クレーンの災害事例
CR03091
事 例
クレーン機能付き車両系建設機械の荷が作業者を直撃する
業 種
:開墾耕地整理等の造成事業
機 種
その他の移動式クレーン
被 災
死亡 1名
現 象
つり荷、つり具が激突
あらまし
本災害は,宅地造成工事現場において.コンクリート製の排水溝の蓋9枚を重ねて玉掛けし,ドラッグショべルのバケットにフックを取り付けたクレーン機能付き車両系建設機械を用いてつり上げ,不整地運搬車の荷台に積み込もうとしたところ,アームが旋回した際に荷が振れて,不整地運搬車上にいた合図者の腹部を直撃したものである.
災害当日は,8時頃からミーティングを行い,5名の作業者で土砂の敷き均し作業を始めたが,30分ほど経ったときに,元請けから,全体の作業に支障が出るので鉄塔の近くにあるU字溝とその蓋を別な場所にすぐ移して欲しい,との依頼があった.
そこで,AとBの2名の作業者がそれらの移動に当たることになった.
Aはつり上げ荷重2.9トンのクレーン機能付きドラッグショべルを,U字溝と蓋の置いてある場所に移動した.さらに,不整地運搬車を運転してU字満の近くに移動した.
U字溝の蓋は1枚の質量が約76kgであってかなり重いことから,AとBが―緒に手で一カ所に運んで9枚を地面上に積み上げた後,Aがワイヤロープを用いて目通し1本つりの方法で玉掛けを行った.
Aはドラッグショべルのバケットに取り付けられたフックにワイヤロープの一端のアイを掛けてから,ドラッグショべルを操作して荷をつり上げ,旋回して不整地運搬車の荷台上に荷を移動させた.
不整地運搬車の荷台に上がっていた合図者のBが,もっと手前に荷が来るように誘導したので,Aはさらにアームを旋回させて,不整地運搬車の運転席側に荷を移動させた.
このとき,Bが“痛い!痛い!”と叫んだので,Aはあわててアームを逆方向に旋回させたが,Bは運転席のガードと荷との間に瞬間的に挟まれた様子であった.
Bは不整地運搬車の荷台から自力で降りてしゃがみ込んだ.周囲の人々からすぐ病院に行くよう勧められたが,Bは家に帰って休めば大丈夫と言って強く固辞したため,同僚が自宅に送り届けた.翌朝,布団の中で死亡した状態で家族に発見された.
死因は腹部挟圧に伴う腸管の穿孔と腹膜炎によるものであった.
クレーン機能付きドラッグショべルを操作していたAは,移動式クレーン特別教育,玉掛技能講習,車両系建設機械運転技能講習等を修了していたが,つり上げ荷重2.9トンのクレーン機能付きドラッグショべルでクレーン作業を行うために必要な移動式クレーン運転免許,または小型移動式クレーン運転技能講習修了証を有していなかった.