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あらまし

本災害は，下水道管の埋設工事を行っている工事現場において，つり上げ荷重2.93tの積載形トラッククレーンを用いて削進管と呼ばれる鋼管を地上から立坑内に下ろした後，削進管と回転推進装置を繋ぐため，積載形トラッククレーンで削進管を僅かに持ち上げて高さの調整をしていたところ，上部旋回体と下部走行体を締結している高力ボルトが破断して上部旋回体が立坑内に落下し，作業者が足を負傷したものである．
災害が発生した現場は，泥濃式推進工法と呼ばれる方法で鋼管製の下水道管を地下13mの深さに敷設する作業を行っていた．作業は直径2.8m，深さ約13mの立坑内に外径1.5m，長さ0.6m，質量260kgの削進管を下ろし，この管を推進機で地中にある程度押し込んだ時点で，地上から積載形トラッククレーンで別の削進管を下ろして全周溶接し，再び推進する方法を繰り返すことにより，長さが約650mの下水道管を敷設しようとするものであった．
災害発生当日は，13時30分頃から立坑内に７本目の削進管を積載形トラッククレーンで下ろし，作業者Aが約１時間かけて全周溶接を行った．溶接後，削進管と推進回転装置との位置合わせを行おうとしたが合わないので，作業者Bは７本目の削進管の中程にスリングベルトを掛けた後，立坑内の中段踊り場に上がり，有線式のリモコンを使用して積載形トラッククレーンの巻き上げを行い，削進管を2cm程巻き上げた．その後Bは立坑の底におりて推進回転装置と削進管の位置確認を行っていた．約10分後，削進管をつっていたスリングベルトのゆるむのが見えた直後にワイヤロープが上から落ちてくるのに気づき，Bは推進回転装置の後方に，Aは踊り場階段の下に避難したところ，積載形トラッククレーンの上部旋回体が落下し，ジブがBの足を直撃した．
積載形トラッククレーンを調べたところ，上部旋回体と下部走行体を締結している直径14mmの８本のボルト（F10T）が全数破断しており，このうち６本のボルトの破面には錆が付着していてき裂がかなり以前に入っていたと推定された．これらのボルトのうち，幾つかの破面には疲労破壊の様相が見られた．また，ボルトを取付けている下部走行体が若干変形している状態も認められた．
災害発生時の積載形トラッククレーンの使用状況は，作業半径3.73m，定格荷重830kg，ジブ長さ4.15m，アウトリガー全張り出しであり，荷重計は備えてあったが過負荷防止装置は付けられていなかった．また，この積載形トラッククレーンの定期自主検査，持ち込み時点検，作業開始前点検は実施されていた．また，被災したBは小型移動式クレーン運転技能講習及び玉掛け技能講習を修了していた．