使用していたところ昇降路の付近で防護ネットの撤去作業を行っていた作業者が,カウンタウエイトと鉄骨梁との間に,体を挟まれたものである.
災害発生当日は8時から朝礼と作業指示があり,その後各班に分かれてミーティングと危険予知活動が行われた.その際,現場職長から立体駐車場の防護ネットが足場組み立ての障害になるのでAとBの2名で取り外すよう指示を受けた.
そこで2名の作業者は,8時半頃から外部階段を使用して,最上部である20段から防護ネットの取り外し作業を始めた.
9時20分頃17段目(17階)の床に行き,Aは昇降路に体の―部を入れ,頭を建物の外部に突き出す姿勢で防護ネットの取り外し作業を行っていた.
―方,別の職長のCの指示で外壁取り付け作業の準備のため,3人の作業員がエレべーターで最上階に向かうことになった.
Cがエレべーターの電源を入れ,Dが操作して約3分上昇したとき,突然エレべーターが停止した.Dは上昇スイッチを2~3回押したが動かなかった.
そのとき,上方が騒がしかつたのでDが上がっていったところ,17階でAがカウンタウエイトと鉄骨の間に挟まれているのを発見した.
Aはカウンタウエイトが降下してきたことに気付かずに昇降路付近で作業を行っていたために,カウンタウエイトに挟まれたものである.
このときAは安全帽,作業服,地下足袋を着用しており,安全帯は鉄骨組み立て時に取り付けた親綱に掛けられていた.このエレべーターは立体駐車場完成後自動車を各階に運ぶためのもので,搬器長さ約6.2m,搬器幅約2.3m,積載荷重2.4トンであり,工事期間中これを荷物や作業員の運搬に流用していた.
したがって工事期間中のエレべーターはロングスパン工事用ロープ式エレべーターとして労働安全衛生法の適用を受けるが,製造許可,設置届け,落成検査等の一連の処理がなされていなかった.
また,昇降警報装置,上下限停止装置,手すり等エレべーター構造規格で示す規定が殆ど満足されていなかった.