|
あらまし |
本災害は,鉄構工場内において建築用の鉄骨柱を仮付け溶接後,反転させようとつり上げ荷重5.07トンの床上操作式クレーンを用いてつり上げたところ,鉄骨柱の端が床上の他の部材に引っ掛かったため,これを外そうと被災者が玉掛けしたワイヤロープに手を掛けたとき,仮付け溶接した箇所が破断して鉄骨柱の下敷きになったものである.
災害が発生した事業場では鋼構造物や建築鉄骨等の設計・製作を行っており,災害前日までにこの鉄骨柱の制作を行っていた.災害当日は,当該事業場の溶接工のAと構内下請けの溶接工Bが一緒になり,前日までに製作した鉄骨柱の裏側に仕口を溶接するため,鉄骨柱を床上操作式クレーンを用いて反転することになった.この鉄骨柱は,建家の1階部分に用いる長さが約4m,質量約760kgの柱と,2階部分の長さ約3.5m,質量約600kgの柱を仮溶接した全長が約7.5m,質量が約1360kgのものである.この鉄骨柱を反転させるため,溶接工のAとBの2人が鉄骨柱の2階部分に当たる箇所に,直径12mmの玉掛け用ワイヤロープ2本を用いて27cm離して2ヵ所に,2本2点目通しによる玉掛けをした後,Bがクレーンを操作して10cm程度つり上げているとき,鉄骨柱の先端が床に置かれていた他の鉄骨柱に引っ掛かった.そこでBは引っ掛かりを外そうとインチング操作を行い,鉄骨柱を揺すりながらつり上げていた.そばで見ていたAはワイヤロープに手を掛け,鉄骨柱を回転させて引っ掛かりを外そうとしたとき,仮付け溶接した箇所が破断して落下し,Aが鉄骨柱の1階部分の下敷きになった.直ちに病院に搬送されたが,多臓器不全により死亡した.なお,Aは玉掛技能講習及び床上操作式クレーン運転技能講習を修了していたが,Bは玉掛特別教育及びクレーン運転業務に係わる特別教育を受講しているだけで,当該クレーン作業に必要な資格を有していなかった.
|
|